パンダは世渡り上手です、彼女はふんだりけったりです、そして三人組は 

ハガレンと呪術のクロスオーバーです。 

 真面目が悪いとはいわないが、忙しく働くおっさんはどこにでもいるんだなとパンダは思った。
 怪しい小柄なオヤジに襲われそうになった相手を助けたのは仕方がないというか、見過ごすことが出来なかったからだ。
 ティム・マルコーというおっさんは医者、それも軍医と知って驚いた、人は見かけによらない。
 そして今、自分はマルコーというおっさんの世話になっている。
 軍医、軍隊か、ここは自分のいた世界とは違うとわかってパンダは悩んだが、自分のような生き物がふらふらと街中を歩いていて警察みたいなところに掴まったら面倒だと考えたのだ。
 だが、最初から簡単に居候させてもらえるとは思わなかったので、そこは色々と考えた。
 可愛い生き物、パンダが困っている、見捨てるのか、放置プレイか、おっさんは悪魔かと半ば脅迫、脅して居候しているのだ。
 そして今、看護婦としてパンダは活躍している。
 断っておくが、ナース服を着ているわけではない、看護婦がいることもあるのだが、可愛い、巨乳のナースがいると軍人といえど男だ、気になるのか、わざとらしい傷で手当てをしてもらいにくるのだ。
 
 昼の時間になると忙しいと追っ払い、夕方になれば時間外労働だ、特別料金を払えと言って患者を追っ払う。
 もふもふのぬいぐるみのような生き物に追っ払われたからといって軍人も簡単には引き下がらない。
 だが、パンダは強かった、拳を構えてポーズを取ると素早い動きでアッパーカット、メリケンサックをつけて、相手はノックアウト。
 文句を言ってくる相手には、俺、パンダ、人間の言葉わからない、そう言ってお引き取り願うのだ。

 とりあえず、ここに居れば飯と寝る場所は心配はない。
 だが、木桜を早く見つけないといけないなあ。
 焦っている訳ではないが、もし呪詛師がこの世界にいるなら、彼女と会っていたら面倒なことにならないか。
 もし、彼女が襲われたら、ちいっとばかり荷が、いや、負けは確定かと思った。 
 何故なら彼女は呪術師でもなければ補助監督でもない、用務員なのだ。
 しかも日頃の仕事ぶりときたら。

 木の上から降りられなくなった猫を助けようとして上ったまではいいが、今度は自分が降りられなくなり、夏油傑と五条悟に助けられていた。
 補助監督が練習の為におろした帳に知らない間に閉じ込められて生徒総出て探索したり。
 学長の使いで出向いたまではいいが、出先で何かあったらしく、決して仲が良いとはいえない天元の関係者と。
 色々とあるのだ、正直、不安しかない。
 トラブルメーカーは引き起こす者、側だが、彼女の場合、それはあてはまらない。
 普通の一般人なら呪術高専で働くなどなしだ。
 だが、それでもクビにならずに働いているのだ。

 連れとはぐれてしまった、どこで迷っているかわからない、多分、困っているはずだ、それも自分以上にと聞いてマルコーは気の毒にと思った。
 見た目、可愛いパンダの連れ、この時点で勝手に同類のパンダと彼は思っていたのだ。
 ところが、マルコーのところに居候することになって数日、事態は急変した。
 その日の夕方、肉体労働者のような体格の良いい兄ちゃんに背負われて来たのだ。
 傷の手当てを、男が言いかけたとき。
 「木桜ーっっっ」
 とパンダは叫んだ。
 
 顔、脇腹、包帯代わりの布は血まみれというか、ぼろ布状態だ。
 「手当をするからベッドに横になりなさい」
 マルコーの言葉に弱々しく首を振った彼女は、お金、治療費がありませんと小声で呟いた。
 「ちょっと寝てれば治りますから」
 マルコーは首を振った、破傷風、傷が悪化したら大変だ。
 「大丈夫、治療費は俺が立て替える」
 「お金、持ってるのパンダ君」
 任せろとパンダは胸をはって答えた後、隣のマルコーをチラリと見た、頼むぞといわんばかりだ。

 呪詛師にやられた、それもイタコのおばあさんと呟く彼女の姿にパンダは良かったじゃないかと言葉をかけた。
 「術式を持った相手なら勝てないだろう、とにかく傷を治すことが大事だ、ところで、あの兄ちゃんはなんだ」
 スカーのことを言っているのだ、イタコにと言葉にパンダはふーんと頷いた。
 「俺のことを変な目で見てるぞ」
 困っちゃうな、可愛いからな、俺と思いながらパンダは明後日の方を向いた。
 
 「珈琲でいいかね」
 マルコーの言葉にスカーは頷いた、無口な性格だとわかっているので返事がなくても気にする様子もなく、マグカップをテーブルに置くと聞いてもいいかねと言葉をかけた。
 襲われそうになった、妙な術を使う年寄り、老婆に。
 その言葉にマルコーは自分と同じだと答えた。
 「私も、助けられたんだ」
 信じられないというか、驚いた顔でスカーはカーテンの向こうに視線を向けた。
 治療費は払うというスカーの言葉にマルコーは一瞬考えた後、首を振った。

 
 昼食時間は若者にとっては大切だ、校庭のベンチで三人は少し遅めの昼食を取っていた。
 「おい、硝子、コーヒー」
 溢れてるぞと声をかけたのは夏油だ、だが、彼女には聞こえていなかった。
 「きっ、みやさんっっ」
 不意に彼女は立ち上がった。
 二人の男、五条と夏油は彼女の視線の先を見る、だが、彼女にだけだと事実を察すると互いに顔を見合わせた。
 「怪我、してる、体中」
 その言葉に二人の青年は顔をしかめた。
 「呪霊を出してくれ」
 五条の言葉に黒髪の青年は無言だ、だが、瞬時に彼の背後に白い竜が現れた。
 「どこにいるかわからない、だが呪霊なら」
 「駄目ならどうする、悟」
 「硝子、みやさんの怪我は」
 「手、右手が、それに包帯、右目が」

 「帳をおろそう、二人共」

 突然、三人の眼の前の空間に黒い壁が現れた。

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