思い出なんかいらん
最終節。ほぼ意地だけで帰省した何も掛かっていない試合で持った感想は、やっぱり現地に行ってナンボだな、と。
シーズンが終わってのひとまずの感想は「やっと終わった」となるだろうな、とシーズン終盤は思っていました。でも、42試合目が終わる笛を聞くと、まったく違っていました。
はじめてのアウェイ全通
今年は、人生で初めてアウェイの試合を全部現地で観てきました。
学生の時は親と一緒に年パス持ってホーム全通は何年かしていましたが、アウェイは初めて。一生のうちに一度できれば、と画策していましたが、まさかこんな煮え切らない、結構心が折れそうになるシーズンを見届けることになるとは想像もしませんでしたが…笑
運もありました。
開幕前に競馬で万馬券が当たり、予定していなかった開幕戦の徳島に急遽行けることになりました。
また、8月までは東京に住み、9月からは転勤で大阪に越して遠征費を抑えることができました。上半期に東北のアウェイがすべて終わったことは大きかった。
余談はザッとこんなもんです。
アフターコロナで感じた危機感
2021年末。
片野坂体制最終年で行けた天皇杯決勝は物語としてあまりにも出来過ぎていて。そしてそこに声援がないことが自分の中で「ありのままの情熱のぶつけられる場所がなくなってしまう」という漠然とした危機感がありました。
SNSが普及し、サッカーも様々な角度から楽しめることがより視覚化されるようになりました。綺麗で、優しく、素敵なスタジアム。そらぁ見栄えもよろしく、さぞ素敵なものでしょう。しかし、だからと言って今まで文化としてあった声援が「多様性」の名の下、蔑ろにされているように感じました。
スタジアムに行けば無条件に楽しい。それは違う。根本は勝負事で、勝ったらうれしい、負けたら悔しい。そこがベースではないのか?そこすら無くなってしまうと、ただの行楽の一部ではないか、と。
僕は、情熱を一心にぶつけられるスタジアムが好きだったので、コロナ禍とSNSの野暮ったさでそれが大きく変わってしまうのが嫌で嫌で仕方がなかった。温かさとヌルさ、楽しいと甘えの境界線がより曖昧になり、勝負事としての独特な緊張感とそこでしか得られない一体感がなくなってしまうのではないか。この怖さがありました。
だからこそ、声出し応援が解禁された際には、これまでよりもより中心部で声を出してサポートをしてみようと。サッカーやスタジアムは懐が深いと思っているので、一度深いとこまでどっぷり浸かってみよう、と。
現地でしかわからない事
できれば全試合を振り返ってどうだった、とするのが一番筆者としての満足感は高いですが、それだと冗長的になっちゃうので、印象的だった試合を振り返ります。
3/25 vs大宮(0-3●)
相馬さんのコンパクトさ、ハイプレスにやられての完敗。
しかし、試合後に納得感というか、今できることにしっかりと取り組んでなお、及ばなかった印象があり「もっとやろうぜ!まだまだこんなもんじゃないだろ?」というポジティブな雰囲気で選手を迎えていました。
しょんぼりしていたサムエルを指して「お前が点取るんやぞ!」とエンブレムを叩くと彼も頷いてくれたのがうれしかった。なおサムエル…
4/8 vsいわき(3-1○)
前節の磐田戦で勝利し、試合前には岡山コーチからクラブ創立記念日に触れる投稿があったり。今まで良くも悪くも歴史を大切にしないクラブ側からの発信にはやるじゃん…!とか思った。
極寒のいわきで小雨と凍えに凍えた日でしたが、ゲームはアツく。3点目の野村がGKを交わした所が今季一番アガりました。点決めてこっちに来る野村を投げキッスで迎えるおじさんがDAZNに抜かれなくて本当に良かった…
5/17 vs山形(0-5●)
平日昼開催。朝は11℃で最高気温30℃と寒暖差がかなり激しかった試合。学徒動員をする山形に「J2のリアルフットボールを見せて泣かす!」くらいの意気込みで行くも5点を取られての大敗。5点目を取られた時に「最後までやるぞ!」って半ばヤケになりながらも応援し続けたのは良い思い出です。
俺らも最後までやりきるから、選手も頼むぜ、と。それは自己満足でしかないと言われるとその通りなのかもしれないけど、サポーターは心意気。最後まで闘う。最後までやりきる。だからこそ、伝わるものがあると信じる。たぶんこれは行かないとわからない事。行って良かった。
5/28 vs秋田(0-0△)
豪雨に見舞われた秋田。ソユースタジアムはメインになけなしの屋根があるのみで、アウェイ側は座席すらない。ずぶ濡れの中集まった40人ほどで試合前に集まってビッグフラックを掲出するため手伝ってほしい(コロナ禍の謎ルールでビッグフラックの下に人が入ってはダメだった)旨を伝えていたり、少ない人数だが頑張りましょう!といった声掛けがありました。
開門前にバックスタンド裏の軒下で「フットボールを楽しむ用意はできているか?」の即幕を作ったり、ビッグフラックやたくさんの弾幕を秋田まで持って行き、水分を含んだままそれを大分まで持って帰る労力は本当に計り知れない。試合はスコアレスだったが、1/42だとしても「そこ」にすべてを置いていくくらいの気合いをサポクラから感じた試合でした。
6/11 vs群馬(1-0○)
またしても雨。上半期のアウェイは本当に天候に恵まれない試合ばかりでした。ドームと違い、屋根がない。そして6月と言えど北関東の夜風はまだひんやりしていました。この日は高校の友人とその同僚と3人で観ましたが、「どうせ雨で濡れるなら真ん中で全力で応援しようぜ!」と呼び掛けに応じてくれました。本当にうれしかった。
試合はもどかしく、あと一歩が足りない。悪くないが良くもない。このまま引き分けか?という空気が少しずつ流れる展開での藤本の頭でのゴールは本当に痺れた。
SNSでは半裸なんてみっともない、などを見かけましたが、あの寒い中、あの展開でのゴールで脱ぐのはわからんでもないな、とか思いました。応援で身体を動かしてもどうしても寒いし、どうせ試合後に脱ぐんだもん。ある意味、そこでしかできない経験だと思います。どう見られるか、というのはのめりこんでる人らには野暮ってヤツです。自分はどこかで理性が働いて脱いだら見苦しいな…と日和ってしまいましたが、サムエルが決めてたらわからんかった。サムエルゥ…
雨は恥じらいやしがらみなどを洗い流して、いつもより大胆になれる。友人たちを巻き込んで、全力で応援して掴み取る喜びを共有できたのは一生の思い出です。
7/16 vs熊本(3-1○)
6月末の千葉戦から2分2敗。煮え切らないどころか上位対決の町田、清水にまったく良さを出せず、何かにおびえるような連敗。まったくもって納得できんかった。フラストレーションが溜まる中で迎えた「ほぼホーム」の熊本戦。
CKからドフリーでボレーを決められた時には血管が切れそうになりましたが、その後すぐにサムエルが決めて同点に。後半には藤本、上夷が決めて苦しいゲームを勝ち切りました。まさかこの試合がサムエルの今季唯一のゴールになるだなんて…
悪かった流れを断ち切るかのような今季初の逆転勝利。熊本の夜空に叫んだトリニータコールは誇らしい、以上の感想はありませんでした。このために生きているんだと。
7/27 クラブユース選手権 R16
vs札幌U-18(2-1◯)
2日後に大阪に引っ越しをすることが決まっていたので、関東での最後の試合。真夏の群馬のイカれた暑さの中で、平日の8:45にキックオフ。まだ陽が上り切っていないのに汗をしっかりかくぐらいの酷暑でした。
前日の夜に車で高崎まで向かい、夜中2時半にチェックイン。朝の通勤ラッシュに巻き込まれ、ギリギリ(遅刻?)に到着しての応援でした。
現地は自分を含め大分サポが6人と札幌サポが1人。他は保護者やユースウォッチャーな方々。
予選を3戦全勝。それも無失点で通過したトリニータユース。この日も勢いそのままに前半ATに2点を奪い2‐1で逃げ切って勝利。
メンバー表を見ながら選手コールをしたり、HTに即幕を切り貼りして「全勝👑優勝」のゲーフラを作って試合後に選手を迎えたり、人力スネアをしてみたり…試合後に使者を歌ってからすすきのへ行こうをもじって「西が丘行こう」(準決勝からは西が丘開催のため)を歌ってみたり。
普段のトリニータとは違った規模感でやるのも悪くないなと思いました。
8/6 vs山口(2-2△)
7月からは急ブレーキ。月に1回しか勝てない日々。
選手らに何とか発破をかけたいとして、各々で声掛けをするのは否定しないが試合前のアップ時に応援はしない。90分で全力を出し切ろう、ということで静かなアップに。練習後に控えだった高木が「ロッカーで話すから思いを伝えて」ということで上記の旨を伝える。
これまで無敗。お得意様である山口に対し、前半の入りは良く、幸先よく先制をするが前半のうちに逆転を許してしまうと前半終了後にブーイングが。
後半も攻めあぐねてなかなかゴールを割ることができずにいた後半ATに松尾の劇的ゴールで同点に。
試合後の無言のゴール裏と、乾いた拍手。自主的なトリニータコール。
とにかく蒸し暑く、チャントの長回しも効いたのか試合後に体調不良者が続出した中で、高木からの「もっとサポートしてほしい」というのに個人的には全く納得ができなかった。2Lのペットボトルが2本空くくらいの暑さで、汗を吸って倍以上に重くなったタオマフ持ってみろよ、と。そこは後々振り返るともっといろんな人を巻き込んでいかんとなぁと感じるが、あの場では受け入れられんかった。そして控えのGKの高木が矢面に立って話をしたのに、フィールドに立った選手から何もなく、岡山コーチもなだめるだけ。
引き上げる際に高木のチャントもトリニータコールもあったが、納得なんてできなかった。昇格も降格も経験してきたからこそ、こんなんじゃ物足りなかった。憤りしか残らなかった。
「サポーターも悔しいが選手たちの方がもっと悔しい」はよく言われるがそれは違う。それぞれ悔しい。「もっと」なんて勝手に順位付けすんなと思う。俺の悔しさがお前に計られてたまるものかと。
9/9 vs甲府(2-3●)
山口戦後に奮起をしてくれたのか藤枝に勝利するが、そこから高木の札幌移籍、岡山に負け、アウェイで散々煽られた仙台にダブルをよりにもよって逆転で食らい、長崎には2点差を追いつくも勝てず。とにかく煮え切らない。澱んだなかで迎えたのは甲府戦。
前半のうちに2点を奪うも、後半頭に三平に決められるとOGに2つPKを与えてしまいショッキングな逆転負け。1点を返されると及び腰になってしまい、防戦一方。一度受け身になると盛り返せない。それどころか守れもしない。今季何度見た光景か。
試合後に下平監督がG裏まで来て思いを伝えてくれたが、第一声が「選手はよく頑張っている、勝たせられなかったのは俺の責任。選手を責めないでほしい」だった。90分を見ればわかる。選手は頑張っちょん。西川は3失点こそしたがPKストップもあった。暑い中でも最後までハードワークをどの選手もしているのはわかっちょん。選手を責めてなんかいない。お前だよ下平。「ボールを持てなくなったのが課題」と試合後の会見でよく使われていたが、そこに対する手立てはこの2年で全く改善されなかった。ボールを持ってからの準備はあったが、持つためにどうする?がすっぽりと抜け落ちている。そこを改善できないアンタだよ、と。
「目標はJ1昇格!あきらめない!」と話が続いたが、ズルズルと順位を落としている現状ではJ1も自動昇格も現実味を持てなかった。コールリーダーからの「気持ちの話しかできん。だからそれにもっと応えてくれ」「目の前の1試合1試合。」こちらの方がよっぽど地に足がついていて響いた。
「選手たち、やってくれるか?」の問いかけにキャプテンの司から「目の前の1試合。次の1試合。絶対にみんなで一つになって闘うから。また応援してくれ!頼む!」と。司の言葉や表情にはいつも説得力がある。司が言うなら、俺もまた勝たせられるようにサポートしようと心から思える。勇気をもらえる。
この日の下平監督の会見では「1番の敗因はウタカ」とか言えちゃうあたりに説得力は残念ながら感じられなかった。そこの対策をするのが監督でしょう?と。選手と監督への思いの乖離がとてつもなく大きくなった試合でした。
11/12 vs群馬(2-1○)
何も掛かっていない最終節。正直、モチベーションなんてほとんどなく、甲府戦後に「俺の責任」と言っていながら以後の試合で一切G裏に挨拶にすら来なくなった下平監督が試合後に何を話すのかを聞きに…というのは建前で、正確には昇格どころかプレーオフ圏すら取り逃して、お前の責任って何や?オイ!と文句でも言おうと思っていました。
この1年の体たらく。フラストレーションしか溜まらない、毎試合焼き直しのような尻すぼみで引け腰のまま押し込まれる展開を創り出す張本人の下平監督の退任が決まっていたので、どんなサッカーをするのかな、と。ほぼ空中分解をしたような散々な1年の終わりにこそ、選手やスタッフ、クラブとしての生き様が見れるのではないかと。
ゲームは押し込んで、珍しく前半のうちに2点を取って逃げ切り。選手は気を吐いたが、後半の尻すぼみな展開は相変わらず。いつも通りのゲーム。最後に意地を見せて勝ったが、チームとして機能していた前半から崩れてしまう悪癖は治らないまま。個々は頑張っているが、チームとして全く満足ができない。
思い出なんかいらん
こんな既視感たっぷりの試合で1万人も入って、80分を過ぎて1点差で必死に応援している人らを見ていると、自然と涙がこぼれてしまいました。一歩引いてみると健気だなぁ、と。現地で共に戦った仲間たちが実に報われない。それがただただ虚しく、悔しかった。
サポーターは自己満足。それはそう。とてつもなくお節介で、当事者でもないのにプレッシャーになりうる発破を無頓着に、感情的にやっているように見えるだろう。言わんとする事は重々承知しているつもり。だが、彼らといっしょに1年を通じてトリニータと一緒に戦ってみると、それはもう必死なんですよね。本当に。その日、その時、一瞬一瞬に全てを。なんとかトリニータが好転するようにサポートをする事に一生懸命です。
自分がプレーするわけでもないのにたくさんの幕を持っていき、雨に濡れたら倍以上に重くなるそれを、使い潰してタイヤが使い物にならなくなってもなお使っているスーツケースで運んでまで応援する情熱が彼らにはあります。
自分もトリニータに関する情熱なら負けんやろなぁ〜なんて思ってましたが、1枚1枚手作りの幕を作って毎試合持って行ってまではできない。デカい太鼓を持って空港を走って乗り換えなんてできない。スネア持って練習までしてスタジアムに行けない。ネットで陰湿な叩かれ方してまで矢面に立てない。それを自分より年下の人たちが先導してやってる。そこまでの情熱を、はたして他者に向けられるだろうか。
42試合が終わっての感想は、トリニータこんなもんやったかぁ…と、乾いたものになると思ったが、単純に悔しかった。もちろん、これまでたくさんの歓喜はあったが、それ以上にしんけん悔しい1年だった。
思い出なんかいらん。
悔しさも、喜びもいずれ誇りになるから。なりふりかわまず、今を全力で。そんな姿がピッチから伝わってこなかった事だけが、チクリと胸の奥を刺した。
今年もまた、性懲りもなくスタジアムに足を運びます。もちろん、トリニータの成功と選手たちの躍動する姿を見に。
そして、トリニータをサポートするあなたとゴール裏で目が合う時、再び魂に火がつき情熱が湧き上がります。2024年。悔しさをバネに頑張りましょう!
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