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文学者 永威優一の矜持(覚書き)

あらすじ
永威優一は弁護士として働きながら作家を目指している。法律事務所では有能ながら性格がきつすぎるので厄介者として煙たがられている。職場での憂さは帰宅後、小説を書くことで晴らしている。ある晩、同窓会の知らせが届き、参加すると放浪の天才画家として有名になっている青柳絵馬と再会する。小学生の頃出会い、絵馬の才能に驚異を感じ彼女を執拗に嫌がらせした過去を永威は引きずっており、小説でさらに上にいけないのは、その過去が原因だと思っている。過去と折り合いをつけて完璧な自分になるために、プライドに賭けて二度と絵馬に加害しないと決め、悪質なストーカーの被害にあっていた絵馬を優一は自宅に住まわせる。喧嘩し、ぶつかり合いながらも二人は理解し、時には理解し合えずに日々を過ごしていき、絵馬の毒親、ノーベル賞を目指す優一の現実との乖離を乗り越えて、優一は思う。「子供の頃、絵馬を傷つけたことをずっと後悔していた。悔やんでいた。でもそうじゃないんだ。傷ついたのは俺の方だった。一生抜けないほど深く刺された……自分には何もないってナイフ。ずっと思い出すんだ、死ぬまで毎日。でもいいんだそれが。それがいい」そこへ絵馬が笑顔で走ってくる。ノーベル賞にノミネートされ、来月はストックホルムだと絵馬は笑顔で去っていく。苦笑いで見送る優一は次の日、少し広くなった部屋で原稿の続きを書き続ける。