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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦④

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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦④

「一般論ですが、対馬を攻略して空いた戦力を四国に振り分けてはいけないのでしょうか?」
「それは無理だ。対馬を奪還した場合、恐らくラシア大陸で戦っている連中が避難民を連れて大挙してくる公算が大きい。間違いなく他国間の戦闘になる」
「なるほど、あえて放置して蓋にするわけですね」
 俺の想定を理解できたのか朱雀はそう補足して頷く。

「四国を攻略してからだろうな。対馬攻略は……その方がお前の負担が減るだろ?」
「そうだな。どのみち腹に爆弾を抱えた日本では他国の面倒まで見切きれんはずだ」
 俺の問いに勇司は俺を見返して同意する。
「まあ、各方面への調整は任せるぞ。まさか俺達だけで隠岐の島攻略をするわけじゃないだろ?」
「当たり前でしょ。そんな無茶できるほど装備は揃ってないわ」
 俺が改めて勇司に問いかけると、何故かキレ気味に博士が割り込んできた。

「どうせ作戦開始は1週間後とか2週間後とか言うんでしょ。あんた達あたしらを殺す気!?」
 博士は矢継ぎ早にそう続ける。
「まだ諸々の調整をしている最中なので、何とも言えませんが近日中にはまとまるでしょうな」
「せめて一ヶ月頂戴。それだけ時間を貰えれば貴方達に苦労はさせないわ」
 わかっていたのか涼しい顔で言い返す勇司に、博士は真剣な眼差し向け言う。
「博士、全てが揃うの四国の時で構いません」
「……そう。仕方ないわね」
 勇司の端的な回答に博士は意図を理解したのか渋々引き下がった。総てとは何だ? 新型戦略機以外に何かあるのか?

「勇司、全力出撃はなしで調整してくれ」
「わかっている。あくまで主役は中国、関西の連中だ。俺達が主役になるときは四国攻略の時で良い」
 俺の注文に勇司はそう答えニヤリと笑みを浮かべる。察するに技術陣には相応の負担がかかっているようだが、何を考えているかさっぱりわからんので任せておこう。

「では、方針がまとまったところで今日はここまでとしよう」
 本部長が最後にそう締め、九州要塞新生第1戦闘師団の基本方針がまとまった。 

 比良坂舞人陸将が率いる新生第一戦闘師団の本格的な稼働が始まって数日後、隠岐の島奪還作戦の作戦概要を決める打ち合わせが開催された。出席者は若本勇司陸将補、田代誉司九州要塞作戦本部長、東亮輔中国地方防衛師団長、雲井重蔵関西要塞作戦本部長の4人で、直接顔を合わせる事は無く、各々作戦司令室に集まりオンライン上で顔を合わせる形式だ。

 九州要塞作戦司令室に集合してミーティング席に座る俺は、作戦司令室モニターに映る参加者に目を向け、対面に座る田代作戦本部長を見る。本部長は俺の意図に気づき軽く相槌を打つ。

「では、これより隠岐の島奪還作戦の打ち合わせを始める」
 俺は頷きモニターに映る二人に向け音頭をとる。さて、まともな話し合いになれば良いが、雲井本部長はともかく、東師団長は少し短気な性格の人間だ。上手くまとまれば良いが……

「打ち合わせに入る前にひとつ確認したい」
「なんだ?」
「比良坂が復帰したのは本当か?」
 東師団長の発言に俺が問うと、東師団長はそう訊き返してきた。なるほど。早速そう来たか……あいつを出席させた方が話を進めやすかったかもしれんなぁ……いや、あいつを隊務に釘付けにしないと俺の方に仕事が溢れて動きづらくなる。あいつには悪いが、やむを得んか。

「ああ、本当だ。現在新しく編成した第一戦闘師団を預かっている」
「なら、なぜこの席にいない?」
 俺の即答に東師団長は不快気に訊ね返す。居たらお前が喧嘩を売ることが目に見えているからだよ。

「この場を俺に一任したからだ。何か不都合でもあるのか?」
「――復帰してそうそうに師団長か。4年も離れていた奴を抜擢するとは大した自信だな」
 ため息交じりに答える俺が気に食わないのか、東師団長はさらに囀(さえず)る。少なくともお前より有能だからな。あいつは……
 

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次回に続く


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