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どもり克服(本のはじめの方を紹介)


はじめに



 「どもり」はなった人しか、理解することはできない。

 他の人に「言葉がうまく出ない」と言っても疑問に思われる。

 「言葉をうまく話せない?」「どういうこと?」となるのがオチだ。

 どもりになったことのない人の理解を得ることは難しい。

 口があるのに話せない。脚があるのに歩けない。舌があるのに味がしない。

 「どうして?」と聞きたいのはこっちだ。

 なんで言葉がスムーズに出ないのか、自分でもわからない。

 聞かれるこっち側の方がよくわかっていないのだ。

 幼稚園に通っている、子どもですら言葉を話すことができる。

 もともと人間に備わっている機能だから当たり前だ。

 じゃあ、どうして自分は言葉を出せないのか?

 そんなことを考えても、答えは見つからない。

 神様のイタズラなら悪質すぎる。

 示談をして、慰謝料を踏んだくってやりたいくらいだ。

 もちろんそんなことはできず、また明日がやって来る。

 変わらない日常。

 そして、突きつけられる、言葉を出せないという事実。

 どうにかしようと、考えて、考えて、悩み、嘆き、最後には、自己嫌悪に陥ってしまうのは当然の流れだ。

 もしかしたら、どもりで言葉を出すことを諦めている人だっているだろう。

 だが、この本を見てくれているなら、少しでもどもりを治したいという気持ちを持っているはずだ。

 そんな気持ちに応えられるよう持てる力のすべてで「どもりを克服する方法」について解説していきますので、最後までよろしくお願いします。


 ※この本はあくまでも自分の体験に基づいて書いているので、すべての人に当てはまるとは思っていません。

 しかし、本編で紹介してきた中に一つでも、「自分に足りなかったもの」や「参考になったもの」が見つかったなら嬉しく思います。

 どもりを経験した者として、この書籍が少しでも皆様の助けになれば幸いです。


目次

はじめに
目次

1どもりでは何が違うのか
 買い物
 どもりの二次災害…

2どもりを克服しよう
 第一段階「焦り」 連発と伸発
 第二段階「闘い」 難発
 第三段階「諦め」回避により会話から逃げる
 人前でも家のように声を出す

3始まる前の準備
 交感神経と副交感神経
 深いところの原因を取り除こう
 この書籍の全体図

4ストレス
 身体への影響(枝)(薪)
 精神への影響(火種)
 ストレスを解消しよう(空気)
 ストレスの溜まりやすい性質(空気)
 ストレスを予防しよう(空気)
 自分の考え方に気づく(空気)

5呼吸
 浅い呼吸と深い呼吸(薪)
 腹式呼吸と胸式呼吸(薪)
 鼻呼吸と口呼吸(薪)
 舌(薪)
 口周り(薪)

6身体の歪み
 姿勢(薪)
 ストレートネック(スマホ首)(薪)
 反り腰(薪)
 猫背(薪)
 姿勢を正そう(薪)
 身体を柔らかくする(薪)

7脳
 脳が痙攣する(枝)
 脳が痙攣する癖を治す(枝)
 瞑想(枝)
 瞑想のやり方(枝)
 瞑想の準備(枝)

8普段の意識
 〇〇〇〇と思い込まない(空気)
 脳内で声が出るイメージを作る(枝)
 会話をするとき視線を上げる(火種)

9声
 自分の出しやすい声を出そう(火)
 感情や気持ちを込めて声を出そう(火種)
 声の出し方(火)
 声を出す練習をする(火)
 実際に人と会話をする(火)

10もっと声を出しやすくする
 肺活量(火種)
 精神を鍛えよう(環境)

おわりに

1どもりでは何が違うのか


 「声が出る人と出ない人では何が違うのか?」

 「声が出ないと日常がどうなるのか?」解説していきます。

買い物

 スーパーのレジでの会話


 スーパーでいろいろなものを見て回るのは楽しい。

 目新しいものに出会う喜び、何を買おうか考え想像している時間、歩くことにより身体を動かせること。

 そのどれもが、気分転換やストレス解消になる。

 ここまでは、どもりを持っていても同じだ。

 しかし、レジによりその気分がひっくり返される。

 レジでは当然、「言葉」を発しなければならないからだ。

 今でこそ、セルフレジがあり言葉を交わさずに買い物を済ませられるが、スーパによってはないところだってある。

 そこでは、ポイントカードの有無、レジ袋、支払い方法について確認される。

 ポイントカード「持っています」、レジ袋「いりません」、「PayPayで支払います」と最低限の会話をしなければいけない。

 首を縦や横に振るだけでは通じない。 

 きちんと声を出して伝えなければならないのだ。

 公衆の面前で誰だって恥をかきたくない。

 だから、覚悟を決めて頭の中で「持ってます」と言葉を繰り返し、呼吸を調え、レジで商品がピッとされるのを待つ。

 そして、いざ言葉を出すときがやってくる。

 ここで、今持てるすべてを注ぎ込んだ言葉をこの一瞬にぶつける。

 この全身全霊をかけた言葉によって、なんとかレジという関門を突破し、ことなきを終えることができる。

 しかし、ときには失敗することもある。

 例えば、呼吸のタイミングが合わず「もっも…てます」(持ってます)と、言葉に詰まってしまうことがある。

 それで、なんとか伝わったならいいが、伝わらないこともあるのだ。

 そういう場合、「え? もう一回言って」みたいな顔をされたり、聞き返されることがある。

 つまり、もう一度言葉を発さなくてはいけなくなるのだ。

 一度目で言葉に詰まって、心がポキッと折れてしまっているのに、再び言葉を出さなければならないなんて地獄そのものだ。

 だが、そんなことも言ってられないので、最終手段である身振り手振りを加えた、どもりながら声を出してなんとかやり過ごす。

 そして、冷めない緊張を感じながら、マイバックに商品を入れスーパーを出る。

 外の風に当たり一息つき、マイバックの重荷を感じ、なんとかやり過ごしたと実感する。

 ここまでが、どもりを持っている人のスーパーの買い物だ。

 こんなに頑張って買い物をしなければいけないなんて、本当に勘弁してほしい。

 普通に声を出せる人にとっては、なんでもない日常の一コマだが、どもりの人にとっては、覚悟を決めなければならないのだ。

 コンビニでアメリカンドックを買う


 さっきの、スーパーでの買い物はなんとかなっている方だ。

 しかし、どうにもならない場面だってある。

 それは、コンビニやレジで注文する、フランクフルトやアメリカンドック、唐揚げなどのレジに置かれている商品だ。

 あれがどうしても買えない。

 例えば、アメリカンドックをレジで買うとする。

 自分の会計の番になると、店員は商品を持っていない自分に対し、言葉を促すように目を合わせてくる。

 「アメリカンドック1つ」と言うだけでいい。

 だが、言葉を出すことができない。

 先ほどは、なんとかどもるくらいで声を出せたが、今度は声自体が出ないのだ。

 これには、わけがある。

 言葉を出すとき、「聞かれたことに対する返答」と「自分から声を出すこと」の2種類に分かれる。

 相手から声をかけられると、タイミングがとれている分、声を出しやすい。

 しかし、自分から声を出すことになると、何もリズムが生まれていないところに、声を晒さなくてはならなくなり一気にハードルが高くなる。 

 どもりでは、受け身で声を発するのと、自発的に声を出すのではまったく難易度が違うのだ。

 それにこの場合、「YES」or「NO」の質問ではないため、それっぽく頭や手を振って誤魔化すこともできない。

 どもりにとって、コンビニでのレジでの注文は、まさに鬼門なのだ。

 コンビニのレジでの対処法


 こうしたレジでの買い物には、対処法がある。

 それは、店内の商品を何点かレジに持っていくことだ。

 これにより、すぐに言葉を発することを回避でき、一呼吸をおいて言葉を出すことができる。

 店員の方が商品に気を取られているうちに、準備を調えられるということだ。

 しかし、この方法は会計金額を増やしてしまうという難点がある。

 そのため、どうしても食べたいという場合のみ、こうして買い物をするわけだ。

 ただ、コンビニのレジでの買い物は、必要性が低いから助かっていると言える。

 どうしても、唐揚げやフランクフルトが食べたいということはあまりないからだ。

 だが、これが仕事や学校生活の会話となると、避けられない場合だってある。

 普通の人にとっては、平坦な道でもどもりの人にとっては、高い壁を何度も超えていかなければならない。 

 どもりでは、苦労の連続なのだ。

どもりの二次災害…

 雨よりも土砂災害の方が怖い


 どもりになったことのない人は、どもり自体を知らない。

 もし、どもりを知っていても「どもりって言葉を出しにくいことでしょ」と言う。

 しかし、それだけではないのだ。

 むしろ、言葉を出せないことによる被害の方が大きい。

 どもりが「雨」なら、二次災害は「土砂災害」である。

 雨が降るなら家の中にいればどうってことはないが、雨により近くの山から土砂が流れてくれば、家自体が崩れてしまう。

 どもりも同じで、言葉が出ないことが苦しいのではなく、二次災害により多くの人は苦しんでいるのだ。

 人と話さなくていいなら、喜んで話さない方を選ぶ。

 少し寂しいと感じるが、他に楽しいことを見つければなんとかなるだろう。

 だが、現実に生きる以上そうはいかない。 

 学校や会社、買い物に行くことでさえ 人と関わり話しをすることになる。

 声を出すことは避けられない。

 どもりの人は、どもってしまうことを恐れている。そして、自分がどもりだと知られることも。

 もし、自分がどもりだと知られたら、可哀想な人みたく思われ、無駄に気を遣われてしまうだろう。

 そうなると、自分は普通の人と違った扱いをされる。

 つまり、普通の人ではなくなってしまうのだ。

 だから、一生懸命自分がどもりということを隠しながら、頑張って声を出して生きている。

 どもりの人が苦しんでいるのは、声を出せないことではない。

 必死に声を出して生きていかなければならない状況に苦しんでいるのだ。


 それに、その状況からさらなる災害が生み出される。

 それが、三次災害。

 一次災害「声が出ない」

 二次災害「声を出さなくてはいけない状況」

 そして、三次災害。

 ここに、どもりの人しか知らない苦労がある。

 それを次から解説していきます。


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