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中島らもさん「お父さんのバックドロップ」を再読

今日は父の日なので、父親を題材にした本について書きます。大江健三郎さんの作品群は既に書いたので、中島らもさんの「お父さんのバックドロップ」を再読してみました。40頁ぐらいで、小学生の男子の口調、文体で書かれているので、すごく読みやすいです。この作品も絵本みたいなお話です。

悪役プロレスラーの父と、父を反面教師としている少しガリ勉タイプの男の子のお話。自分も父親になってみて、子供は親の思い通りには本当に育たないって痛感させられます。それでも、どこか自分の子供には、どうしても認めてもらいたくてっていうのが、活動の原動力みたいになっている姿が微笑ましいし、心の清涼剤になります。中島らもさんのエッセイ、短編小説は、たまに読み返したい時があります。

ところで、岸見一郎先生と古賀史健さんの共著でアドラー哲学をテーマにした「嫌われる勇気」が長きにわたり、自己啓発系書籍でベストセラーランキング入りしていると、どこかのネット記事で読みました。私も4年ぐらい前に読みましたが、自己承認欲求に囚われすぎて、苦しい思いをされている方が、世の中にたくさんいるということなのかと思います。ですが、この「お父さんのバックドロップ」の中で繰り広げられる父が子に求める「自己承認欲求」みたいなものは、不思議に尊いような気もするし、完全に無くしたらダメなんじゃないかと思いました。

もう一つは、冒頭にガリ勉タイプの息子(下田君)が、けんかなんか強くてもしようがなくて、政治力や経済力を裏付ける頭の良さで勝負しなくてはいけないなどと述べる下りがありますが、今AIが急激に台頭している今、頭の良さみたいなものも大切なのでしょうが、この作品のプロレスラーのお父さんみたいに、あえて悪役(ヒール)を買って出る、そういう漢気みたいなものの方が、これからははるかに大切になってきているのかもしれない。そんな感想も今回再読して思いました。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。








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