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生きることが抵抗だ

東京都知事選挙を終えた直後の数日間は、荒ぶる農民と化し、粗野な言葉や愛想ゼロ対応を撒き散らしては周囲の皆さまにご迷惑をおかけしました。。。

鼻息荒くフガフガしていた農民は頭を冷やしました。冷やした結果、前よりも、政治が面白くなりました。

「最近政治に関心を持った人は、負け慣れていないからすぐがっかり(&挫折)しがち」
はい、私です。

今回の選挙結果はミクロな点でしかなく、下流から上流へと、過去の点を遡って政治風土や政党の移り変わりを捉える視点が抜け落ちていました。
広い視座からの分析になるほどと聞き入るうちに、ひとり街宣が象徴するアクティビズムと、ネット保守がもたらす社会への悪影響に抗おうとするジャーナリズムに、暗闇の中の希望を見出しました。

都知事選挙は、国政選挙の闘い方と異なり、かなり特殊。
現職が圧倒的有利の中、野党として出馬するからには、無党派層からいかに知名度を獲得し、票をまとめられるかが結果を左右する。
有権者の数が多く、無党派層の比率が高い東京で鍵を握るのは、無党派層に訴求できるかどうか。

今回の都知事選挙は、ひとり街宣*が行われたり、YouTubeやSNSを駆使して知名度を上げたかどうかで選挙結果が変わる(Webで政治が動く)ようになったり、反権威主義の右派ポピュリズムが全面に出たり、著名なクリエイターが理由を挙げて投票行動を明らかにしたり、都議補選では自民党が大敗してパーティーの裏金事件をはじめ自民党への忌避感が表出したり、色々あった。(注目を集めるために暇つぶしで選挙戦出てるんだろうな...みたいな候補者もいて怖さもあった。)

なぜ石丸さんの票が伸びて、蓮舫さんが伸び悩んだのか。
それは2004年、小池さんがイラクの人質事件で唱えた「自己責任論」から接続している。
20年という長い年月をかけて、自己責任社会が浸透し、一人ひとりの考え方に「自分ファースト」がインストールされ、無意識のうちに自己責任が内面化されてきた背景がある。

自己責任社会では、どうせ自分たちは放っておかれるから、自分たちでなんとかするしかない、と考える。
だから自己啓発本が売れる。公共性にも関心が薄い。
でも経済には関心があるので、ネットの経済メディアを購読する。

本当は自分たちの暮らしも、先行き不透明なはずなのに、現状に対する不満をこぼすと「それじゃ経済が回らない」という謎の経営者目線を持っている。
経済に関心があり、成長や安定を求めるからこそ、将来性が期待できそうな先端技術を信奉する。

自己責任論を内面化すると、共感性に乏しくなる。
社会的弱者への共感が全くない。
「社会的弱者は助けられていてずるい」とか「女性は優遇されている、逆差別だ」と感じるようになる。
弱い立場に置かれたものを自己責任論で抑圧し、叩く。
それが当たり前になっている。
公共性へのシンパシーが全くない首長候補が支持されてもおかしくない、そんな社会の土台がすでにあった。

そんな人たちは、自民は嫌だけど立憲はもっと嫌だという有権者、既存の政治に飽き足らない有権者、自己責任論やミソジニーを内面化している有権者と重なる。
彼らにとっては、既存政権を外側から改革してくれそうな候補者が「リーダーシップを発揮する壊し屋」であり、代弁者として爽快に映る。

自己責任社会では、自己啓発的な語り口調でエモーションに働きかけ、自分こそが一番の改革者だと印象付け、「この人だったら政治を変えてくれるかもしれない」というムーブメントをつくりあげるのが上手いほど、政策については全然話していなくても、中身がふわっとしていても、追い風に働く。

「現状に対してなんらかの変化を求めているときに、人々は極右に触れる」という潮流。
無理ゲーすぎる。。。

で、現職の小池さんは、ステルス戦略で自民党の組織票を堅守、所得制限なしの高校無償化や保育料無償化、無痛分娩の補助など、お金のばら撒きで子育て世代の30代・40代の女性の支持を集めた。テレビのオファーは断る一方で、YouTubeなどのネット番組には出演するなど、ネット政治も取り入れていて、結局守り勝ち。

蓮舫さんを支持し連帯する女性に対するバックラッシュもあったし、女性の間でも、誰の政策に包摂されているのかをめぐって分断があった。
じゃあどんな政策を打ち出せばより多くの人に訴求するのかを考え始めるとかなり難しく、しかも、政策をしっかり説明したからといって、政策には関心がなく、既存の政治をぶっ壊したい人からの支持が得られるわけでもない。
弱者性の兼ね合いが、連帯ではなく分断をもたらしてる。
選挙って、政治って、めちゃくちゃ難しいな。

まーたこんな長い投稿して!そういうとこだぞ!と内心ひとりツッコミを入れていますが、
こうした投稿もまた、ひとり街宣の一環として、細々と長く続けていきます。
荒れ狂う日々も穏やかな日常も、同じ斜面にあります。
どうか暖かく見守ってください。
イギリスでは労働党が勝利し、14年ぶりに政権が変わりました。
フランスでは、第1党と思われていた極右政党が第3党に後退し、左派が勝利しました。
希望を持って、いきていきましょう。

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