療養のカタチ

気づいたらパリ・オリンピックが終わっていた。

自分はスポーツ観戦を時々するので、まだ日本ではマイナーと呼ばれるスポーツが観戦できるオリンピックというのは貴重な機会である。

ただ今回開催地のパリは、日本と約7時間の時差がある。それゆえ、競技結果を知るのは日本時間の明け方になってしまい、競技の過程を知らず結果だけを知るということもしばしばあった。

結果を知ってしまっている分、競技展開が読めてしまうこともあり、観戦の面白みが減ってしまい残念なところはあったが、それでも普段観戦する機会のないマイナースポーツを画面越しに観ることができたのは、やはりオリンピックの醍醐味だなと思った。

世界が注目するスポーツの祭典だけに、何かと物議を醸し出すオリンピックではあるが、今回のオリンピックは競技の中身よりも、場外で様々なトラブルを引き起こした印象が強い。

NHKアナの衣装、SNS上での選手に対する誹謗中傷、テレビ番組内での大御所の問題発言など色々あったが、中でも自分が気になってしまったのが、現在休職中のフジテレビ渡邊アナのオリンピック観戦についてだ。

彼女は昨年から体調不良を理由に会社を休職している。そしてその間、病名は公表していないものの、自身のインスタグラムで食べられなくなったこと、うまく歩くことができなくなったことを公表し、ファンからは深刻な病気ではないかと心配されていた。

一応断っておくが、自分は彼女のファンではなく、単に名前を知っている女子アナという程度である。

とは言え、今まで当たり前に出来ていたことが出来なくなってしまう辛さは、自分自身も同じような経験をしているので、そういった点でどことなくシンパシーを感じるところがある。

幸か不幸か彼女の姿は思わぬ形で公になった。インスタグラムで深刻な状態であることを度々公表していたからこそ、その言葉を信じていたファンは彼女の元気そうな姿を見て安堵した人、逆に、療養中なのにオリンピック観戦できるくらいなら仕事もできるのではないかと不思議に思った人、さらに療養中の行動としてはあり得ないと怒りを感じた人、彼女の行動については様々な意見が飛び交った。

自分の観測範囲ではあるが、概ねネガティブな意見が目立っていたように感じる。

療養中で、日々の生活に必要な買い物や役所での公的な手続きの為に外出することはあっても、時差が7時間もあって、移動は飛行機、慣れない異国の地という普段の生活圏ではないところに行くことは体力的なことを考えても難しい。憶測ではあるが、彼女の体力はかなり回復しているのではないかと思う。

個人的なことになってしまうが、自分は2020年の初め頃に大きな手術をした。その後、コロナ禍という未曾有の出来事も相まって病院の通院以外は外に出ることがない自宅療養という形だった。

自分は自宅療養だが、人によっては、あるいは病気の症状次第では、外出することが病気の回復を早め、以前の生活に戻れる可能性を高めることもあるので、療養のカタチに決まりはないのだろう。

あらためて今回の渡邊アナの療養中の行動について振り返るが、「人のふり見て我がふり直せ」ということわざがあるように、誰もが発信者になれる時代だからこそSNSとの付き合い方には今一度気をつけなければと感じる。

そして渡邊アナは事前に病気のこと、現在の体調のこと、オリンピック観戦をする予定のこと、会社からの渡航許可について、事後ではなく事前にSNSで伝えていたら状況は変わっていたのかもしれない。

また女子アナという人前に出る職業、そしてテレビ局のイメージを担うポジションだからこそ、彼女の行動は良くも悪くも所属先であるテレビ局の信用にも大きく関わってくる話である。休職していて療養中であっても。

自分が目にしたネット上のコメントを読む限り、今回の彼女の行動は、人前に出る女子アナとしては大きな向い風になってしまっているように思う。

彼女がこれからどのような言葉を発信するのか、発信するタイミングもあると思うが、次の言葉は彼女の今後に少なからず影響していくことは間違いないだろう。