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ハジマリハ深い谷底から 二章 滅びの足音⑤
はじめに
そこそこ原稿の蓄積ができましたので、短期集中的に更新を再開します。
今回の更新内容全体をざっくり述べると、嵐の前の静けさというところでしょうか。
ですので、ちょっと足りないなと感じるかもしれませんが、ご了承ください。
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二章 滅びの足音⑤
立花隊長と別れ俺達は主計課で宿舎等の情報を聞き再び基地整備ハンガーに戻ってきていた。名寄基地の整備班がやってくるはずなのだが、何人来るのだろうか?
「……なあ、これからどうなるんだ?」
他の隊員達の邪魔にならないように整備ハンガー入口傍の片隅で、壁にもたれかかっている織田が徐に問いを投げかける。
「なし崩し的に小隊長が中隊長になっちゃいましたけど、俺達このまま分隊率いることになるんですかね?」
「上層部が大分混乱しているようでござるからなぁ。某達幻獣と戦うことすらなく、やられてしまいそうな気がするでござるな」
織田の隣に立つ秀吉が疑問を口にするとその隣に立つ信康が不吉な事を言う。心配なのはわかるが、口にする事じゃないな……
「まあ、一時的なものだと思うけどね。それよりも舞人、誰が来るか聞いてる?」
「いや、何も聞いていない。何人くらい来るんだろうな?」
信介の右隣に立つ一樹の問いに俺は軽くそう答える。整備班が随伴しているのも今しがた知ったばかりだしな……軍全体が情勢変化に対処しきれていないと言ったところか。こちらの混乱が収まるまで何もなければ良いが、このままだと俺達も何もできないままやられてしまう――が、俺の階級ではどうすることもできない。
「比良坂の辞令もまだだし、階級が上の人が来たらまた変な事になりそうだな」
「中山さんが来てくれると逆にありがたいんすけどねぇ」
「おい、秀吉。あいつの名前を出すんじゃねえ。本当にきちまうだろ!」
何気なく言う秀吉に信介は嫌そうに声を荒げる。俺も秀吉に同意見だが、こいつ中山にも苦手意識を持っているのか?
「別に良いじゃないっすか。この前の件まだ根に持ってるんすか?」
「そうじゃねえけどよ……」
「――あっ! 知り合い見っけ!」
ヘソを曲げたようにぼやく秀吉に信介が躊躇いがちに答えると後ろから女性の声がかかり、振り向くと中山が小走りでこちらに駆け寄ってきていた。
「げぇ――マジかよ」
「中山、立花さんに言われてこっちに来たのか?」
小声で毒づく信介を無視して隣に割ってはいってきた中山に俺はそう質問する。
「岩下司令経由でこっちの随伴に回るようにって……ってなんで嫌そうな顔してるのよ。信介!」
「あって早々に変な因縁つけてくるんじゃねえよ!」
「なんか羨ましいっすね。信介さん」
二人のやりとりに秀吉が恨みがましく言うと信介は咄嗟に秀吉を睨む。
「はぁ!? 何でそうなるんだよ!」
「モテモテでござるからな。信介殿」
「ちょっとぉ! 変な事言わないでよ! 私にも選ぶ権利があるんだからね!」
「そんな事言って、本人はまんざらでもないと」
「――殺されたくなかったら、それ以上は言わないことね……ねえ、一樹君?」
「話が大分逸れたが、中山は何人連れてきている?」
「私の方は私の班全員連れてきているわ」
「となると、10人くらいか……物資は何か持ってきているか?」
「整備用の戦略機パーツと予備の弾薬を持ってきているんだけど、搬入手伝ってもらえないかしら?」
話題を戻した俺の問いに中山は淡々と答え提案する。丁度いい時間つぶしになるか……
「やっぱかよ……」
「五月蠅い! 頼みづらいのよ!」
不満げに呟く信介にすかさず中山はそう当たり散らす。
「いや、大丈夫だ。どうせ暇だったしな。俺達の資材は俺達で固めておいた方が良いだろう」
「そうっすね。それじゃ行きましょうか」
「このままだべっているより生産的だね」
俺の回答に秀吉と一樹が同意する。自由行動みたいなものだから無理強いしなくても問題ないか。
「まっ、搬入作業が終る頃には、上の混乱も落ち着いているでござろう」
「そうだな。信介、嫌なら宿舎に戻っても良いぞ?」
信康の同意を聞きつつ俺は改めて信介に目を向け訊く。
「おい、この流れで俺だけ宿舎にいっちまうわけにいかねえだろ」
「僕はそっちの方が面白いけどね」
俺の問いに信介が悪態交じりに頷くと、一樹が皮肉交じりに呟く。。
「うるせえ! さっさと行くぞ中山!」
「何でいきなりあんたが仕切るのよ! ちょっと待ちなさいよ!」
一樹の皮肉にイラったとしたのか信介はそう吐き捨て我先に駆け出し、それが気に食わないのか中山が慌てて後を追い始めた。
その様子を俺達は遠くを眺めるように距離を取り後に続く。結局いつも通りのようだが、これからどうなるのだろうか? 心配する材料しかないが、いつも通りどうにかするしかないだろう……
2023.04.06 前作『幻獣戦争』より絶賛発売中
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