就労困難者の働くことへのハードルを考える
何かしらの病気を抱えながらも就労の道を模索しているなら、「就労困難者」というワードを一度や二度聞いたことがあると思われる。
2019年に公表された就労困難者に関する調査研究(公益財団法人日本財団)によると、就労困難者は以下のように定義されている。
そして、この定義に基づいた就労困難者の数は、この時点で、推計1,614万人(積み上げ方式)に達すると報告されている。
ちなみに2019年の労働人口が平均で約6,800万人なので、かなりの割合で就労困難者が存在していることがわかる。
ただ定義からもわかるように、無職状態に置かれているだけではなく、働いているものの低賃金であったり、不安定な就労状態であっても就労困難者に該当する。
現状自分自身は一般的な就労が難しく、言うまでもなく無職の身なので、まさに就労困難者に該当するうちの1人ではあるが、働けている人とそうではない人の間にはそれなりのハードルや壁が存在していると思うので、同じ就労困難者という括りの中でもステージのような階層があるように感じる。
個人的には、このようなハードルを考えること、もしくは他の人にも知ってもらうことが大切だと感じるので、今回、健康上の理由から働くことが難しい就労困難者にとって何がハードルになっているかを考えてみたい。
結論から言えば、日々の体調が安定しないことにあると感じる。つまり、働きたい気持ちはあっても、体調を優先することで一般的な就業スタイルである週5日8時間労働が難しかったり、体調が不安定であるからこそ仕事を休みがちになったり、そういう体調面に起因した就労に対するハードルの高さはあるだろう。
自分は無職になる前、それこそ週5日8時間労働、時には早出残業、出張もあったが、今の体調でその当時の働き方が出来るかと問われたら、間違いなく難しいと答える。
体調管理も社会人の大切なスキルと謳う人も少なくないが、会社の労働力を考えるならば、体調が不安定な人よりも安定した人のほうが、色々と任せられることも多く、スケジュールの観点から言っても安心である。
ここ数年、「人材不足」という言葉を耳にする機会が増えたが、それでも企業が求める人材は最低限として体調が安定している前提での話となる。
体調が安定しないのなら、働くという選択肢を諦め、障害年金や生活保護に頼るという選択肢もあるだろう。もちろんそういう選択肢が悪い訳ではないし、生存に関わるなら積極的に利用するべきである。
しかしながら、就労困難者に該当する人たちの働きたいと思う気持ちは尊重しなければいけないし、その選択肢をハナから奪ってはいけないとも思う。
そのための環境づくりというのは今後さらに重要視される。
オフィスワークから在宅ワークへの転換、スポットワーク(スキマバイト)による多様な働き方はその代表例ではあるが、まだまだ局所的な話に留まる。少なくとも地方在住の自分から見れば、こういう話では都会との格差を強く感じる。
また企業側の取り組みの話だけではなく、就労困難者自身の体調を含めた労働者側の状態を汲み取る必要がある。そうでないとミスマッチが容易に起きてしまう。
例えば、具体的に体調が悪くなるのはいつ頃なのかという話について、言語化できるのであればしておいて損はないと思う。
起立性調節障害で朝が起きられないとか、低気圧だから身体が痛くてしんどいとか、具体的に言えば言うほど周囲に対する説得力が増すと感じる。逆に言語化できないと周囲の理解を得るのも一苦労である。
今回、就労困難者の働くハードルについて、その高さの要因になっているものとして「体調の不安定さ」を挙げたが、当然のことながらこの他にも様々な要因はあるだろう。だから正直、様々な要因が複合的に絡み合って、冒頭のような数になっていると感じる。
ただ何をするにしても体調が悪ければ日々の行動は制限され、それこそ寝込んで一日が終わってしまったということも就労困難者にとってはごく自然のことである可能性もゼロではないので、体調の不安定さを甘く見てはいけないのだろう。
つくづく健康であることの価値は計り知れないものである。