ファーム事件簿〜虫編〜
先月、畑の鶏舎にたぬきが夜な夜な現れては
鶏を襲うという通称“怪盗たぬき事件”が勃発。
2ヶ所に分けていた鶏舎を、
より強度が高くて安全な方に集約したり、
周辺を補強したり。
試行錯誤の末、なんとか事態は収束。
これでファーム事件簿もひと段落かと思いきや、
目下頭を抱えているのが、トマトの食害。
怪盗たぬきよりも逃げ足は遅いけれど、
頭数はめちゃくちゃ多い、オオタバコガという虫。
ハウスで育てている大玉トマトの花を枯らし、
茎や果実に穴をあけては食害し、
葉っぱや果実にウンチを放置して去る、
を繰り返す罪深さ。
今年はすごく良くできた、と喜んでいた矢先…。
雨の日はスタッフ総出でハウスに集合し、
枯れた花、果実の穴、葉や果実に残されたウンチを頼りに、オオタバコガ探し。
だいぶ分かりやすい手がかり(💩)を残してくれるので、犯行(💩)現場からそう遠くない距離で割とあっさり確保。
でも幼虫は、大きくて数センチ、小さいとほんの数ミリしかなく、くまなく探そうとすると、
一株あたり2人がかりで捜索しても
かなり時間がかかる。
果てしなく続くタバコガハンティング。
畑の業務は探偵業だけではないので、
トマトにかかりっきりでお世話することもできず、
こうして放置している間にも
トマトが食害に遭っている現状が心苦しい。
トマトに限らず、有機野菜を育てるとは、
畑も野菜も自然の一部であるということ。
そこに住まう生き物たちとの、
持ちつ持たれつな関係性の中で、虫や鳥、
野生動物からの影響も引き受けることになる以上、
彼らの生態を「罪深い」と考えることも
人間本位だ。
とはいえ、採り頃を迎えた野菜の、
収穫量に匹敵する大量のロスを直視すると、
やっぱり胸が痛む。
穴あきトマトはまだ緑色で、
A品としては出荷できないけれど、
可食部は残っているので、
B品として消費してくださる方がいればと、
ご予約を受け付ける予定。
緑色トマトは、チャツネ(インドなどのアジア地域で使われる、野菜や果物をスパイスと一緒にペースト状に煮詰めた調味料)にすると、
とても美味しく生まれ変わる。
カレーや煮込み料理のコク足しに使うこともできて、ただ捨ててしまうにはあまりにももったいない食材。
そして、虫に食べられることなく育った真っ赤な大玉トマトは、
たぬきに狙われてもなお命をつないだ鶏たちや、
孵化してから敵に捕食されることなく大きく育ったウミガメや、
その他自然界に生きる様々な生き物たちと同様に、
そこにあるだけで尊く、ただただずっと、見ていられる。