たゆたうことを夢見るばあいの話

言い訳するみたいに、自分のことを「いい人だったんだ…」と
夏の海に置き去りにする人を眺めていた。

喋り方は人様々で、例えば「今日と明日で自分は別人」と言う人もいれば「今日の走馬灯はコレです」と口火をきる人もいて三者三様で、

「誰にも迷惑かけてこなかったのに、」という、
枕が異様に鼻を突く事がある。

そうかな。迷惑かけてそれを受け止める人がいるから、社会ができたんじゃないのかな。
例えばさ、言葉は難しい原理をしばしばはらむけれど、そこに子どもを産むことはないよね。
愚痴を聴き続けた子どもがどうなっていくかなにも考えないから、目の前の大人は生まれてきたんだろう?

生き方はもう変えられないよ、と喚き立てる人がいる世代のことを、私は静かに眺めている。青い炎も紅い炎もそこにはあって、「君は僕を救うんだよ」と言う。そう。確かに私は救う為にいるのだけれど、パラレルワールドのヒーローを5人も10人も導入した結果、元の世界は衰退したか?

しなかったでしょう。
じゃあ、新しい世界は新芽がでたか?
でなかったんじゃないです?


腐らせることばかり得意な人を前に、
私は息を止めて海に潜る。

本当の事が顔を覗かせるけれど、
真実には遠く及ばず、
愚痴を零す湖が汚れていくのも、誰も気にしない。なぜなら自分が口にしている言葉の全てが甘いよだれで出来ていると
信じて疑わないからだ。

たのしく暮らしてよ。
それだけで愛の完成形だ。
そう歌ってくれたヒーローを、私は模倣したい。したかった。
救けることができる人だ。

そしてその善行は彼らにとっては日常なので、
そこには汚泥にまみれる勇気があり、
そこには誰かに笑顔で文句を言える心がある。
私は罪を犯さない人の厳しさを隣で、今日もただ
黙って仕事を探すのだ。

わかっていることがある。
海は、手を繋ぐと沈むので、独りで泳ぐもの。
ポセイドンは放任主義で、
メデューサを救けることができません。
私を殺しに来るであろうアテナを、
私は知らないままに煽っているのだろうから近寄れない。私も、髪の毛の中に蛇を飼っていると自分では思うのだけれど…。前髪を、毎日ストレートにするのが大変ですよ。


アテナ。貴女の中の走馬は、ポセイドンによくにていたのではないですか。
彼のこと、貴女はきちんと愛せなかったのですか?未だに貴女はホラーが好きですか。
私のアテナ。
それとももう幽霊たちには貴女の激しさを収める力もないのですか。

きっと、ご飯を食べたらまたこんな、いみのない呼吸も止められる。正しくて、優しくて、間違いのない、
エネルギーの源へ、
近寄って死ぬのは嫌だったけれど
思っていたほどその場所は厳しい寒さもなく、
むしろ怖さがあるのは暑さでしょう。けれどそれってね、ただの皮膚の呼吸かもしれないよ。
私たちが落ち込んだ太陽ほどは、大きくなくてね。

息継ぎをして、蹴伸びをして、真っ直ぐ前へ進むだけ。その間に起こす波による影響の全てに勝手に自分だけで怯えるのはお止しなさいよ。
大丈夫だから。

私は死の海の中で、
セオリーを思い出すだけ。

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