こころを漉くもの 【秋ピリカ応募】
「なぁ、石塚さんとこの孫娘が帰って来ちょるの、知っとる?」
背後から不意に自分の苗字が聞こえてきて、倫子は思わず体に力が入った。
「そりゃみんな知っとるいね。じい様の紙漉きを手伝うんじゃろ?」
初老の女性が二人、買った物をエコバッグに詰めながら話している。その「みんな知っとる紙漉きを手伝っている孫娘」がすぐ近くにいるとも知らずに。
レジの近くにいた倫子は、二人に気づかれないようそっとスーパーマーケットを出た。祖父の軽トラに乗り込み、エンジンをかける。
この町に来てから