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深海ロマン2020
ーリュウグウノツカイ
深海にはロマンがある。依然として知られていないことがあふれており、その代表例が深海魚だ。以前に比べ、生きたままの姿を目にする機会が増えた気もするが、それでもなお、生態や繁殖などに関する詳細がよく分かっていない。このほど石川県七尾市ののとじま臨海公園水族館で、体長およそ4mの深海魚「リュウグウノツカイ」が生きている状態で一般公開された。きわめて貴重な事例という。2020年は深海魚から目が離せない。
関連リンク:「深海ロマン2020(動画編)シリーズ・INDEX」、「二つのリュウグウ」
長期飼育かなわず
のとじま臨海公園水族館によると、11日に定置網にかかったリュウグウノツカイを水槽に入れ、展示したそうだ。収容の数時間後までは、その中で泳ぐ姿が見られたという。ただ、12日未明に死亡を確認。「今回も残念ながら長期の飼育はかなわなかった」(のとじま臨海公園水族館)。
リュウグウノツカイについては、19年2月に沖縄美ら島財団総合研究センターが、世界で初めて人工授精と人工ふ化を実現。その後、成魚、稚魚ともに惜しくも全滅したが、これまで分からなかった謎に一歩近づいた感がある。謎解明に向け、この先に期待したい。
こうした中、ツイッターでびっくりする動画を見つけたので紹介したい。@KaribuSuzukiさんのツイートで、リュウグウノツカイの幼魚を採取し、その様子を撮影した動画がアップされていた。成魚ですら、生きたままでお目にかかることが珍しいのに、その子どもとは驚くばかりだ:
テンガイハタとはまた違ったスレンダーな魅力の #リュウグウノツカイ 。この子はなんと全長1.8cmのとても小さな幼魚でした。2018年に出会った7cmと3.5cmの子と比べるとまだヒレの造りがとてもシンプル。コメント欄の比較画像をご覧ください。僕より先に気づく岸壁の母、もとい岸壁採集家の母にも注目🤭 pic.twitter.com/FU3xzRLZB1
— 鈴木香里武(カリブ) (@KaribuSuzuki) January 5, 2020
姿に成魚の面影があるものの、背びれが赤くなかったり体のサイズがまったく小さかったりするなど、成魚とのギャップは大きい。これが徐々に成長し、4mから5mにもなるというのだからあらためて驚きだ。自然の中で大きく育って、また姿を見せてもらいたい。
相次ぐ発見
20年も19年に引き続き、リュウグウノツカイの発見が相次いでいる。福井新聞によると、「19年は7−9月に福井県内で5匹確認したが、それ以前は15年までさかのぼる」(越前松島水族館)という。まとめて見つかる年もあればそうでない年もあるそうだ。
次の動画は19年2月に鳥取県で撮られたリュウグウノツカイの動画。身体の白銀と背びれ真紅のコントラストがとても美しい:
中国と台湾では「鶏冠刀魚」「皇帯魚」と呼ばれているらしい。一方、日本の人魚伝説の多くはリュウグウノツカイに基づくとされており、『古今著聞集』『甲子夜話』『六物新誌』などの文献に登場する人魚は白い肌と赤い髪に描かれ、リュウグウノツカイの特徴と一致する。
この深海魚に関する調査で成果が得られるほど、人魚伝説の解明にも近づきそうなところが実に興味深い。次第によっては一石二鳥だ。
早期の情報公開に期待したい。
(トップ写真:日本の人魚伝説の多くはリュウグウノツカイに基づくらしい=フリー素材を基にりす作成)
関連リンク:
「深海ロマン2020(動画編)」シリーズ:
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