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[連ツイまとめ]今の私が思うジャズと"ジャズ風"のジャズ
調子に乗って連続ツイートいっぱいしちゃったので、
同じ内容をまとめなおします。
ノート作成の経緯
パンパンの実の能力者、全身クリームパン人間の筆者は
ピアノが上手くないのに、セッションに出没します。
なんなら何故か楽器上手人(うまんちゅ)だらけの
サークル(imasjazz)で運営に携わっており、
何だかすごいことになっている。
筆者が通うimasjazzのセッションでは、
少し風変りなジャズセッションが日々行われているが、
セッション後の打ち上げでこんな質問をいただいた。
「どうなってたらジャズって言っていいのかわからない」
「ジャズ風の曲っていっぱいあって、
好きな曲はたくさんあるんだけどどこがジャズなのか、
なんとなくでしかわからなくて気にかかる」
(筆者意訳)
これまでに似たような質問をたくさん受けており、
みなさん大変まじめで魅力のある方ばかりでなので、
微力ながら力になれればと思い、
自分なりに説明を試みたのがこれから紹介するツイート群である。
https://twitter.com/poko30303p/status/1748690244189528230
これが連続ツイートの最初の投稿である。
このノートは上記連続ツイートの内容をそのまま
コピペして整理+修正しただけのものです。
説明の大きな流れとしては、
①ジャズというジャンルは歴史があり広大な範囲をもつ
≒画一的な説明が困難である
②ジャズ風の曲がどうしてジャズ”風”なのか
ジャズ好きなオタクはなぜジャズ風の曲に厳しいのか
③定義は難しいが、それでもジャズを定義するなら
どうやって記述すべきか
という3点の内容を、ジャズ史の内容を踏まえながら
解説します。
ジャズの定義って何?
ジャズ風のジャズってどれ?
ジャズというジャンルの範囲について
そもそも、ジャズっていうジャンルは、
おしゃれや難しい、というイメージが先行してしまい、
ジャズ風の曲を耳にすることはあっても、
ジャズ自体を聞くことはそんなに多くないはずです。
ただ、ジャズをひとつの音楽のジャンルと捉えると、
それは独立したジャンルになるわけですから
POPSやROCKと同じだけの広さ
(≒曲のバリエーションや曲数)があると考えるのが
自然な考えでしょう。
POPSのを例に考えてみます。
POPSというジャンルの中にはK-POPやUK、US系など、色々な国のポップが含まれます。
J-POPと言っても、バンプやaiko 、山下達郎もあれば、
ハンバートハンバートやミスチル、adoや中島美嘉なども含まれます。J-POPだけでもかなり広いです。
POPS全体まで考えればジャンルはもっと広いはずです。
そして、これはジャズも一緒です。
ジャズも同じくらいの広さがあります。
なので、ジャズが好きな人に「ジャズの定義」を
尋ねてみても、大体の場合は答えが返ってきません。
その人が真面目であればあるほど答えに詰まるでしょう。
J-POPの定義が答えにくいとの一緒です。
ジャズの広さを簡単に体感してみてほしいので、
2曲ほど、ジャズとされている曲を紹介します。
僕はピアニストなので、ピアノジャズが好きです。安直。
そこで僕の好きな曲のうち
1)ピアノジャズで
2)現在生きている人が演奏している
3)比較的最近の曲
を紹介します。
①Sebastian Rochford, Kit Downes - Silver Light
ピアノの人がkid downesさんです。難しくて何やってるか全然わからないんだけどなんか格好いい~~~~
②Tingval Trio -Spöksteg
こっちは疾走感があって、わかりやすい格好良さ。
好きだ…。
紹介した2曲は、きっと思ってたのと違うと思いますが、
どちらも歴としたジャズとして認識されてます。
ピアノジャズだけでこの振り幅です。
編成が変わればもっと広くなります。
思ったよりジャズって範囲が広いんだな、
おしゃれな音楽だけじゃないんだ
と思ってもらえればOKです。
では本題です。
ジャズ”風”のジャズ部分とはどんなジャズか?
結論から言えば1920~1960年代に流行ったジャズです。
それぞれスウィングジャズ(~1940)とモダンジャズ(~1960)と呼ばれます。
スウィングジャズはBGM特化のジャズです。
ダンスミュージックとして生まれた音楽なので、
聴いてる人が楽しく踊るために生まれました。
これはみんな聞いたことあるんじゃないかなと思います。
音楽的な特徴ですが、
踊りやすくするために、4ビートと呼ばれるリズムを
取り入れています。
最近の曲で言えば、ワンダイレクション(最近?)などに代表されるEDMなども同じ4ビートに分類されます。
踊りやすそうでいいですね。
次に、楽しさを演出するために、スウィングと呼ばれる
独特なリズムを取り入れました。
タメや緩急があって、ノリよく楽し気に聞こえます。
ただ、このスウィングというのは奥深い概念です。
例えば、"深さ”という観念があります。
この深さを変えることで同じスウィングでも
ネットリ~さっぱりまで様々なニュアンスがでます。
さらに、奏者によってもニュアンスは異なってくるため、
次第に聴衆側も好みが生まれてきます。
なんの曲でも好きなニュアンスで踊りたい人もいますし、
同じ曲を色々なニュアンスでやってほしい人、
飽きずに同じ曲で何回も踊りたい人、などです。
こういった要求に応えるため、
ジャズはソロパートを取り入れるようになりました。
ソロがあれば、飽きにくいし、踊れるし、
聞き応えも増えます。
これで、踊れて、楽しくて、聴きごたあるジャズが
一度完成します。そして完成したので廃れます(?!)
世の中には流行あります。
タピオカ、なんのかんのでおいしいですし、
お店によってミルクティーの味も違うんですけど、
どんなに頑張ってもタピオカミルクティーです。
人間なので必ず飽きます。
必ず飽きに適応するような打開策が必要になります。
そこで、過去のジャズミュージシャン達は
シンプルに解決を図ります。得意分野の強化です。
もっと踊れるようにするか、
もっと聞きごたえを増やすかです。
踊りの強化
⇒4ビート以外の踊れるリズムを取り入れる
聴きごたえの強化
⇒ソロが弾きやすい楽曲の採用・作曲
即興演奏によるソロの高度化
(スウィングに限らない追求)
特に、聴きごたえの強化に舵を切ったジャズは
めちゃくちゃ人気が出ました。
特化させすぎて、踊らせることをもはや捨てて、
説教芸術性(現地リアタイでしか得られない楽しさ)
複雑性(難解かつ複雑で美しいハーモニー)
高度性(高い技術に成り立つ演奏)
などを獲得していきます。
こうして生まれたのがビバップ(Be-bop)ジャズです。
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このビバップは弾き手にも、面白みのある音楽でした。
即興なので自分の腕前のみでいい演奏ができますし、
無限に追求し続けられます。
すると、才能あるミュージシャンはビバップに集まり、
ビバップの即興性や高度性が猛烈に発展します。
そして生まれたのがモダンジャズです。
いわゆるジャズセッションで演奏される
”ジャズスタンダード”と呼ばれる曲たちも、
この時代のものがほとんどです。
モダンジャズの時代を経て、最終的には、
ミュージシャンのアーティスト性が
尊重されるようになります。
即興性で発展したモダンジャズなのにあえて即興を捨てて
格好良さを追求したり、複雑性を追求したり、
時にはコードも捨ててパラダイムシフトを
起こそうとする動きが起きました。
こうした変革が今もジャズでは起き続けており、
冒頭のジャズに繋がっていきます。
ということで、大分遠回りしましたが直接回答です。
ジャズ風のジャズとは、
スウィングジャズ~モダンジャズを指します。
そして、これらジャズの特徴のうち、
POPへ簡単に輸入できる範囲で特徴を真似たものが
ジャズ風な音楽と認識されています。
ジャズ風のジャズって? の回答
・スウィングジャズ~モダンジャズと呼ばれる
サブジャンルの集合体
(数え方によるけど3~4ジャンルくらいの集合体)
・時代で言えば1920~1960年代くらいまでのジャズ
Appx. 私が思うモダンジャズ期までの音楽的特徴
・4ビートやファンク、アフロ、ラテンなどの
様々なビート
・ビートやハーモニに合わせたフレージング、
アーティキュレーション
(スウィング、強拍弱拍の強調、レイドバック、
弱いシンコペーション)
・I△7→I△7(#11)やivm7→ivm6(9)などに見られる
特徴的ななテンション
・IV#m7(b5)などの独特な代理和音
・iibm7-Vb7などモーダルインターチェンジの頻出
・ドミナントモーションやモード技法を活かした作編曲
・オルタードなどの発展的テンション
ジャズ風な曲とそれにはしゃぐジャズオタク
他方で、ジャズを輸入されるPOPS側に目を向けます。
POPSの演奏や作曲では、歌メロや音色の選定、
曲の展開づけと作法、細かい音域の制御や
全体的な音域の管理など、
様々なことを制約下で考える必要があります。
POPSもジャズも「何をやってもいい音楽」ですが、
必要とされる専門技術や、かけるべき制限が異なります。POPとジャズを両方を習得するのはかなり困難です。
なので、POPとジャズを混ぜるのはもっと困難です。
混ぜようとしても現実的には、
ジャズの特徴を”正確性問わずそれっぽくなるように”
取り入れてしまうパターンがほとんどです
こうして強引にそれらしい特徴を取り入れると、
・そんな格好よく聞こえないんだけど、
スウィングしてる風のメロディ
・スウィングしたいのに出来なくて、
盆踊りと化してしまう楽曲
・無意味に難しいだけの不要なテンションコード
みたいなものが生まれがちです。
ジャズのオタクは、こういった曲を聴いた時に
少しだけしょんぼりします。
理想的には”無理せずできる範囲で、
正確に”ジャズの特徴を取り入れるべきですよね。
そして、無理してジャズ風にするよりも、
あなたの得意なことをやって良い曲を書いてくれ、
と思ってる人も多いんじゃないかと思います。
ジャズ風楽曲について思うことの雑感まとめ、回答
・POPSは、それはそれで1つの専門分野であり
らしさを出すのに厳しい制約が多い
→素直に考えればジャズとのかみ合わせは悪い
・無理してジャズの特徴を取り入れようとすると、
モニョニョしがち
・ジャズ風にしてくれる場合は、
特徴の一部だけでいいから、無理せず、正確に
ジャズの特徴を取り入れてくれると私は嬉しい
ジャズ風の”ジャズ”に当てはまらない、残りのジャズは?
当初の質問は、ジャズとは?ということなので、
ジャズ風の曲に使われるジャズ”以外”の
ジャズについて説明します。
モダンジャズが~1960年代くらいなので、
それ以降の時代のジャズ、ということです。
前述の通り、ジャズはもともとダンスホール向けの
音楽だったのに、追及の結果ダンス要素を排除するような不思議なジャンルです。
実際に、ジャズはその後も目的に向かって手段を選ばず
改造・改変を繰り返します。
モダンジャズ以降、つまり、1960年代以降は
ポップミュージックもどんどん台頭してきます。
娯楽音楽があふれるようになってきます。
すると、複雑なんだけど大衆性も欲しい、という
揺り戻しが起きます。
結果、何をしたかと言えば、
ジャズはPOPSの手法を輸入にするようになります。
さっきまで、ジャズ風のPOPSについてですが、
1960年代以降のジャズはPOPS風のジャズです。
目的が達成されればなんでも良いので、
片っ端から試した結果、POPSを輸入するに至ります。
例えば
・音程の曖昧な音や、新しい楽器を使いたい
→電子楽器の導入
・ロックみたいな疾走感が欲しい
→ロックと混ぜる
・もっと躍らせたい
→エレクトロを目指す/混ぜる
・もっと格好よくしたい
→ロックやHIPHOPと混ぜる
・もっと複雑にしたい、知らないハーモニーを表現したい
→エスニック音楽(民謡や伝統音楽)、
クラシックを目指す/混ぜる
…といった感じです。
こんなことばっかりするジャンルなので、
「モダンジャズ期までの音楽的特徴」は一切残りません。
スウィングもしないし、テンションも使わないです。
目的にそぐわないものは消えてしまいます。
そして音楽的特徴は残らない、とか言ったばかりですが、
設定される目的が
・ジャズの懐メロを格好よく取り入れたい
・先祖の技術を復元したい
・守破離して、正統派ジャズの進む先を作りたい
などの場合は後の時代のジャズでもジャズ風のジャズ…
みたいな特徴があらわれたりします。
めちゃくちゃです。
ここから言えることは、
「スウィングしたらジャズ、とは必ずしも言い切れない」
ということです。
じゃあ、ジャズの本当の特徴って何?となってしまうので
蛇足ながら自分の回答を付け足します。
ジャズとは、
「目的に応じて、テンプレートを活用しながら、
音楽を改造・拡張・融合させていく」ジャンルです。
これが今の私の精一杯です。
ジャズの定義ってなに?の回答
・音楽的特徴では簡単にくくるのは難しい
(各人の進みたい方向に好き勝手に進んでいるため)
・マインド面に絞って答えるのであれば
「目的に応じて、テンプレートを活用しながら、
音楽を改造・拡張・融合させていく」ジャンル
imasjazzセッション事務局代表として拡大解釈したメッセージ
ジャズのマインドは、改造、拡張、改変という話でした。
つまり、”0を1にする”よりも”1を2にする”行為に近いイメージです。
1を2….
一次を二次に…?
なんかオタクが得意そうだね?
ということで、二次創作にするのに必要なノウハウも
ジャズに通用するはずです。
つまりジャズで大事なことは
・ノリでやってみる
・深く考えない
・とにかく新刊を出す
です。分かりやすいね?
メッセージのまとめ
・うまくスウィングできなくても、演奏すればジャズ
・アドリブわからなくてもジャズ
・オタクの妄想を詰め込んだ紙束とか電子データもジャズ
・空想に浪費していたあの日の在り方もジャズ
・酒を飲むのもジャズ、タバコ吸うのもジャズ
深夜食べる甘いものやラーメンもジャズ
最後にimasjazzでは、
ジャズを始めてみたいプロデューサーさん、
アレンジされた楽曲を聞いてみたいプロデューサーさん、
アジア亜大陸料理への意識が高いプロデューサーさんの
参加をお待ちしております。
質問がある場合
この記事のコメント、ないし筆者のtwitterでリプライかDMください。
https://twitter.com/poko30303p
細かいところ省いてるので不明点あれば遠慮なくどうぞ!
imasjazz参加のご連絡もお受けいたします。
またのお越しをお待ちしております。