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髪の色は本当は好きだ / 230826 / エターナル・サンシャイン

夏になると、毎年「こんなに暑かったっけ?」と思う。それと同時に「寒いって、冬ってどんな感覚だったっけ?」とも思う。何度経験しても毎回新鮮に感じることができて、ちょっと面白い。朝晩が過ごしやすくなってきた気がする。きっともう少しでまた思い出す。

夏はほんとうは生涯に
ただ一度だけなのではないか 
夏がめぐって来るたびに
今度こそはと夢見るが 
終わってみるとどの夏も
生涯に一度の夏ではなかったと思う 
駅に止まってもそこが
降りる駅ではないみたいだ

谷川俊太郎「夏が来た」


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朝、時間に余裕があったので、ずっと気になっていた『エターナル・サンシャイン』を観る(ブルーロックの凪が好きな映画らしい)。

バレンタインを控えたある日。ジョエルは喧嘩別れした恋人がクレメンタインが、とある施術を行い、自分との記憶を全て消去しまったことを知る。この事実を知ったジョエルは悲しみに暮れ、自らも彼女の記憶を全て消してしまうことに決める。

主人公のジョエルは繊細で少し奥手、生真面目な性格をしている。一方のクレメンタインは明るく活発で衝動的。映画の中で、施術中のジョエルが脳内で過去の思い出を追体験していく。対照的な二人がお互いの足りないところを埋めるように関係を築いてきたこと、そしてその性格の不一致のために別れるという結末に至ったことが、過去の回想とともに明かされる。

デート、何気ない会話、ベッドでふざけ合ったこと、凍った湖の上で寝転がって星を見たこと。「今この瞬間に死んでしまってもいい」そう思うほどに大切な存在だったのに、隣にいることが当たり前だと過信してしまったこと。

印象的に残っているのは、幼少期の辛い思い出の中に、クレメンタインが登場してジョエルを救うシーン。辛かったあの瞬間に、自分の味方でいてくれる存在が側にいてくれたらどうなっていただろう、そう思うことあるよね。

結局のところ、近くなればなるほどに、お互いの悪いところは見えてくる。そこをどれだけ許容していくかが関係を続ける秘訣なのだと思う。一度失わなければ、失くしてしまったのの重要さがわからないというのは皮肉なものだけれど。きっと二人は傷つけ合いながら、それでも離れられずにずっと生きていくのだと思う。

「なんであの二人が一緒にいるのだろう?」たまに余計なお世話のように、そう考えてしまうことがある。けれど当事者たちが愛し合っているのであれば、それは正しいことのように私は思う。違いを知りながら、それでも一緒にいることを選択する、あるいは離れられないのであれば、むしろそちらの方がきっと価値がある。

「君のことを嫌う理由がない」
「でも嫌いになる。そう考えるようになる。そして私はあなたに飽きて息がつまるようになる。だって実際にそれが起こったことだもの」
「いいさ」
「いいわよね」

『エターナル・サンシャイン』
オレンジの髪はやっぱり最高