休むことの大切さ
就職する前、社会人というのは残業して当たり前・休みも無くて当たり前なんだろうと思っていた。
どうしてそう思ったのか明確な理由はないが、恐らく、学生時代にいくつかやったバイト先の社員の人たちが、皆遅くまで働いている姿を見ていたからかもしれない。
また、両親を見ていても、普段の日に有休を使うことは記憶に無く
「夜遅くなるから、ご飯はチンして食べてね!」
なんてことも、珍しくなかった。
しかし、月日が流れ、社会人として何年目かのある日、管理職からこんなことを言われた。
「休まないの?」
その一言は、青天の霹靂だった。
今まで「あまり休みは取らないでね」と言われたことはあっても休むことを奨められたことは無かったからだ。
目をパチクリさせて「あー」とも「うー」とも、はっきりした答えを出せない私に、その管理職はニコリとして言った。
「休むことも、仕事の内だよ。一ヶ月に1回は、休むようにしてごらん」
それは、天からの啓示のようでもあり、同時に私を悩ませた。
休めといきなり言われても、風邪でも無いし、のっぴきならない用事があるわけでもない。
それを後日、すぐ上の上司にそのまま相談してみた。
すると、あっけらかんと答えが返ってきた。
「別に、何にもせずにゆっくりすれば良いんだよ。みんな月一で休んでるし、私もそう。もちろん、子どもの用事の時もあるけど、休みのおかげでネイルサロン行けたり銀行行けたりするし。気晴らしになるよ」
そんな訳で、職場の後押しにより、人生初の「予定のない有休」を取ることになった。
何の予定もないまま家に帰り、夕飯を食べ、いつもどおりの時間に寝た。
そして、翌朝。スマホの目覚ましアラームと共に起きた。
いつもと変わらぬ寝ぼけ眼でストップボタンを押し、ボーッとした頭で思考する。
(ちがう、今日は休みだ。有休取ったから)
そのままスマホを定位置に戻し、二度寝した。
いつもより、ずっと遅い時間にゆっくりとベッドを這い出して、顔も洗わずにテレビを見ながら朝ごはんを食べた。
その後は、何も予定してなかったのでやることがない。
やることが無いので、やりかけのゲームをやり、それが飽きたら、昔ハマってた漫画の一気読みをした。
それにも飽きた頃にはもう夕方になっていて、昔のサスペンスドラマの再放送を惰性で見た。
あっという間に、何もしない休日が終わった。
翌朝。
出勤してみると、いつもより頭がスッキリとしていることに気が付いた。
(私は、一昨日まで何をやっていたんだっけ?)
なんてトボけたことを思ったりしたが、それは頭の中がリフレッシュして程良くリセットされた証拠で、頭の中で仕事の整理整頓ができたと、後になってから思う。
今、あの時のことを振り返ってみると、私は毎日毎日仕事に追われ、必死の形相だったのかもしれない。
管理職は、そんな私を見かねて声を掛けてくれたのかもしれないと。
何も予定のない有休を過ごしてから、職場の人たちが、とても器用に有休を取得していて、それのおかげで職場の空気が和やかになっていて、仕事も円滑に回るような仕組みになっていることに気が付いた。
誰かが休むのは、お互い様。
そして、自分が休んでも仕事が止まらないように、1人では無く、みんなに共有すること。
いない日に気になることがあれば、事前に引き継ぎをしておくこと。
それから「休暇」という縛りがあることで、仕事の調整も上手くいくことに気が付けた。
今は、ワークライフバランスという言葉もあり、休みをとって仕事だけじゃなく私生活も充実させることが、推奨されるようになった。
休むことは、決してサボることではない。
自分自身のマネージメントをして、仕事を含めた自分の人生をより豊かにするための大切なモノなのだ。
管理職に言われたとおり、私は今でも「1ヶ月に一度は、有休を取る!」を実践している。
予定があっても、無くても。
そうすることで、仕事にも人間関係にも、良い影響がある。
仕事の能率も上がり、スキルアップのためのスクールに通うこともできた。
それも、脳に休みの時間を入れたことで、頭の中を整理してゆっくり考える時間ができたからだと思う。
最近では「そうだ、遊園地に行こう!」とか「日帰り温泉に行こう!」とか、有休の過ごし方も板に付いてきた。
もちろん、何もせずにダラーッとする休日も好きだ。
私はこれからも、自分と仕事のために、充実した有休ライフを送りたい。
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