首里城再建の木材 イヌマキとオキナワウラジロガシ
衝撃的な朝だった。テレビに燃えさかる首里城が映り、夢か映画でも見ているようだった。あれから3年、首里城再建の準備が着々と進み、今年はいよいよ着工予定(冒頭写真は2022年1月の首里城再建現場)。議論を呼んでいるのが、正殿に使う木材だ。
何度も再建を繰り返してきた首里城は、過去にイヌマキ(沖縄名チャーギ)、オキナワウラジロガシ、タイワンヒノキなどの木材が使われてきた。中でもイヌマキは、白アリに強いので、沖縄では一級品の建材とされ、古民家でも柱などの定番だ。
ところが、沖縄の山々を歩き回ると、建材に使える大きなイヌマキはほとんど見当たらないことに気づく。内地では幹の直径30㎝以上、樹高15mに達するイヌマキの大木をたまに見るが、沖縄では幹径15㎝以下、樹高10m弱の木を少数見かけるのみ。大木は伐り尽くされたのだろう。
一方のオキナワウラジロガシは、木材が硬く丈夫なカシの仲間で、山地の谷沿いに大木を見かける。ただ、幹が曲がりやすいので、建材に適した木は多くない。首里城再建にあたっては、伐採反対の意見も各方面からあがり、石垣島での伐採は中止になった(これには琉球王朝が石垣島を支配した歴史的背景も関係する)。
結局、正殿の木材の大半は内地に植林されたヒノキを使い、チャーギは九州、オキナワウラジロガシは国頭村から4本のみ伐採(うち2本は予備)する予定という。
琉球の象徴が首里城なら、琉球の木で作るのが理想。貴重な大木を活用するなら、絶好機とも私は思う。もちろん、どの木でも伐採していいわけはないが、人は自然の恩恵を受けて生きているし、沖縄の大木を保護しても、遠く離れた土地の大木が伐られることに違いはない。沖縄の木が使えないなら、使えるようになるまで再建しなくてよいとも思う。
一番の疑問は、なぜこうした木が、これまで沖縄で十分に植林されてこなかったのか? ということ。同じく貴重な有用樹で、大木が伐採し尽くされたリュウキュウコクタン(沖縄名クロキ)やヤエヤマシタンにも当てはまる。沖縄には、本土と違ってスギ・ヒノキ林のようなまとまった人工林がほとんどない一方で、リゾートホテルの建設や市街地の拡大は、止めどなく続いている。持続&自立可能な沖縄のために、ビルの林立より有用樹の林立を切に願う。
(2022年3月31日『週刊レキオ』掲載記事より一部改変・加筆)
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