(連載小説)気がつけば女子高生~わたしの学園日記㉜ 浴衣女子になりたい男の娘・前編~
新学年になって2カ月少々が経った。2年生になってからは勉強の方もより専門的になってきたのとレベルアップも求められるのでなかなか大変だ。
日本文化の授業では今年は最終的に振袖の着装ができるようになる事が課題で、これができないと3年生に進級できないと云う結構ハードルが高いものがあるのでどうしても頑張らねばならない。
またわたしは2年生では国際交流コースを選んだので第2外国語の授業もはじまった。授業は国際交流コースの2クラスを3つに分けてフランス語、スペイン語、中国語の中からどれか一つ選んで受けるのだけど、同じ班の中でも千尋ちゃんとあゆみちゃんはフランス語、梨子ちゃんと林ちゃんは元々中国語は母国語またはそこそこ理解できるレベルなのでそれ以外を勉強したいと云う事でスペイン語、そして弥生ちゃんはお家の土産物屋さんに中華圏からのお客さんも増えたのでお店のお手伝いに役立ちそうと云う事で中国語を選んでいた。
ちなみにわたしはと言えばどれにしようかと考えた末に林ちゃんが台湾の事をあれこれ面白そうに言うのもあって興味を覚えていたので中国語を選んだ。
その林ちゃんだけど相変わらず毎日面白い事ばかり言ってみんなを笑わせてくれている。なんでも「東西」と書くと日本語では東西南北の「方角」の事なんだけど中国語では「品物」の事らしく、日本に初めて来た時に”地下鉄東西線”と云う電車を見て「日本では”荷物運び専門の電車”がアルノカ―。だから早く正確に荷物が届クンダナー。」と思ったらしい。
「あははは!。だけど電車見たら載せてるのは荷物じゃなくてお客さんだったでしょ?。」「そうなんだヨー。林ちゃんその頃日本初めてで日本語今みたいによく分かってなかったらネ、そこで気が付いたンダヨ!。」とか。いやはやなんとも・・・・・。
その林ちゃんも留学生でも部活動は希望するなら他の一般の生徒同様に好きな部を選んで入る事もできるので千尋ちゃんといっしょのバトミントン部に入部した。
もっとも林ちゃんは台湾でもバトミントンをやっていたらしく、中学高校ともバトミントン部に入っていたそう。元々台湾自体バトミントンはわりかし盛んで林ちゃんは日本にも”マイラケット”を持参してきていた。
千尋ちゃんが言うのには林ちゃんは4月の放課後は毎日着付けと所作・マナーと日本語の補習があったので5月の連休明けから練習に参加しているのだけどその割にはバトミントンの腕前はまずまずとの事。ただそれ以上にここでもいつものように面白い事を言ったり面白い事ばかりしているのでたちまち部内の人気者になっているようだ。
またあゆみちゃんは2年生になっても成績上位をキープして特別進学コースの子たちと遜色ない成績を取っているし、相変わらずの褒め上手なのでクラスが変わっても色んな子の話を聞いてあげては相談に乗ってあげているので人気者だし、なぎなた部ではさすがに短めのおかっぱだと1年生みたいでなんなので髪型もお姉さんらしく少しだけ長めのボブにして2年生になってもより頑張ってお稽古に励んでいた。
さて、わたしはと言うと2年生になってクラスで「行事委員」と云う役を拝命した。
伝統的にこの優和学園では大きな学校行事は2年生が中心で仕切る事になっている。3年生は受験があるし、1年生はまだ入学したばかりと云う事で2年生が中心でやると云う事なのだが、今まではそれぞれの行事毎に実行委員会を作ったり関係する委員会や部を中心に進めてきたのを今年から大きな行事が1つ増えたので年間を通して一貫して行事を取り仕切る独立した部署があってもいいのではと云う事でこの行事委員を選定する事になったのだった。
話しを少し戻すと4月のクラス替えのすぐ直後に色んな委員やクラスでの役割分担を決めるホームルームが開かれ、そこでどこの学校やクラスでもあるように各委員を決めていて、その時に担任の栗田先生よりこの行事委員と云うのが新しく設けられたと云う話を聞かされ、当クラスからも誰か1名選出と云う話で議事は進行していた。
「この行事委員と云うのは1年間を通して皆さんの学校行事を中心になって進めてもらう大変やりがいのある仕事で、できれば今年から新しく大きな行事も増える事ですしアイデアに富んだ人がいいと先生は思ってます。誰か立候補する人はいませんか?。」と栗田先生は言う。
しかし誰も手をあげないので先生が「それではこのクラスで適任だと思う生徒に心当たりがあれば誰か推薦してもらってもいいですよ。」と言うと梨子ちゃんが手を挙げた。
「はい、松崎さん。」「えっと、わたしはこのクラスから行事委員に選ぶとしてふさわしいのは神原さんだと思います。」
それを聞いてわたしは耳を疑った。えっ???なんで???わたしが行事委員だって???。そう思っていると梨子ちゃんが続ける。
「神原さんは去年放送部でお昼の校内放送番組で来週ゆうわマートで販売する日替わり弁当を分かりやすく紹介してそれを事前にスムーズに注文できるように校内アプリも改良してお弁当の売り上げアップだけでなくフードロスにもつながったとか、図書館司書の先生のおすすめの本を朗読して流して生徒の読書への関心と読書量を高めるのに役立ったとかいろいろとアイデアを出して実行して、いっぱいみんなのためになる事をしてくれていたのでわたしは神原さんがいいと思います。」
「へえーそうなの。神原さんすごいねー。先生としてはそんな新しいアイデアを出して、またそれを実行に移して結果を出せるって言うのはこの委員にぴったりだと思うなー。」と栗田先生が言うと他の子たちも「神原さんってすごいー。わたしもあの番組見てお弁当予約注文しょっちゅうしてる。」とか「あの朗読番組がはじまってから本っていいなあって久しぶりに図書室行くようになったんだよね。あれって神原さんのアイデアなんだ。」などとあちこちで言い始めた。
「他に適任の人いませんか?。それではここのクラスの行事委員は神原さんと云う事でいいですね?。」「さんせーい!。」「わたしも意義なーしでーす!。」「神原さんが一番いいと思いまーす!。」などとみんなが一斉に言いわたしは行事委員になることが決まった。
ちょっと梨子ちゃん、それにみんな・・・・・わたしみたいな毎日いつもみんなの後ろをちょこまか歩いてくっついている子にそんな行事委員だなんてみんなを代表して引っ張っていくような事出来る訳ないよお・・・・・。
そう思っていると栗田先生が「大丈夫。行事委員と云っても各クラスの学級委員と一緒に協力しながら委員会で物事を決めたり進めたりするから神原さんひとりで責任を負う訳ではないわよ。」と言ってくれ、学級委員の千尋ちゃんも「わたしも由衣ちゃんとならきっと大丈夫だから一緒に頑張りましょうね。」とにっこりしながら笑顔で言われ、仕方なくわたしは引き受ける事にしたのだった。
それから1週間後、さっそく初めての行事委員会が開かれた。行ってみて2年あさがお組の学級委員でもある園部すみれちゃんが居たのには少しだけ安心した。1年の時に同じクラスで同じ班だった子がいるのは心強く思う。
そのうち2年生各クラスの学級委員と行事委員が勢ぞろいし、学校側からもこの委員会を通じて年間の行事を取り仕切る先生として指導主任の大島聡子(おおしま さとこ)先生がお見えになった。
この学校では教職員の先生方の「序列」としては理事長→校長→教頭と続いてその次に主任と云う位置づけがあり、その中でも授業や学習全般を担当する教務主任と生徒指導や進路指導、部活動など授業や学習以外を担当する指導主任と云うポストがあるのだがこの行事全般に関しては指導主任の大島先生が担当されるみたいだ。
さっそく大島先生より今年の行事日程が発表される。それによると一番学園としても最重要の11月の文化祭を兼ねた秋のきものまつりは今年も規模・内容とも例年通り行い、9月下旬の体育祭も同じように開催される。またわたしたちにとって最も関心の高い修学旅行も例年通り2月実施で行き先を京都と云う事で既に旅行会社を通じて手配に取り掛かっていると言われた。
そしてここで今年から大きな行事として6月中旬に「優和ゆかたまつり」を新設したと先生から発表される。
今まで1学期には学年ごとでは遠足とかの行事はあったけど、学校全体でそこまで大きな行事はなかったし、一部の文化部ではせっかく活動しても発表の場が秋のきものまつりの時の年1回しかなく、運動部と比べて張り合いがないとか3年生で受験が気になる生徒は3年秋まで待たずに部活動を引退してしまう子もいてそれはどうだろうと云う意見もあったのと、秋のきものまつりはおかげさまで定着してきて地域の人が数多くお越しになり、格安でレンタル着物を着て学内を華やいだ雰囲気にしていただき、また新しく「きものファン」を増やす和装振興につながっているのもあって何か他の時期でも和装に関したイベント的行事があってもいいのではと云う事でこの「優和ゆかたまつり」を理事長先生直々に提案されたらしい。
一応このゆかたまつりに関しては既に学校側としては開催までもう2カ月半なのである程度の内容は決めて動き出している部分もあり、具体的に言うとゆかたまつりでは当日は当然生徒全員は元より教職員全員が浴衣を着用し、展示や発表に関しては文化部としては大切な日頃の成果の発表の場なのでしっかりとやってもらいつつ、この行事はいわば「お祭り」なので生徒の負担をできるだけ軽くしながら生徒自身もゆかたに親しみながら楽しんでもらう娯楽色の高い演出にしていきたいと云う考えがあるようだ。
また秋のきものまつりと同じように地域の人や一般の人に学園を臨時に開放し、また好評の着物体験はそのまま浴衣体験として同じように着付け・ヘアメイク・衣装レンタル込みにて格安で楽しめるように考えているとの事だった。
とここまで大まかに年間スケジュールと新設のこのゆかたまつりについて説明があったところで次回までに各自がこのゆかたまつりの細かい部分をどうしたらよいお祭りや行事になるか考え、それを基に意見を持ち寄って第2回の会合をしましょうと云う事で今日のところは終了となった。
それにしてもゆかたまつりが行われる予定の6月中旬と言えばちょうど全国高校放送コンテストの県大会の直後で、特に今年は番組制作班ではテレビドキュメント部門での出展作としてわたしが素案と企画書を考えた学内売店のゆうわマートに毎日お弁当やお惣菜を売りに来てくださるルリ子さんの奮闘とお弁当作りを通して考えてくださっているわたしたちへの食育をモチーフにした「おにぎりルリちゃん」と云う番組を制作する事になっていて、コンテスト直前の番組の制作や手直しで一番忙しい時期とゆかたまつりの準備期間が重なってしまう。
わたしも素案を提案して企画書を書いた以上は「おにぎりルリちゃん」の制作に積極的に関わらない訳にはいかないし、それ以外にも通常の校内放送や対外向けビデオ配信の制作や準備もあるし困ったな・・・・・。
そう思ったわたしは委員会後に部室でたまたまいらした3年生で番組制作班の班長の橘 真理(たちばな まり)お姉様に正直な気持ちを話してみた。
すると真理お姉様は「ま、そう言う事なら行事優先で部活動の番組制作やコンテスト準備については他のメンバーで上手くカバーするから委員の仕事を頑張りながらできる範囲で部活動も頑張りなさい。」と言ってくれた。
正直わたしは「おにぎりルリちゃん」の番組作りを頑張りたい気持ちも大きかったけど、よく考えると行事委員をできるのはこの2年生の時だけ。それにコンテストの番組制作は一人でするものではなくて部内、そしてチームみんなでするものだから他のメンバーを信じて任せられるところは任してできる限り両立に努めよう・・・・・。
そう思うとわたしは次の行事委員会で発表するゆかたまつりの細部の案についてあれこれと考える日々が始まった。
次の行事委員会まで1週間。わたしはいつも部活動での必要なアイデアを考える時は特に先入観なく先ずは自分の「ひらめき」を大切にしていた。
放送部の企画会議は伝統的に「ブレインストーミング」、すなわち出たアイデアや意見をまずはつっ込んだり反論や意見したりせずに発表者の発言を一通り最後まで一旦聞いてから反論や意見を述べるようにしていて、とりあえずでも反論やツッコミが無い分わたしは安心して素案や意見を話せていて、これが自分にとってリラックスできるのと「こんな事言っちゃって何か言われるとどうしよう」と云う不安もないので割にのびのび意見できる場でもあったので結果的にいい意見が出やすかったと思っている。
前回の委員会で大島先生がどこで聞いたのか放送部では企画会議をする際にこのブレインストーミングでやっていると云うのを聞きつけていて、行事委員会でも当面の企画段階ではこの方式でやるとおっしゃってくれていたのでとにかくいつものようにあれこれ考えてみていた。
そして今回もその要領でまずはあれこれとボーっとしながら色んな事をネットサーフィンをしたり雑誌をめくりながら考えていたのだが、ツイッターのタイムラインを見ていると”ティーンズ レインボー”と云うアカウントのツイートがふと目に留まった。
”ティーンズ レインボー”とはわたしが以前オブザーバー参加をさせてもらった中高生主体のLGBTについて考えるサークルで、優和学園では普段は「女性だらけ」の学校生活の中だけだとどうしても見逃してしまう人と人との繋がり等もあるからちゃんとした真面目な目的の会ならば機会があれば参加する事が推奨されているのでわたしも一度参加した事があり、その際にツイッターのアカウントをフォローさせてもらっていた。
そのサークルにはわたしは優和学園の同級生の神野莉央子(かんの りおこ)ちゃんにお誘いを受けて参加した。
莉央子ちゃんはわたしと同じ新女子で且つMTFトランスジェンダー。クラスは伝統文化コースで部活動はマーケティング部に所属している細面で目がぱっちりとしていてきれいな顔立ちの着物のよく似合う子だ。
わたしは例のおにぎりルリちゃんの注文の校内アプリの改修や、他にも何かとマーケティング部とはコラボする必要の案件が出る度にマーケティング部に「出向」みたいな形で何度か出入りしていてその際に莉央子ちゃんとわたしは仲良くなった。
莉央子ちゃんはプログラミングが得意でその特技を活かしてマーケティング部でアプリやサイトの開発や運用、修理・改修を担当していて、将来的にはトランスジェンダー枠で大学に進学したのちはジェンダー格差があまりなくまたトランスジェンダーへの理解があると言われている大手IT企業への就職を目指している。
ただ着物や和風文化もとっても好きなので他の学校になく且つ今しかできないカリキュラムでより専門的に和風文化に触れたいと云う事であえて特別進学コースではなくて伝統文化コースを選んだみたいだった。
そんな莉央子ちゃんは普段からお淑やかなのと着物もよく似合うから既に大和撫子の域に入っているとわたしなんかは思ってしまうのだが莉央子ちゃんは穏やかな性格で控えめなところもあって自分の事を決して鼻に掛けたりせず、またボランティアにもよく参加すると云う活動的なところと優しい性格を併せもっている子でわたしは接していてとても居心地がよかった。
またMTFトランスジェンダーとしてこの優和学園に来たと云う事は莉央子ちゃん自身もこれまでかなり悩んだり辛い事もあったみたいで、わたしは自分にももいじめられたりした辛い時期があった事を話してそれがお互いに理解を深めてより仲良くなっていた。
さてそのサークルに参加させてもらった時にグループディスカッションがあり、半分雑談みたいな事をしつつメンバーそれぞれがLGBTについて思うところを話していたのだがそのうちのMTFトランスジェンダーの子の一人がわたしや莉央子ちゃんは堂々と和服が着られてうらやましいと言っていたのを思い出した。
その子はアウティングを恐れてまだカミングアウトをしておらず、誰にも見つからないようにこっそり「女装」をして「なりたい自分」の姿を体現しているとの事だった。
苦労して少ないお小遣いや貰ったお年玉をやり繰りしてなんとかワンピースやブラウス、スカートにウィッグ、女性用下着を通販やリサイクルショップで買い、安いコスメやアクセサリー、髪飾りなどを100円ショップや300円ショップで他のものに紛れさせながら買い揃えて人目につかないようにメイクしてウィッグを被り、女の子の洋服に着替えて「ほんとの自分」を実感していた。
だけどその子は女の子の着るかわいらしいフリルやレースのついた洋服も大好きだけど、成人式の日に街で見かけた振袖姿の新成人や花火大会の日にこぞって出てくる浴衣でかわいく着飾った女子の姿を見て普通のどこにでも居る中高生の女子が思うのと同様に「わあ、振袖っていいなあ」とか「浴衣で花火大会ってかわいくていいな。わたしも着たい・・・・・」と云った和装への憧れも持っていた。
だけど女子にとって洋服と比べて和服はハードルが高いのと同様、そのMTFトランスジェンダーの子にとっては和装がしたくなっても同様どころかより実現へのハードルは高かった。
と云うのはネットで「着物女装」「女装 振袖」とかで検索してみると結構いろんなサイトやSNSの書き込み、ブログなどがヒットするので細かく見ると今は色んなところで女装子やMTFトランスジェンダーがきちんとメイク・ヘアメイク・着付け込みで女性物の着物や浴衣を着て写真を撮ったり、そのまま着物姿で辺りを散策できるプランを用意している写真館やいわゆる女装サロン、変身処と云ったお店があるみたいなのだがどれも料金が安くても最低1万5千円位からで高いところになると4万円も5万円も掛かる設定になっていてとても高校生ではおいそれと出せる金額ではなかった。
それと仮に通販や量販店、リサイクルショップとかで安く着物や浴衣を買ったとしても今度は着方が分からなかったり、動画やネット上で着方を紹介してくれるサイトを見ても実際に着るのにチャレンジしてもなかなか上手くできなさそうで仕方なく今は諦めているのだそうだ。
社会人とか大学生になってある程度時給の高いバイトができる等で稼ぎがあればその手のお店に行って和装を楽しめるのだけど、今の自分にはちょっとまだ金額的に無理だしそれに高校生がお店によっては「秘密クラブ」のような雰囲気もあるその手のお店に行くって大丈夫なんだろうかと云う思いもあってフラストレーションが溜まっているのだとか。
だけどわたしたち優和学園の生徒は毎日袴制服を着て通学していて学校では浴衣や着物の着付けを教わって実際に自分で着れるし、その上学校内には生徒であれば無料で着物が借りられる着物館なるところまであって自分はカミングアウトをしてなく、また様々な理由でMTFトランスジェンダーである事を隠しているので優和学園には入れてないのだけど、それでも堂々と46時中女子で居れて且つ和装もできる時には好きなだけできるわたしたちはほんとにうらやましいとその子は言っていた。
それを聞いてわたしや莉央子ちゃんからしてみれば優和学園は入ったら入ったで山のように今までした事も見た事もないような事を覚えたりする必要があるし、それに厳しい所作・マナー・言葉遣いをして保ちながら女子としての学園生活を送らなければならないのは着物は確かにいつでも人前で着られる環境なんだけどそれだけではなくて他にもいろいろと結構大変なのよと言いたくもなるけどその子の「和装がしたい」と云う切実な気持ちは分からないでもない。
確かに着物は着ると楽しいし、着るとよりその人を「女性」としていつもより遥かに華やかできれいに、そして艶やかに見せてくれる。
それはわたしが中学の時にはじめて桜田先生の手ほどきで「着物女装」をした時に感じた事でもあり、身近なところではあゆみちゃんはその気持ちが高じて有名大学付属の中高一貫校からわざわざ優和学園に新女子として通う事を選んだ事からしても着物の持つ魅力は言葉では到底表せない「女子」の心に響く何かがきっとあるんだと思う。
なのであれば今回この「ゆかたまつり」はある意味「和装振興」と云う目的で理事長先生も開催したいとお考えになっておられるようだし、それなら中高生とかわたしたちとそう年の離れていない世代で浴衣を着てみたいけどまだ着た事のない人・着たいけど着る機会の無い人に対して一般のお客さん同様に格安でメイク・ヘアメイク・着付け込みで浴衣を着せてあげると云うのはどうだろう・・・・・。
そう思ったわたしは莉央子ちゃんに電話をしてみた。
「もしもし莉央子ちゃん?由衣だけどー。今いいかなー?。」
「いいよー。由衣ちゃんこんにちはー。」
(つづく)
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