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【読書記録3】如月かずさ『給食アンサンブル』を読んでみたら、登場人物がいい子すぎて心が震えた話

普段読む本の入手先はもっぱら地元の公立図書館!という私が、久しぶりに「これは購入して手元に置いておきたい!」と心から思える本に出合いました。

それがこちら!↓

続編も出ているようなので、近日中に入手のうえ、こちらも読んでみようと思います!

私は公立の小中学校の出身なので、小中あわせて9年間、給食を食べて育ちました。

振り返ってみると、小中学校時代の給食の思い出は枚挙にいとまがないほどあって、当時のことを思い返すだけで、心の中が甘酸っぱく切ない気持ちでいっぱいになります。

小中学生の頃の私はメモ魔だったので、たび重なる引っ越しを経て30歳になった現在も、そのいくつかが手元に残っています。

この本を読み、あまりに自分の学生時代が懐かしくなったので手元のメモを読み返してみましたが、よくぞ記録を残しておいてくれた!と、当時の自分に声をかけてあげたくなりました笑

もう二度と戻ることはできない過去も、こうして活字にして残しておくと、後々かけがえのない思い出になったり、つらい時に自分を支えてくれる心の拠り所になったりしますよね。

話が脱線してしまいましたが、以下にこの本のあらすじをまとめておきます。

いつもどおりの、けれど誰かにとっては特別な給食——

転校先の学校に馴染むのを拒む美貴、
子どもっぽいのがコンプレックスの桃、
親友の姉に恋をする満、悩める人気者の雅人、
孤独な優等生の清野、姉御肌で給食が大好きな梢。
六人の中学生たちの揺れる心が、給食をきっかけに変わっていく。
やさしく胸に響くアンサンブルストーリー。

『給食アンサンブル』見返しより引用

まずは、ざっくりとひとことで感想を述べますね…!

登場人物全員、ほんっっっとうに中学生らしくていい子たち!!

もう、これに尽きます。
こんないい子たちがそろっているなんて、この中学校はなんてステキな学校なんだ!
私の娘たちもぜひ、この学校に通わせたいです!!!

………と、まあ冗談はおいておいて笑

どこがどんなふうにいい子なのかというと、もちろん6人の中学生それぞれにステキなところがたくさんあるわけですが、全員に共通しているステキポイントがあるのです。

それは、

ひとりひとりが自分なりに考えて、しっかり自分を見つめなおしたり、まわりの人のアドバイスを受け入れたりしながら、最終的には自分なりのやり方を見出し、相手のことを思いやって行動できること!

それぞれに悩みや葛藤を抱えながらも、最終的にそのような行動がとれる中学1年生の彼らに、私は尊敬の念さえおぼえました。

そして同時に、そんな中学生たちの等身大の姿を生き生きと綴った如月かずささんという作家さんにも、敬服の念を抱きました。

如月かずささんのご経歴も、本書の奥付から抜粋させていただきます。

如月かずさ(きさらぎ・かずさ)
1983年群馬県生まれ。児童文学作家。『サナギの見る夢』で講談社児童文学新人賞佳作、『ミステリアス・セブンス─封印の七不思議』(岩崎書店)でジュニア冒険小説大賞、『カエルの歌姫』(講談社)で日本児童文学者協会新人賞を受賞。作品に、『給食アンサンブル』(光村図書)、『スペシャルQトなぼくら』(講談社)、「パペット探偵団事件ファイル」シリーズ、「怪盗王子チューリッパ!」シリーズ(以上、偕成社)、「なのだのノダちゃん」シリーズ(小峰書店)などがある。


読み進める中で特に印象的だったのは、①作品の作り込みの細かさと、登場人物に対する作者の愛情が伝わってくるような、②ぬくもりを感じる丁寧な描写でした。

①の作品の作り込みの細かさについていえば、無駄な情報をいたずらに増やして細かくしているわけではなく、その後の話につなげるための伏線としてひとつひとつがきちんと機能していることに驚かされました。

具体的には、登場人物の背景や性格、台詞のひとつひとつが別の話につながる伏線になっていて、読みながら思わず、「ああ、そういうことだったのか!」と唸ってしまうほど、描写に必然性を感じました。

また、作品の軸としてえらばれた給食のメニューも絶妙だと思いました。
すべてとは言わないまでも、公立の学校に通い給食で育った人であれば、ひとつくらいは(ああ!…懐かしい!)と思えるメニューがあるはずです。

以下がこの作品の中で取り上げられているメニューです。

  • 七夕ゼリー

  • マーボー豆腐

  • 黒糖パン

  • ABCスープ

  • ミルメーク

  • 卒業メニュー

②のぬくもりを感じる丁寧な描写についていえば、ひとりひとりの人物について、かならず別の同級生から見た視点を交えて多面的に描き出し、なおかつそれぞれのエピソードの終わりにはすべて、希望の光が差すような構成を取っています。

一から十まですべてを説明するのではなく、読者がそれぞれに「しあわせなその後」を思い描けるような想像の余地を残してくれる構成のおかげで、じんわりと温かい読後感がありました。

2025年はまだ始まったばかりですが、この作品はまちがいなく今年読んだ本の中でベスト3に入る作品になると確信しています。

続編を読み終えたら、またこちらに記録を残そうと思います。


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寺内温子 / 育休中のママ編集者
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