これが愛じゃなければなんと呼ぶのか / 230610 米津玄師 2023 TOUR / 空想
米津玄師 2023年 TOUR / 空想の内容を多分に含みます。
思ったこと、感じたことを、好きなように記録しておりますので、
これからライブに行く人は、ご注意ください。
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米津玄師の曲を初めて聴いたのは高校の教室、放課後、友達のiPodで。流れてきたのはviviだった。もう10年以上前のことになる。
初めて行ったライブは「花ゆり落ちる」だった。それから「音楽隊」「脊椎がオパールになる頃」手が伸ばせば届くくらい近くあったステージが、ライブを重ねるにつれ、どんどん遠くなった。
他のアーティストのライブに行くこともあるけれど、なんとなく米津玄師のライブは自分の中で特別だった。自分の人生のどこか過渡期にライブに行くことが多かったからかもしれない。
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広島で行われた米津玄師のライブツアー「空想」に行ってきた。コロナの影響もあってか、ライブに行くこと自体が久々で、当日になっても、なんだかふわふわした気持ちで会場に向かったのを覚えている。
ライブはピアノの音から始まった。
画面に投影された、銀河を駆け抜ける白い列車。
青く輝く会場内に響いた、カンパネルラ。
夏、海、星、友達、幸福。そんな大切で、煌めくものがたくさん詰められたセットリストだった。曲のイントロが流れるたびに、隣に立っている友達と肩を寄せた。声を上げた。体が震えた。
初期に比べて最近はラブソングが増えた気がするけれど、今回のライブは恋愛に縛られない、もっと根元的な愛のようなものを感じた。明るい曲調の中に垣間見えるほの暗さは、日常の中に潜む、大切な人との出会いと別離を。大切な人とずっとそばにいたい、というもっと純粋な気持ち。
アンコールを待っているとき、ずっとこの瞬間が続けばいいと思った。隣で立っている友達はもちろん、会場にいる名前も知らない誰かと、同じ感情を共有していたいと思った。だんだん早く、バラバラになりがちなアンコールの手拍子が、全然乱れなくて、これが会場が一体になるってことなんだって思った。「好き」という感情があふれていると思った。
音楽は記憶と強く結びつく。楽しかったことも辛かったことも。昨日のこともろくに思い出せないのに、音楽が何年も前の、特定の時期の記憶を匂いを、そして感情を鮮明に甦らせる。米津玄師の曲を聴くたびに、あのライブのことを、これからきっと何度も思い出す。空に浮いた青く煌めく銀テープ、闇を切り裂くレーザー、祈りを捧げるように掲げられた手、歓声。
年を重ねていくと、別れの数が増えていく。毎日が楽しいことばかりではなくて、繰り返しの多い、変わり映えのしない日々が続く。どんなに辛いことがあっても。漠然とした不安を抱えながらも、私たちの「日常」は続いていくし、生きていかないといけない。
それでもライブを終えた後の、友達と歩いた雨降る道が、行きとは違って見えたこと。今ならどんなことも耐え切れるって、どこまでも行けるって、本気で思ったこと。上質な麻薬のように、体の中に染み渡って、明日からもまた頑張れるってただ漠然とそう思ったこと。
その日、確かに私は音楽に救われていた。
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米津玄師を私に教えてくれた友達は、今もまだ友達で、卒業するときに「友達を続けるには努力が必要だから、あなたも努力してほしい」と言ってくれた。昔みたいに毎日会えるわけではないけれど、米津玄師の曲を聴けば私たちは、いつでもあの頃の二人に戻ることができる。
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2023年6月10日
米津玄師 2023年 TOUR / 空想
セットリスト
01.カムパネルラ
02.迷える羊
03.感電
//MC
04.街
05.Decollete
06.優しい人
07.Lemon
08.M八七
//MC
09.Loser
10.Nighthawks
11.ひまわり
12.ゴーゴー幽霊船
13.KICKBACK
//MC
14.月を見ていた
15.打ち上げ花火
16.灰色と青
17.かいじゅうのマーチ
18.馬と鹿
19.新曲
//MC
20.POP SONG
21.アイネクライネ
22.PLACEBO
23.LADY