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ハジマリハ深い谷底から②
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序章 生かされた理由――②
「中隊各員。寝ている者はいるか?」
「こちら03。いくら余裕だからってこの状況下で寝れませんよ中隊長」
「02。03に同意します。中隊長今現在全機健在です」
私の軽い冗談に部下達が分かりやすい反応をする。偶に塹壕から乗り出して迎撃している状況だしな。図太い奴は機体を隠したまま寝ていてもおかしくは……流石に無理があるな。
「そうだな。各員そのまま聞いてくれ。我々はこれより、隣のエインヘリヤル大隊と共に、右翼防御線に集中する幻獣群の側面を突く。半包囲して殲滅せよと司令部は仰せだ。不満がある者は居るか?」
「了解。こちら02。不満がある奴は今のうちに答えなさい。私が黄泉路に送ってあげるわ」
苦笑交じりに私が言うと、副隊長である02が冗談交じりに各員に告げる。彼女の気性からして冗談に聞こえないのは――恐らく気のせいだろう。
「おおこわっ。こちら07。中隊長、火力支援はありますか?」
「心配するな。私達が生き残れるだけの支援は用意してくれるそうだ」
「09了解。全機いつでも行けます」
「わかった。エインヘリヤル大隊とミーティング後速やかに行動を開始する。全機その間補給を十分にな」
09の返事を最後に私は各員にそう告げ、新たにエインヘリヤル大隊長に通信コンタクトを送る。しばらくして回線が開かれ、金髪碧眼のうら若き美女がコックピットモニターの一部に表示される。エインヘリヤル大隊長、ナスターシャ中佐だ。
「今日は吉日のようだな。立花」
「そうかな? 最後の日かもしれないよ」
表示されたナスターシャは開口一番にそう述べる。
「ふっ。この最前線で貴官のその言葉を何度聴いてきたのだろうな?」
「もう何度になるだろうかな。君のその大胆不敵な笑みを見るのは」
お互いにいつもの前口上述べ私はこう切り出した。
「そちらも司令部から連絡はきているのかな?」
「無論だ。こちらも準備が整い次第全機右翼側面に突撃する」
「わかった。ならば、オープン回線はいつも通り共有しよう。お互いにカバーしやすいよにね」
「了解。では、最前衛は数が多い我々が引き受けよう貴官らは援護を頼む」
「了解。任せてくれ。こちらも準備が整い次第また連絡する」
ナスターシャの淡々とした返答に私も淡々と頷き通信を終える。
これまで幾度となく同じやりとりを重ね、その度に死線を潜り抜けてきた。だから、多分今回も大丈夫だろう。私はそう自分に言い聞かせ、設定を切り替え、エインヘリヤル大隊とのオープン回線を共有する。
「エインマスターより各機食事はどうだ? 腹一杯になったか?」
「エイン02。各隊間もなく終わります」
無線上で問うナスターシャに副官のエイン02が淡々と答える。さて、こちらの準備状況どうだろうか?
「よろしい。では、第2第4中隊はいつも通り、我々と自衛軍第4戦略機中隊の突撃を援護。残りは速やかに右翼側面に突撃する」
「各小隊準備はどうだい?」
ナスターシャの命令伝達と同時に私は中隊各員に状況を質問する。
「こちら02。全機いつでもいけます」
「エイン02。こちらも準備完了しました」
「よろしい。それでは――」
「こちら03! 待ってください。13時の方向。見たことがないオーガ型が居ます!」
「エイン04同じく11時の方向! あれは…‥もしや、本体では?」
各隊員の報告を聞きながら、私は塹壕より機体を起こし13時の方向へ頭部メインカメラを向ける。確かに紺色の特徴的なオーガ型が、目立つように取り巻きと共にこちらに向かってきている。私は改めて秘匿回線でナスターシャにコンタクトを送る。
次回に続く
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