短編小話 #0

はい、こんにちは!フーです!

本日は、いつもと毛色を変えまして、少しばかり短編物語を書いてみました♪
こういうの作業は初めてのことで手探り感がすごいのですが(内容めちゃくちゃかも?)、よろしければ是非!

※約4000字です。ちょっと長くなり申し訳ないです...


【ずっと、探してた私のヒーロー】



俺は地元の大学に通うフツーな大学生。

普段は学校行って、サークルに顔出して、バイトして、休日はゲームか野球観戦をして過ごす日々。

振り返ってみても、とても平凡というか、薄いというか、なんというかフツーな人生だなと思う。
特に不自由も挫折も経験してない。まだ二十歳だけど...

なんにもしてこなかったな・・・いや、してはいるけどフツーな事ばかり。
レールの上ってかんじ?

もっと何かでっかい経験を1つでもしてみたかった。ドラマや映画の世界のような......


憧れはあった


例えば?

学校で一番モテモテだったり、
運動神経ズバ抜けて良くて大会のトロフィー総なめにしたり、
喧嘩強くて番長だったり、
頭良くて勉強トップだったり・・・みたいな?

あと、特殊能力持ってて、人々の生活を脅かす悪と対峙するスーパーヒーローだったり・・・みたいな。

子どもの頃からウルトラマンとか仮面ライダーにチョー憧れて、本気でなりたいと思ってたもんな。
この歳になった今だってスーパーマン、スパイダーマン、アイアンマンみたいなヒーローめっちゃ好きなんだよな。
単にアメリカにかぶれてるってだけかもしれないけど(笑)

でも、実際そうじゃない

いや当たり前か。あれは作られた世界だもんな...ハハハ。
はぁ、せめて彼女でもいたらなぁ......


とか、そんなこんな考えながら、その男は今日も大学の講義をぼーっと過ごしていた


もう午後か。
今日の講義はこれでおしまい。
夕方のバイトまで時間が余っちまったな~......まぁ、いつものことか。
試験も近いから勉強しとかないとヤバいんだけど、あんまやる気も湧かねーな~......まぁ、いつものことか。


“いつも”のこと


何して時間潰そっかな?

学食行こっかな......いや、今は金欠だからやめておこう。
それとも、
ラウンジに行こっかな......いや、今は知り合いに絡まれる気分じゃないな。
あー待てよ、
図書館に行こっかな......いや、今は試験近いから混んでそうだな。
いや、俺もホントは図書館に籠って勉強しなきゃいけないんだけど・・・


選んでいるようで“いつも”の選択ばかりのデジャヴのような毎日


うーん・・・どうしてもそういう気分じゃないんだよな。
よし、散歩しよう。


その男は“いつも”あまりしない選択をした


あっ!、そういえば、昨日新しいスパイダーマンの映画公開したんだっけか?
散歩がてら駅前の映画館にいってそれでも観よう!
いい時間潰しだな!計画へんこ~うっ♪


今日は風が強い


へ~、こんなとこに公園なんかあったんだ?
散歩も案外いいもんだな。
おお、子どもたちがたくさん遊んでるじゃん。楽しそ~♪
そうかもう、放課後だもんな。
俺みたいな腐れ大学生になんかなるなよーハハハ。
俺も子どもの頃はあんなかんじで外で遊んでたな...


懐かしさを感じるとともに、一瞬強風が吹きぬけた
公園で遊んでいた小学校1年生くらいの女の子が被っていた帽子が風に飛ばされ宙に舞った
その帽子は公園の脇の道路の方へとそのまま風に流されていった


あー、帽子が飛んでっちゃった。風つえーな。


その男は何気なくそう思っていた
女の子は帽子を取り戻そうと無我夢中で追いかけていた
向こうから車が来ている
車の運転手も女の子もお互いに気づいていない
男は脳が情報を処理してから各器官に伝える過程をすっ飛ばして認知したくらい一瞬にしてヤバいと感じ取った


キキィーーー、ドンッ


鈍い音がした
公園の子どもたちは何が起こったのか理解していないようだ。一瞬の出来事


いってぇ。


そこに倒れていたのは男だった
女の子はそばで泣いている
大きな音、大きな衝撃、倒れている人、赤い液体
無理もない当然だろう
運転手のブレーキを踏む脚より先に、男の脚のほうが勝っていた


反射神経の良さとかけっこだけは得意だったからな...


かろうじて保っていた意識はそこで閉じた


光が差し込む
視界はぼやけている


俺は死んだのかな?
意外とあっけなかったな。もっと怖いもんだと思ってたけど、あっという間だったな。
なぜか後悔はないな。


とか思いを巡らせていたら、音が聴こえてくる

耳もまだ遠い
その音がする方を向こうとしたとき、首に痛みが走った


なんだ、生きてんじゃん。


徐々に五感が戻ってきた
横にいたのは母親だった


「よかった。目を覚ました。大丈夫?」

母が掛けていた声だった


「大丈夫って聞かれても、逆に俺大丈夫なのって聞きたいよ。そっちのほうがどうなったか詳しいでしょ?てか、俺生きてんの?」

相変わらずひねくれた返事をしてしまう


「よかった、その返事聞けて。あんた2日間昏睡状態だったんだから。
でも、お医者さんが最善を尽くしてくれてなんとか命はなんとか残してくれたんだよ。体はボロボロだけどね。」

まだ意識は曖昧だけど、それを聞いて生きてると再認識した


「そうなんだ、ありがとうございます。」

空虚な感謝を述べた。正直生き延びたことに大きな喜びが感じられなかったからかもしれない


「あんた、複数箇所の骨折と少し内臓損傷しちゃってるらしいから、半年は入院しなきゃいけないのよ。そう、全治半年くらいって言うの?」

「へぇ、それよりさ、あの女の子大丈夫だった?」

あの子のことがとても心配だった


「ああ、あの子ね。少しのかすり傷程度で大丈夫そうよ。そうそう、あの子の親御さんからすんごい感謝されちゃって。今度その娘さんと一緒にご挨拶にくるから心積もりしといてね。それよりあんたがあんな行動するなんてねぇ?そっちの方が驚きなんだけどね。」

「そうなんだ、よかった。」

それを聞いてなぜかとても安心したのか強い睡魔に襲われた
そのあと少し母との会話を続けたあと、ちょっと休むと言って眠りについた

その後、慣れない病院生活が始まってから1週間ほど経った頃だろうか


「失礼します。」

誰かが入ってきた。


「先日は私たちの娘を救っていただき本当にありがとうございました。感謝してもしても足りません。」

この間、俺が救った娘さんの両親らしい


「あ、ども、はじめまして。とんでもないですよ。むしろすみません、こんな格好で。」

「ほら、あなたもちゃんとお礼を言って。」

そうお母さんに急かされて後ろに隠れてしまっていた女の子が姿を現した
でも恥ずかしいのだろうか、それとも病院に慣れないのだろうか、もじもじしている

当然の反応だ


「ごめんなさいね、ちょっと緊張しちゃってるみたいで。」

そのあと、向こうのご両親からひたすら感謝を述べられては俺は謙遜するというやりとりがしばらく続いた
俺の母がちょうど病室に来てからは、そっちと話が弾んで盛り上がっている
女の子はずっとお母さんのそばにいる、何か言いたげなそぶりで


俺もヒーローになれたかな

それよりも、大学どうしよう?
頭の中は今後の生活プランのほうが不安でいっぱいだった



あれから、20年が経った_____________________

あの後、無事退院し、少し後遺症は残ったけど生活するには差し障りがない程度だった
大学も遅れを取った分必死に勉強し卒業した
我ながらやればできるじゃんなんて思ったけど、あの経験があったからこそ何かスイッチが入ったのかもしれない
周りと同じく就活もして、今もごくフツーのサラリーマンをやっている
あの出来事以外は結局ありきたりな平凡な人生
またレールの上って感じ


だったこのあいだまでは・・・


今俺はまたベッドの上にいる
ベッドの上にいることが俺のレールの上なのかなんてまたひねくれた思いを馳せながら

この間、会社で倒れた
すぐに、近くにいた同僚が救急車を手配して病院に搬送された
意識を取り戻したらベッドの上だった

懐かしいかんじがした

医者が来ていろいろ俺に話をしていった
俺はスキルス性の癌に侵されていると。余命は半年ほどらしい
また半年かなんて思う余裕がなぜかあった
そのあと、父と母が見舞いに来てくれて、大丈夫かとか声を掛けてくれた

隠していても無駄だからすぐそのことを伝えた

父は窓の外を眺め、母は目に涙を浮かべている

当然の反応だ

父と母は俺と少し他愛もない会話をしてから帰って行った
一生懸命取り繕うとしてくれてたけど、帰る時の背中が気持ちを全部物語ってた

ああ、残り半年か
急にタイムリミットが現れたな
人は誰しも死ぬけどいつ死ぬかなんてわからないからな
でもまさか、おやじおふくろより先になるなんてもっとわからないよ。

また病院生活が始まった
久々だけど、全く慣れていないわけではない病院生活
残り限られた時間だしやりたいことしよう、といってもこんな状態じゃやれることも制限される

そんな日々の中でいつもお世話に来てくれる一人の看護師の女性とよく世間話で盛り上がった

偉いなぁ、仕事とはいえこんな奴と楽しく会話なんてしてくれて

そんなある日。
ひょんなことから、その看護師の女性と映画の話になり、俺がスパイダーマンみたいなヒーローに憧れてた話を語った
そのまま、何の気なしに大学生の頃こういうことがあってと、あの日の出来事の話を自然に続けていた
俺は自分のペースでテレビ画面見ながらしゃべっていたから気が付かなかった


その女性は泣いていた


一瞬、え、なんで?なにがあったの?となった
よくわからないけど、とりあえずすみませんと呟いた


「...................ありがとうございました.....」

その女性がかすれるような声でそう言った。

「あの時は救ってくださりありがとうございました.........」

涙声になりながらそう続けた。


理解するのに少しの間が空いたが、それは狭かった。


「えっ、まさかあの時の・・・」

「あの時...ありがとうと言えなかった.......」
「“いつも”どこかで出会えたなら伝えたいと思い続けてきた..........」

「     あなたは」

「        あなたはっ!」



「ずっと、探してた私のヒーロー!」



死ぬのが怖い。死にたくない。初めてそう思った。

俺、ヒーローになれたかな?


【ずっと、探してた私のヒーロー】おわり

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