本土産と少し違って見える沖縄産樹木
幼少からの憧れの地・沖縄に移住して4年が経った。海や暖かい気候が好きで移住しただけではない。沖縄の全樹木を掲載した図鑑を作るという大きな目的のためにここに来て、2016年11月に『琉球の樹木』(大川智史氏と共著/文一総合出版)という形で達成できた。
沖縄へ訪れた人なら分かるはずだが、沖縄の植物は本土のそれと比べて、何かが違うものが多い。もちろん、亜熱帯気候なのでざっと半数余りの樹種が入れ替わるのだが、それだけの問題ではない。一般に本土と「同一」とされるヤマグワやエゴノキ、クチナシ、ネズミモチなどでさえ、どこか雰囲気が異なるのだ。このような植物は多数あり、これまでの研究で変種などに区分されたものもあるが、追究されぬまま放置されているものも多い。
そんな中で2017年6月、神戸大学の末次健司氏らによって「沖縄のサネカズラは別種のリュウキュウサネカズラでした」というニュースが流れた。実はこのサネカズラも、私が「本土産と違う」と思っていた樹木の一つだったので、強く納得したものだ。末次氏の報告では花の色や形態の違いが紹介されているが、葉の形にも違いがあり、リュウキュウサネカズラは葉がやや薄くてやや幅広く、全縁の葉が多いことが本土のサネカズラとの違いである。
そこで本稿では、本土産個体と少し違って見える沖縄産の樹木を列挙したいと思う。
(※この文章は、日本植物友の会会誌『植物の友』2017年12月号に掲載した文章を一部改変・加筆したものです。)
<登場樹木>
ヤマグワ(シマグワ Morus australis)
エゴノキ(コウトウエゴノキ Styrax japonica var. kotoensis)
ネズミモチ(Ligustrum japonicum)
クチナシ(Gardenia jasminoides)
シャリンバイ(ホソバシャリンバイ Rhaphiolepis indica var. liukiuensis)
トベラ(オキナワトベラ Pittosporum boninense var. lutchuense)
ヤブツバキ(ホウザンツバキ Camellia japonica var. hozanensis)
ヒサカキ(Eurya japonica)
アカメガシワ(Mallotus japonicus)
アオツヅラフジ(Cocculus trilobus)
センニンソウ(Clematis terniflora)
チトセカズラ(リュウキュウチトセカズラ Gardneria liukiuensis)
クスノキ(Cinnamomum camphora)
11月末に結実したシマグワ(Morus australis)
林縁や住宅街などあちこちに生えている沖縄産のクワは、本土産のヤマグワと区別して、別種のシマグワに区別する見解がある。別種かはともかく、沖縄産個体は葉の光沢が強く、裂片の先が細長く尖り、開花結実は年3〜4回以上(一説には7回も)が普通で、冬も葉を落とさない個体が多いなど、本土産と異なる点が多い。果実は甘味と塩味が強く、本土産より美味しいので、沖縄に来た際はぜひ食べてほしい。ただし、本土の暖地海岸に生える個体(品種ハマグワなど)も似た傾向があるので、区別可能かは微妙だ。私は少なくとも沖縄での呼称を尊重して「シマグワ」と呼んでいる。
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