カオスとアブノーマル
ー2021年の初湯(上)
2021年を迎え、慌ただしく10日間が過ぎた。20年暮れ以降、ほぼ予定通りに事が進み、例年になく順調に滑り出していたが、それも新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言で一気に崩れそうだ。順調だったわずかな期間を振り返ると、いろいろ興味深い記憶が蘇る。その一つは、新年早々に浸かりに行った銭湯。「初湯」の様子だ。
関連リンク:「11月病ーりすの独り言」(20年11月29日)、「"銭湯セット"が泣いているーりすの独り言」(20年11月28日)
思わず二度見
初湯は新年になって初めて湯に入ることをいう。新年を迎える21年1月1日0時にちょうど家の風呂で身体を洗っていたので、厳密にいうと、それが初湯になる。ただ敢えて、初湯は21年1月2日と言いたい。この日は、いつも行く銭湯が新年の仕事始めとして「初湯」を実施し、そこで湯にゆっくり浸かってきた。湯を楽しむという意味では、これが初湯にふさわしい。
小市民が初湯をどう捉えようと大勢に影響ない。
2日の銭湯。驚いたことに、いつもに比べて混んでいた。20年末から新型コロナの感染者が急増したにもかかわらず、老若男女、それほど大きくないこの銭湯に押し寄せると思わなかった。新型コロナから身を守ることよりも、初湯を大切にしている人が多いのか、それとも自分は感染しないと高を括っている人が多いのか。それは不明だ。
男湯の更衣室。マスク以外を身に付けていない"すっぽんぽん"の状態で、新年の挨拶を交わす高齢者らを思わず二度見する。実にシュールな光景だ。にこやかな表情を見せ合っているが、ともにマスクで防御している。ただ、それ以外は全裸で無防備。シュールというより、むしろカオスというべきか。この不思議な様子を撮影できないのが口惜しい。
なかなかの風景
女湯もなかなかの風景が見られたらしい。銭湯に連れ立って行った奥さんが教えてくれた。奥さんによると、浴室に大きなマスクを付けた40代くらいの女性がいたそうだ。湯船に入ろうと立ち上がったとき、向こうも立ち上がり、ギョッとしたらしい。浴室にいた客らもチラチラと横目で見るように観察していたとか。それを聞いて吹いた。
そんな姿が、新型コロナとともに生きていく「新常態(ニューノーマル)」の先端なのかもしれない。この先、こうした光景が当たり前になるのだろうか。そして、そんな状況に慣れていくのだろうか。あるいは慣れていかなければならないのか。ただ現時点では、どう見ても、ニューノーマルどころか、「アブノーマル」としか言いようがない。
アブノーマルがノーマルになる時代。遠い先の話ではない。
(写真:湯をゆっくり楽しむという意味では2日に浸かった銭湯が「初湯」と言える=奥さん撮影の画像を基にりす作成)
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