Linkin Park Meteoraとの出会いは衝撃過ぎる出来事だった。
カナダ・トロントへの旅行。韓国人ツアーに同行した僕は、友人であった韓国人のハーンと隣の席だった。
僕も彼も大の音楽好きだった為、意気投合して仲良くなったのを覚えている。
当時はまだCDプレイヤーの時代で、お互いベタベタにステッカーが貼られたケースに沢山のCDを持ち込んでいた。僕のケースの大半がエクストリームメタルであった、それと同時にJpopやJRockのCDを入れていたのは、日本を忘れない様にする為の対策だった。
トロントに向かう道中は兎に角時間ばかり取られてしまうので、沢山持って行ったのは正解だったのかもしれない。でも流石に何度もリピートしてれば飽きが来るもので、僕はお互いのCDを交換し合おうという提案に出た。
彼のCDケースには意外と洋楽が多かった。
目ぼしいものといえば、勿論ラウドミュージックなんだけど、彼のストックは少しカラーが違っていた。
スキッド・ロウのベスト盤。何故かXJapanのベスト盤。
そしてLinkin ParkのMeteoraとHybrid Theory。
覚えている限りではこんな感じ。
恥ずかしながらスキッド・ロウは聴いた事がなかったので、ガンズ(ガンズ・アンド・ローゼズ)みたいな感じだよと推されて、聞いてみた。
まぁ兎に角格好いい!セバスチャンバックの掠れつつも凄まじい声音にただただ圧倒された。
Youth Gone Wildってネーミングもティーンエイジャーの僕にぴったりだったし、若者の行き場のない怒りを代弁してくれる叫びがロックそのものだった。
一通りスキッド・ロウを聴きまくった後、僕は強烈な友人のプッシュにより、Linkin ParkのMeteoraを聴くことになった。
なんか聞いたことがある名前だけど、思い出せない程度の認識だった為にワクワクが止まらなかった。
あたりは丁度高い山がそびえる、山岳地帯。高い山の間を縫うようにバスは進んでいく。丁度そんな広大な景色と同時に激しい衝撃を受けることになった。
鉱山で採石する様な音が続いて、次第にガラスの割れる音がする。その直後電子音の様なサンプリングからギターのイントロ。ターンテーブルが爽快なスクラッチを鳴らし、凄まじくイカしたリフがスタートする。
僕はもうこの時点でテンションが最高潮まで達していた。
今までエクストリームメタルを愛聴して来たけど、ここまで計算尽くされ、インテリジェンスな音は初めてだった。メタル=野蛮で下品でやかましい音楽という僕の常識が見事にぶち壊された。
リフは兎に角シンプルでありながら、音と音が邪魔し合わない。かつ音がまるで空間の様に飛び回り、自分の真後ろにまでスピーカーがあるのではないか?って位の臨場感だった。
チェスターの若干細くも、しっかりとディストーションされたシャウトが格好良くて、一気に引き込まれた。
静粛なサンプリングで構成された独特なイントロが特徴的な2曲目のSomewhere I Belong。まるで宇宙空間に投げ出されたかのような浮遊感と、またしてもスクラッチサウンド。DJの使い方も非常に独特なバンドだと思った。
ハウス・オブ・ペインの様に攻撃的ではなく、飽くまでも音の雰囲気にプラスする様なアプローチの仕方。
そしてMCのMike Shinodaの少し悲壮感があるラップ。このバンドMCまでインテリジェンスなラップを歌っている。どんどん僕のメタルやラップのイメージが覆されていく。
辺りは少しだけ薄暗くなりつつあった。まだライトを点灯するには早いけれど、注意して走行した方が良い。そんな時間だろう。カナダだけあって、この時期になれば肌寒いし。日もだいぶ短くなりつつある。音楽にばかり集中して景色を眺めれなかったじゃ、なんの意味もないので僕は音楽半分景色を楽しんでいた。
そうこうしている内に曲も中盤辺りだろうか?
しかしこのアルバムには捨て曲がないのだろうか?って位にどれもレベルが高い。きっと彼らの容姿は驚く程にインテリな雰囲気で満ち溢れているのだろうと思った。
遠くの景色も少しだけ闇に包まれて、完全にバスにライトが付いた。遠くにそびえる山々も赤黒い夕陽に染まり、幻想的ない色合いを見せ始めた頃。僕が人生で初めて衝撃を受ける曲と出会ってしまった。
アルバムも丁度中盤辺り。丁度今の季節にぴったりな、ひんやりと冷たいギターのハーモニクス。荒れ狂う雪原の中で只管叫ぶ様なチェスターのシャウトに僕は涙が溢れてしまった。
そんな表情を悟られたくなく、窓の外を眺めると情景と音楽がマッチし過ぎてしまって。更に僕の情緒が不安定になってしまったw映画のティーザー映像様に流れる景色と音楽。改めて海外のスケールのデカさに、ただただ圧倒された。
辺りが完全に闇に包まれたトロントと車内。
強烈なストリングスのテンションが、先程までの静粛さをぶち破り打ち込みのドラムが参加した辺りで、まるでここはライブハウスと化した。
Mikeの畳み掛けるライムと、チェスターのシャウトの掛け合い。ヴァースはラップ、コーラスはシャウトというのがどうやらこのバンドのスタイルなのだと気がついてから、僕は双方違う畑同士がしっかりと溶け合うのを感じていた。
そして中盤以降の狂った様なシャウトは、暴力的なグロウルとは違い、只管感情をぶつける純粋な怒りを感じた。
しかし綺麗に歌う時はどこまでもクリーンに歌うのに、激しくなれば何処までも激しさを増す彼の歌唱力には脱帽だった。こんなに幅が広いボーカルは中々いない。
このバンドがミリオンセラーした理由が初めてわかった。
それ以降も良曲が続いて、和風なサンプリングに耳を奪われた。尺八のサウンドがまさかアメリカのラウドバンドのアルバムから聴けるとは思ってもみなかったので、度肝を抜かれた。ダークでディープなライム。やはりMike Shinodaは知的だ、ラッパーの様に下品な表現が全くなくて、インテリジェンスな言葉遊び。只管怒りに満ちているんだけど、目の奥がシーンと冷たい様な危うさがある。
驚きの戸惑った僕の表情に気がついたのか、肩をぽんぽんと叩かれた。恐らく僕のイヤホンから大分音漏れしたのだろう。ハーンは笑顔で僕の顔を覗いて。
「Linkin Parkにはオリエンタルなエッセンスが散りばめられているんだよ。何故ならば、二人アジアの血を引くメンバーがいるからね。」
「和風なテイストはMCのMikeの影響。彼は日系人だからね!」
まさかMikeが日系人だったなんて…。後から聞いた名前からそう言えばShinodaなんてめちゃくちゃ日本人らしいもんなってw
そしてこれまた宇宙空間的なサンプリングを皮切りに、力強く打ち付けられるスネア。非常にリズミカルな8ビートのリズムに前のめりになりつつも、只管その音に酔いしれる。中盤以降はスクラッチの雨あられ。DJたる者レコードを擦ってなんぼと言わんばかりの激しさだ。
僕の肩を再び叩く友人は
「Djハーン。僕と同じ名前だよ!」
と満面の笑顔を見せた。そんな彼の満足そうな顔は闇を照らす常夜灯の様だった。
「よっぽど嬉しいんだろうな」
彼は腕をフリフリ動かして、何かに取り憑かれた様な動きをして踊っている。
ラストを飾るLinkin Park史上最高傑作と呼ぶに相応しい。Numbは更に僕の情緒を狂わせる。まだ雪が降り積もるには早すぎる季節だが、見渡す限り白銀の景色に包まれてしまった様な感覚に浸ってしまうほど、凄まじいスケールの曲だった。
I've Become so Numb〜からの歌詞が切なくて、どうして彼はこんなに救いようがなく、切ない歌を歌うんだってチェスターの壊れそうな感情をキャッチして心が動いてしまった。
激しくも切ない旋律。美しさと激しさとい怒りと悲しみ。その全てが凝縮されたこの曲がとてつもなく僕の心臓をえぐり出して離さなかった。
そしてその旋律とは明らかに場違いな、隣の男の怪しいダンス。先程からチラチラと視界に入り込んで来る彼の奇行。どうしたんだ?遂には頭がやられてしまっていたのか?と違う意味で鳥肌が立ってしまった。
そうこうしていると無事に本日の宿へ到着した。
モーテルのようなちゃちさに少し落胆したけど、素敵なアルバムに出会えただけでも大満足だった。
お互い音楽を返却し合い、それぞれの感想を話し合う。
僕は既にりLinkin Parkの虜になって、話す熱もムンムンしていた。それに引き換え彼は非常に軽やかであった為に。僕は思わず聞いてしまった。
「そう言えばさ、さっきバスの中でなんであんな動きをしていたの?呪われたのかと思っていたけどw」
「あああれね?ラクテンベイベーだよ!」
は!?なにそれ…。
ああああ楽園ベイベーねwリップスライムの。
彼はこれをずーっと聴いていたのか?やけにハイテンションだったわけがやっとわかったw
それから終始彼はリップスライムが気に入ったらしく、曲のイメージから勝手に振り付けを考えて踊っていたw
お酒が入った頃には、すっかりと出来上がってダンスのキレも増していたw
僕がLinkin Parkに只管感動していた直ぐ側で、リップスライムに只管心奪われていた友人がいた。
なんかこう考えると音楽で人と交流するっていいよなって思うんだ。結局僕はリップスライムのアルバムをプレゼントしたんだよね。超喜んでて嬉しかったな。
Linkin Parkとの出会いは衝撃過ぎる出会いだった。
メタルとラップの融合。今ではニューメタルといったジャンルは珍しくはないだろう。だけど今までの音楽の常識を覆す作品に、その当時触れられたのは僕にとって大きすぎる出来事だった。今は亡きチェスター。彼の歌声は世界中の人々の心を鷲掴みにしたと思う。
そんな世界的なモンスターバンドが、たった一夜にして活動が終わってしまった。その訃報を聞いた時にまさしく膝から崩れ落ちる感覚に見舞われた…。
Linkin Parkとの出会い。Meteoraとの出会い。
今までどれだけこの二つのワードだけで、異文化交流をしただろうか?
Linkin Park Meteora
僕にとって決して忘れる事が出来ない、強烈な思い出でしたね!今でもこのアルバムを聴く度にあの時見た風景が思い出します!
そして彼の謎のダンスもねww
Linkin Parkよ永遠に…。
そしてもし新ボーカル迎え入れて再出発をしたとしても
オールオーケー!!天国でチェスターも喜んでくれるはずだよね?
さぁ今夜久しぶりにアルバム通して聞こうかな?
それではまた🎤🎤🎤🎤🎤