壁画のご依頼から完成まで〜
こんにちは、アーティストユニットWHOLE9のhitchです。
ただいまクラウドファンディング企画CYCに挑戦中です。残り20日、現在83%まで、たくさんの方のご支援で奮闘中です。最近の一連の投稿はその一環として、企画のあらましや壁画の魅力やお伝えするために書いています。クラファン企画のページはこちら。
今回の投稿では前回の予告通り、具体的な壁画仕事のお話を頂いたところから実際のペイントの完成までをご紹介しようと思います。壁画を見る事自体が少ないと思いますので、その一連のプロセスとなると僕自身初めての整理となります。
これを観てくれて方が壁画に興味を持ったり、自分でも描いてみよう/誰かに頼んでみよう、となってもらえたら嬉しいです。(ちなみにもちろん僕個人の経験に拠りますので、人によりけりだとご理解ください)
今回ご紹介する実例は、今年の頭にUR都市機構様よりご依頼いただいた壁画です。
<壁面アートは、千島団地がある大阪府大阪市大正区を盛り上げるために立ち上げられた、「TAISHO★UPプロジェクト」によって生まれました。このプロジェクトは、大正区と株式会社フィル(壁紙屋本舗)、そしてURの3者が協力して、さまざまな活動を展開。そのひとつとして、大阪市内で一番規模の大きい千島団地で、壁画アートを制作するようになりました。>
Webサイトより
ではまず、目次として作業行程のタイムラインをご紹介します。
以上です。
要約すると、お問合せを頂いてから作業開始まで約1ヶ月間、作業自体は6日間、完成後はパブリシティに数日間、という感じでした。壁画のサイズのわりには若干タイトめな打合せスケジュールでしたが、ペイントにはじっくり6日間をかけました。
では順に追って見ていきましょう。
以下長くなりました!笑 簡潔に、この企画のインタビュー記事と美しい写真はこちら、僕らのギャラリーページはこちらからどうぞ!
【描く前】
【お問合せ】
まずお話は共通の知り合いを通じてUR都市機構さんから頂きました。ちなみに実際のご新規案件のうち半分以上は事前に何らかの関係(共通の友人/過去仕事を直接観て頂いた)がある場合が多いです。壁画のように大きな絵は、鑑賞というより体感するものと言えるので、事前に見ていただけてのお問合せは有り難いですね。今回は上記のコンセプトのもと、その第五弾の壁画としてオファーいただきました。
【打合せ】
当初は壁面も決まっておらず、担当の方と巨大な団地を実際に下見して回りました。「WHOLE9の良さは他の作家よりも大きなサイズで描けること」だとプッシュし、念願の一番大きな壁面サイズ[5.5×16m]をいただきました。
ちなみにこういうのは僕らの実績以上に、作家を汲み取ってくださる担当者のご理解に拠るところが大きく、okしてくださった西山さんとURさんにはとても感謝しています
お打合せの焦点は主にクライアントとアーティストによるテーマのすり合わせではなく、イメージのすり合わせになります。テーマは基本的に先方がセットしたものを僕らが受け止められるかですが、そのイメージをビジュアライズする際は無限の可能性の中から1点を選び出すことになるからです。
【コンセプトメイキング】
今回頂いたテーマは「絆/交流」、ご担当者さまからは「子供/笑顔/活気」とのキーワードをいただきました。「巨大な団地コミュニティをつなぐポジティブな絆を可視化すること」は今回のクラウドファンディング企画CYCにも共通するテーマであり、壁画が達成できる1つの意義だと思います。
テーマを元にコンセプトを考えます。コンセプトはこの場では「仕上がった絵を見たとき誰にどう感じてもらいたいか」であり、頂いたテーマを元に「地域住民の方が家族で通りかかった時に、ふと見上げたり公園で立ち止まりたくなるような絵」になればいいなと決めました。壁画は描き手以上にその地域の方が長く接するものなので、厚かましくなく少し気持ちを前向きにできる程度の効果を持たせたいなと考えています。
【ラフスケッチの推敲】
「家族」を追加テーマとし、「家族の絆」を考えたときに、まずはモチーフの選定です。
WHOLE9は人物・動物・植物を得意なモチーフとしています。まずは直接的に人物を描くことでテーマの表現を模索しましたが、「描いた人物が誰なのか」がまず気にかかりコンセプト実現の上ではむしろノイズになりました。(描いた人物が団地に住んでいようとなかろうと、疑問が晴れずかえってややこしい)
そこで動物をモチーフとして比喩的にテーマを語らせる方が婉曲的で優しく思えました。野鳥の成長をメインモチーフにしたラフスケッチを提出しましたが、ここで予想外のフィードバックを頂くことになりました。
「街中で見かけるような鳥は一部の住民にとって害鳥に感じられ、好まれない」
これは...仕方ないですね。壁画は僕達の作品であると同時に、住民の方のものです。他の動物でのアプローチを再検討が始まります。
結果的に通ったラフはクジラの親子をメインモチーフとしたものでした。
家族/多様性をテーマにし、アクセント的に害鳥に見えないオウムを加えます。テーマもコンセプトも前回の野鳥と同じですが、モチーフを変更した形です。加えて西日本最大級の団地であることを最大の哺乳類クジラに重ねてもいます。
モチーフが決まればsimoの抽象パターンとモチーフの組み合わせ方を考え、ラフスケッチのブラッシュアップに移ります。今回の構図は意識的に奥行きを計算しており、空間の上空から射す光を動物たちが受けている様を下から眺めている構図にしました。というのも動物たちを切りはりしたコラージュ的な絵になってしまうと光源がそろわずにチグハグで、環境に馴染まないと考えたからです。
配色は、地色のグレーを海や空に見立て、射す光を鮮やかな色でまとめています。光を受け戯れるクジラの親子な訳ですから、キラリと鮮やかなイメージにしようと思いました。
【描いてる間】
よーーやく、描く段階です。
考えておいた全行程を作業日数で割り、前倒し気味に進めながら様子をみます。壁の状態は程よい凹凸で、もとの塗膜が厚いおかげで描きやすい。初日の作業でより具体的に先行きの予測がつきました。大きなサイズで描くときの最大のネックはやはり時間です。準備も描くのも修正するのも、1つ1つが通常サイズよりも時間がかかってしまうため、いかに作業工程で躓かないか、いかに先を想定しておくかが後々のしかかってきます。。
今回の高所は足場作業なので、上から下まで塗料を運ぶだけで5分はかかります。時間のことを考えるとその日使う塗料を全て上に運び、上から下に描いて行きながら徐々に降りていくのが効率が良いです。よく驚かれますが、基本的にはまさにプリンターの出力のように、上から絵が現れてきます。
あと気をつけるのは天候ですね。屋外で描くので寒い暑いがやる気に直結するし笑、雨は最悪です。時雨でない限り、雨の前は30分程度前に作業を止めないと塗料が雨垂れしてしまい、雨の後はそもそも作業ができません。こればっかりは仕方ないので、遊びに行ったり適当なレクリエーションを見つけて過ごします。
今回の作業に関しては、イレギュラーは起きなかったんじゃないかな。
最後まで着実に、予定通りの日程で作業を終えました。僕たちの作品は完成度が命なので、全体を通してクオリティを上げることに執心しています。陽が照っている10-18時の作業時間はこれに没頭。それ以外のことに頭を割かないようにするのが個人的には精度を上げるコツです。子供のとき漫画の模写に夢中になった頃の環境を再現します。
完成!
【描いた後】
描いてる間~描いた後は、作品のプロモーションに力を注ぎます。ライブペインティングも壁画も大きな魅力の一つはそのサイズにあるので、実際に現場に見に来て体感してもらうことが何よりの鑑賞方法です。なので実際に見に来てもらうため、もしくはそれがダメなら映像や写真でアーカイブしてネットなどで公開することが重要になってきます。
今回はタイミング良く、以前から繋がっていたタクヤさんに映像を撮っていただくことが出来、とてもスムーズなテンポで公開ができました。(もちろん一番上の映像です)
正直に言うと、このプロモーションには今後もっと力を入れていきたいです。単純なSNSでの発信だけではなく、メディアを増やしてより充実した内容をお伝えする方法を模索しているところです。
【まとめ】
こうして振り返ると、やっぱり事前の準備を入念にやっていますね。
現場に入ってからの行程は我々の専門なので、そこで如何にロスがないようにするかを、特に打合せを重ねるようにしています。
というのも、とにかく現場に入ったらあとは楽しみたいんですよね。朝現場に来て、絵の具の準備をしながら音楽をかけて、近所で美味しい定食屋を探して、気分転換に散歩したり地域の人としゃべったり、夕焼けを背中に受けて、腰いてーって言いながら帰る。普段は出不精なゆえに、一度現場に入るとそこの全てを満喫したくなるんですね。「こんな自分もまともな暮らししてんなー、ちゃんと働いてんなー」と気分が晴れます。
今回の壁画では、その全てがピタリとハマり、最初から最後まで本当に気持ちよかった。それもこれも関わってくれた全ての方々のおかげでした。僕たちの制作は完成度が命とは言ったけど、それはWHOLE9にとっての課題です。根本では「絵のある暮らしを日常にもたらし、気の合う仲間と日々を彩っていくライフスタイル」を築いていくこと、つまり期待をかけてくれる周囲との繋がりに幸せを感じ、これを広げていくことに穏やかな情熱を持っています。
長々と失礼しました!
次回は何を書こうかな。1週間後に更新予定です、お楽しみに!
#campfirejp #crowdfunding #クラウドファンディング #CYC #ColorYourCommunity
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