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きっと人生は革命 / 240505 / Tempalay (( ika ))

夜に特に理由もなく外に出た。季節外れに寒いのも、面倒なのも、いつもだったら嫌になることの全てが、どうでも良くなる。いつもの騒がしさが息を潜めた商店街。車も人も通らない横断歩道で点滅する信号。夜の色を落とし込めたような川。冷たい夜の酸素に包まれていると、何かが変わったわけではないのに、すこし自分が浄化されたような、洗練された存在になる気がする。



Tempalayのアルバム『((ika))』が先週発売された。19曲もの曲が収録された今回のアルバムは、タイトなスケジュールで製作されたとは思えないほどに密度の濃い作品だった。当たり前ではあるのだけれど、アルバムが最初から最後まで通して一つの作品であり、曲のつなぎ目まで聞き逃してはいけないとを再認識する。つかみどころがない。それでいてそれが心地よい浮遊感。ゴーストアルバムでこのバンドを知ってからずっと、既存の曲を繰り返し聴いていたので、新しく知らない音がこんなにもたくさん流れてくることをなんだか不思議な気持ちになる。

今回のアルバムはこれまでよりも、温かみや人間らしさ、湿度のようなものを感じた。これまでの作品のように遊び心もありつつ、それでいて大切なことはストレートに伝えているような気がする。特にAAAMYYYちゃんが歌うパートは透明感と美しさと切実さを孕んだ真っ直ぐな歌詞が多くてとても素敵だった。もしかしたら綾斗さんが歌うには直球すぎたからなのかもしれないけれど、そこも含めてすごくいいなと思った。



どの曲も好きなのだけれど、MVも発表された『預言者』は狂おしいほど好き。

未来のこと話せるより
今何思ってるのか知りたい

メロディーはもちろんだけど、言葉選びや耳障りの良さは突き抜けていて、それでいてロマンチックで切ない。これから先何度も聴くお守りみたいな曲になるのだと思う。



Tempalayの音楽はどんな時も馴染む。私の場合、気持ちが落ちている時はなんとなく音楽を必要としなくなることが多のだけれど、苦しい時も何もかも放り出したくなるときも、Tempalayの音楽は不思議と受け入れられる。昔、綾斗さんが「自分たちの音楽はBGM的に聴いてくれていい、どんな聴き方をしてもいい」「曲を通じて伝えたいことはない」とインタビューで答えているのを見たことがある。そんなフラットなスタンスの彼らが作る音楽だからこそ、私は救われている。



Tempalayの音が私の日々の空白を埋める。サイケデリックな音がリズムが輪郭を変える。細かいことがあやふやになる。お酒を飲みながら、少し揺られながら、私の思考をどこか遠いところに連れて行ってくれる。そんなTempalayの魅力が溢れる音楽を聴いてみてほしい。

私はね預言者なの
あなたにもっと素敵な未来
訪れる訪れさせよう