
僕が産まれた日を母から聞いた
母が父と出会い、結婚をしやがて僕を授かった。
仕事に生きていた女は、母になる為に全てを捧げると決めた。
比較的早い段階で僕を授かったらしい。
お腹の状態から見て男の子だと判断した。
僕が産まれた日。まるで昼間のように明るかった。
冬も終わり春を迎えようとする季節替わり
僕は産声をあげた。
外はまるで昼間のように明るく、母はきっとこの子は運命の子なのだと悟ったそうだ。
父が撮影していたビデオテープには、8割型地面が映っていたのだそうだ。ただ父の泣き声と僕の産声だけがテープには記録されていた。
僕の母方の祖母の姉
僕にとってもおばあちゃんなのだが、彼女は最愛の夫を病気で亡くしてしまった。
彼女は悲しみに暮れていた頃、まるで入れ替わる形で僕が産まれた。祖母はきっとあの人の生まれ変わりなのだと信じて、僕をとっても可愛がってくれていたのだ。
誰に対しても笑顔を絶やさない子供。
母が退院し職場へ僕を連れて行った
母は元々化粧品会社を努めていた、勿論従業員数も多かったらしく、ふと目を離した隙に僕はどこかへ行ってしまったそうだ。いつの間にか色々な人に抱かれて、僕はその度に天真爛漫な笑顔を見せていたのだそうだ。
どこに行っても可愛がられる子供。
僕の父方の祖父はまた僕を可愛がってくれた
背中に僕を背負い近所を回る。一軒一軒家を訪ねては僕を見せに回ったのだそうだ。帰る頃には汗だくになり
僕はニコニコ笑っていたのだそう。
僕はその事を覚えていないが
非常に愛されていた事にとっても感謝をしている。
父も母も僕を愛してくれた、妹とは友達の様に仲が良い。
僕の祖父も祖母ももう会うことはできない。
もう二度と会うことも話す事も出来ないのだが
僕の身体にはほのかに感触が残っている。
僕を抱き上げた両手、僕の頭を撫でてくれた大きな手。僕の耳に残る沢山の愛のある言葉。
その全てを包みこんでくれた、その出会いをくれた
僕の人生というチャンスを与えてくれた
それが僕の産まれた日。その日から全てが始まったのだ。
どれくらいの人に会ったのだろうか?
僕を愛してくれる人もいた、僕を愛さない人もいた
時に傷つけられて人生を棒に降った日もある。
絶望の底で光を求めた日もある。
だけどその毎日をくれた、人生という甘くて辛い物語を作ってくれた。それは僕にとってかけがえのないものだと言えるだろう。
僕の産まれた日から今までずっと生に感謝する日もあれば、自分の人生を呪い悔やんだ日もあった。
でも僕がある一定の場所で留まれたのは、僕の身体を一生懸命になって支えてくれた人達のおかげなのかもしれない。
僕を抱いた沢山の人の腕なのかもしれない
汗だくになって背負った背中なのかもしれない
生まれ変わりだと信じた祖母の想いなのかもしれない
その多くの想いが僕を支えてくれていた
しっかりと落ちぬ様にガッチリと支えてくれたお陰なのかもしれない。
僕はまだ暗闇から抜けていないかもしれない。
まだまだ辺りは薄暗いままなのかもしれない。
だけど、僕の背中には多くの人の支えがある。
正しい道も、過ちの道も
彼らは導いてくれているのかもしれない。
母から改めて聞いた僕の産まれた特別な日の話し
僕はその話を聞いて、沢山の過去を思い出した。
すべてが愛とつながり、生かされていること。
これから先何が起きても僕の背中を支えてくれる
それは人生の最後まで続いていくだろう。
暗闇に一筋の道しるべを残してくれるだろう。
僕の背中には沢山の人がついてくれている。
僕はただ只管歩を進めて行けば良いのだと悟った。
不条理で残酷であるこの世の中ではあるけれど
その隙間に散りばめられた美しさ
それを感じる事が出来ることもまた人生の醍醐味なのだろうか?
命をは儚く短いけれど
多くの転生の内の一つかもしれないけど
僕は僕という存在でこの世に産まれた事に感謝するしかない。それがどんな結末であってもだ…。
今日がある喜び
明日が来る喜び
僕は多くの物を授かった。
僕が産まれた日から今日までずっと