あのときせいいっぱい生きていたもの同士 永遠に / 240601 / Tempalay Tour 2024 “((ika))”
Tempalay Tour 2024 “((ika))”の内容を多分に含みます。
思ったこと、感じたことを、好きなように記録しておりますので、
これからライブに行く人は、ご注意ください。
誰かが書いているのを見たのだけど、Tempalayのライブは『あの世』を感じる。彼らのライブを形容するならば、この感覚が確かに一番近い。ここではないところへ連れて行ってくれる感覚。長い人生が終わって天国に向かうまでの幕間。終わりに向かう緩やかな多幸感。
焚かれたスモーク、熱気。点滅するビビットな照明。ピンク、グリーン、オレンジ、ブルー。みんな目を閉じて揺れている。腕は祈りのように伸ばされる。歓声。曲間の期待に満ちた静寂。一つの空間の中で、それらすべてが輝いていた。
ステージ上では綾斗さんがギターをかき鳴らしながら縦横無尽に移動する。ステップを踏むその姿はちょっと何かの儀式みたいだと思った。夏樹さんのドラムは捉えどころがない。いい意味ですごく気持ち悪い。AAAMYYYちゃんのシンセは音数がとても多くて面白い。わたしは音楽に明るくない。コードや機材やそんなことは全くわからないけれど、わからないこそ純粋に楽しめていいとも思う。
「とん」「憑依さん」「Q」のような妖しさから「ドライブ・マイ・イデア」「今世紀最大の夢」「月見うどん」のような郷愁まで、さまざまなテイストの曲たちが、一つのライブを通じて『人生』という旅を私に意識させる。
ライブ中、何度か勿体無いという気持ちになり目を閉じた。視覚から得る情報を遮断して、持ちうるすべてを使ってこの瞬間を記憶したいと思った。足元から伝う重低音。響きは心臓まで届き全身に血を巡らせる。アルコールの缶の重さと冷たさ。頭の芯を酔わせるような、麻薬のような酩酊感が心地よく続くこの時間を、余すことなく覚えておきたいと思った。
このツアーに向けて繰り返しアルバムを聴いてきたのだけど、ライブハウスで聴く音楽はやっぱり新鮮で、すごく楽しい。Tempalayの音楽が大好きなんだと再認識する。音に綾斗さんの声とAAAMYYYちゃんの声が重なって脳内が痺れる。
最後に歌った『そなちね』はこの世の夏の曲の中で一番美しいと思う。聴くたびに色んな気持ちになる。懐かしくて優しくて、でもどこか切なくて捉えどころがない。なぜこんなにも心が揺さぶられるのだろうといつも思う。切実さを孕んだ叫びが少し靄のかかった青と白の世界に私たちを連れていく。この曲がある限り私はTempalayから一生抜け出すことができないのだと思う。
鮮烈でアンコールを求めるのが無粋なほどに完璧な終わり。光に包まれた、誰もいなくなったステージ上で、事切れたように迎える終わり。長く響いていたギターの音がエフェクターのスイッチで唐突に途切れる。ここで終わるのだと、強く理解する。これ以上なんてないほどに完璧なラスト。
BLUE LIVEはステージが地下にあって、ライブが終わって階段を上がっていく時、現世に、現実に戻ってきたような感覚に陥った。当たり前なのだけど、ライブが終わればまた日常が始まる。会場の外は開場時にあった賑やかさは息を潜めて、ただ静かに海風が吹いている。
「みんなにまた会うために作品を作るよ」
この言葉だけでしばらくの間生きていけそうです。
本当にありがとう。