常識が非常識になる時代
ー外国人の寿司職人
たまたま入った東京都内の回転寿司。そこで外国人が寿司を握っているのを見て、これまでの当たり前が当たり前でなくなる時代になったと、あらためて感じる。少子高齢化が進む中、どの業界でも人手不足が深刻だ。寿司が日本人のソウルフードだとしても、外国人を積極的に雇用しなければ、店が存続できないケースも増える。店が減れば、気軽に寿司が食べられなくなり、寿司好きとして実に由々しき事態になる。
どこの国籍の人が握ろうと、これまで通りの安くて美味い寿司が食べられるならば、それで良い。願わくば、日本人のベテラン寿司職人のような妥協を許さないスピリットを持つ外国人寿司職人がたくさん出てきてもらいたい。そんな思いを胸に、寿司をつまむ。
がってん寿司
いつ終わるとも知れない新型コロナウイルス感染症の拡大。政府が不要不急の外出を控えるよう求めた緊急事態宣言下の休日、奥さんと一緒にランチに出かけたのは回転寿司チェーンの「がってん寿司」だ。テークアウトが中心のようで店内に客の影はない。イートインすることにした。
カウンターの中には、日本人のベテラン寿司職人らしき人物2人と、板前スタイルの若い外国人。グローバル時代、顔で国籍を判断するのはナンセンスだが、顔つきからして南アジア系だろうか。「いらっしゃいましぇー」と、たどたどしい日本語。しかも声が小さい。どこか可愛らしい。
オーダーに応えるこの店特有の言い方「がってん、承知」では、さらに声がか細くなる。発音にしにくいのか、あるいはどうして自分がこんなことをしなければならないのかと思っているのか。それは分からない。職場近くにあるコンビニエンスストアで働く外国人店員に比べても声が小さい。
そんな様子に、いろいろ興味が湧いてきた。日本に住む外国人の中には、エンジニアなど専門職で来日しながらも、食うに食われず、専門外の分野で働かなければ生活できない人も少なくないという。そんなこともあり、メニューに目を輝かせる奥さんを尻目に、一挙手一投足を目で追った。
巻き物
握り物は、親方のベテラン寿司職人に任せているようだ。こちらがオーダーすると、それを聞いて親方たちに伝えていた。ただ締めに頼んだ「おしんこ巻き」「納豆巻き」はお決まりの台詞の後、ニコッと一瞬微笑み、手慣れた手つきで手早く対応。巻き物はどうも教わっていたようだ。
見た目も味も悪くない。注文してからの時間もそれほど遅くない。巻き物ということもあるが、ベテラン職人が握った寿司とそう変わらない。これから握り物の修行をさらに重ねていくのだろうと、勝手に想像した。この先、しっかり技を受け継いでもらいたいと切に願う。
応援したい。常識が非常識になる時代の寿司のために。
(写真〈上から順に〉:久しぶりの寿司にはしゃぐ奥さん=りす撮影の素材を元にりす作成、大好物のハマチ握り=りす撮影、締めの定番「おしんこ巻き」「納豆巻き」=同)