令和に思う。スクリーンの向こうのティーンエイジャー事情。『ブックスマート』(2020.9.8.)
公開の待ちきれなかった話題作『ブックスマート』を、ヒューマントラストシネマ有楽町にて、早速鑑賞。自身も俳優としてのキャリアを持つ、オリヴィア・ワイルド監督による長編ビュー作だ。
前評判の良さから期待しかない作品だったけれど、想像にたがわず、フルスロットル&なのにどこかゆるい、オリジナルな作品世界を堪能できた。
平日の昼間だったけれど、見終わった後は、これは週末の夜にアルコール片手ならもっともっと、戸惑いなく笑いに身を任せられただろうな、と軽く後悔。
モリー&エイミー、主役2人のチームワークとキュートさはさることながら、脇を固めるフレッシュな面々が、全てのシーンにおいてキュン、としてしまうティーンの青春模様を好演している。
無理してトガろうともしていない女の子どうしの、赤裸々な下ネタも言うなれば、令和のスタンダード。そこに、スクールカーストや親世代とのジェネレーションギャップなど、普遍的な10代の悩みを嫌味なく盛り込んでいる。
展開に飽きさせない疾走感、パンチとセンスあるせりふの応酬もあり、終始、楽しめる快作でありながら、ある意味生きにくいこの時代に、ティーンの本音を爆発させる作品作りは、きっと想像をこえた苦労や難しさがあったのじゃないか、と感じてしまった。
ロマンティックでファンタジーな女の子としての部分と、厳しい現実との板挟みはエイミーのキャラクターに濃く投影されている。
モリーという、かなりぶれない自分を持ったキャラ(それゆえに「モリーは違うから」「モリーだから」とちょっと治外法権的な自由を与えられている)に対比させることで、必死に自分たちの物語を、現実につなぎとめようとするエミー。
好きなクラスメイトや、後半いい感じになる女の子への彼女のぎこちない接し方は、恋愛初心者のうぶな可愛さ、というほほえましさを超え、ポリティカリー・コレクトとSNSというバーチャルな距離により「ひとづきあい」の距離を確実に掴みにくくなっている時代の空気を反映しているように思うのは、あながち深読みでもないかもしれない。
私自身も、そのまた上の世代の人も、誰もが通ってきた、10代のあのころ。偽りなく、ほかのどんな時間よりも、色濃くそして痛く、胸に刻まれている特別な時間だ。
10代の女の子ふたりにしかわからないような話を終始して、笑い転げ、泣き、ケンカし、ぶつかりあうこの映画はだからこそ、もしかしたら究極言葉なんかわからなくても、万人に響く愛とメッセージがあるように感じた。
もう少し若かったら、もっと楽しめたのに!!あふれるエネルギーとパワーには、ちょっと疲れちゃったな~と感じてしまったのが…悔しい。
いつかまた、まったりと自宅のソファでアルコール片手に、気の置けない仲間たちと、リベンジしたいな。誰の心にもある青春の苦さに、たっぷりの『自己肯定感』と、輝く未来への希望の魔法をかけてくれて、ありがとう。
モリー&エイミーの前へと進む力に、いっぱいの勇気をもらえた時間でした。
*この記事は2020年9月当時の鑑賞記録の再掲です*
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