#6 - Jan Dickey, Nanea Lum, Kainoa Gruspe "Raw Material" (My Pet Ram)
NYのロウワー・イースト・サイドで、Jan Dickey(ジャン・ディッキー), Nanea Lum(ナネア・ラム), Kainoa Gruspe(カイノア・グルスプ)による3人展が、My Pet Rum(マイ・ペット・ラム)というギャラリーで開催していた。
展示のテーマは"Raw Material"。翻訳すると、生の素材って感じかな?作家3人とも、制作にあたってすごくマテリアル(素材)を重視するので、そのようなテーマにしたそう。ちなみに、ジャン(私の夫)がこの展示を企画・マネージメントしたのだが、ナネアとカイノアは、彼がハワイで暮らしていたときに出会ったアーティストだ。ナネアはネイティブハワイアンで、カイノアもハワイで生まれ育った地元人である。二人とも、ハワイに関連した作品を制作している。
今回、友人である二人のハワイアンアーティストを、NYでの展示に招待しようとジャンが奮闘して実現した展示である。
上の作品はよく見ると表面に穴が空いていたり、テクスチャーが面白い。(ディテールショットを撮るのを忘れてしまった。)
ジャンは、テンペラにピグメントなど、結構古典的な絵画技法を使って制作をしている。多くの作品に星の形が配置されている。
カイノアによるこの作品はハワイに自生しているヤシの木と大陸からやってきた外来種のモンキーポッド(大きなさやえんどうみたいなやつ)を使っている。
こちら(下の画像)も、カイノアの作品。これは、タイトルとマテリアルから制作過程がわかるのが面白い。タイトルの『Quilt for the Highest I Could Climb and the Lowest I Could Dive』は訳すと、私が登れる最も高い場所と、私が潜れる最も低い場所のキルト(キルティング、または詰め合わせ的なもの)という意味になる。
材料に使っているものは、カイノアが、ヒマラヤ山で登れた最も高い5000メートル地点で拾ってきたカラスの羽と土、オアフ島にあるカヘ・ポイント・ビーチで最も深く潜れた海底10m地点にある砂と珊瑚、が使われている。それぞれの素材が直接作品に取り付けられていて、素材の取れた場所の高低差も感じられる配置になっている。
こちらの作品(上の画像)はナネアによる作品。彼女は、ハワイに伝わる伝統的な紙"kapa"の作り方を学び、それを作品に取り入れている。この作品の中央にシルク糸で縫い付けられているのが彼女が手作りしたkapaの紙。この紙にプリントされているのはkapaを作る人の姿。竹で作られたスタンプのようなもので周りの柄は連続的に配置されている。この作品使われている素材はほとんど天然のもの。
このグレー色をしたジャンの作品は、上のナネアの作品と対照的に、たくさんのアクリルメディウムで作られている。いわば人口素材の塊?これはジャンが絵の具の『GOLDEN』という会社が行っているアーティスト・レジデンシーに参加した時に制作したもの。GOLDENはアクリル絵の具で有名なNYの会社。GOLDENは家族経営の会社で、レジデンシーに選ばれたアーティストは、NYのアップステートNew BerlinでGOLDENの社員や家族と共に時間を過ごしながら作品制作をする。滞在期間中は、GOLDENの研究者がワークショップを開催してGOLDENのさまざまな画材を実験的に使ってみたり、材料の説明を受けたり、、経営者と話をして画材について語り合ったり、、、しかも、GOLDENの絵の具やさまざまなマテリアルを好きなだけタダで使っていいという、マテリアルに興味がある人にとっては天国のような環境で自分の作品制作に励むことができるのである。
ジャンはこのレジデンシーで、GOLDENの素材をふんだんに使い、新しい作品のシリーズを完成させた。この二部作はその一部である。
(万が一、このレジデンシーに興味がある人のためにリンクをはっておく。
https://www.goldenfoundation.org/residency/about-the-golden-foundation-residency/)
カイノアのこの作品は、見ていてすごく楽しい。地はメッシュで、その上からオレンジ色の透明な顔料?がレジンのようなバインダーによって施されている。ターメリックを使っているというので、このオレンジ色がターメリックなのだろうか?作品自体が透けて奥の壁が見えるのが面白い。
ちなみに、この展示には有名な美術批評家のJerry Saltz氏が見に来てthums upしてくれたそう!すごい!
オープニングはすごく賑わっていたよ!
ニューヨークで学びアーティストとして活動するための資金とさせて頂きます。