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メタルヒーローシリーズについて

1980年代から1990年代にかけておよそ17年にわたって放送された東映制作の特撮ヒーローアクションドラマシリーズ。ウルトラシリーズや仮面ライダーシリーズなど有力な特撮作品が休止期間となり、それらのシリーズとは差別化されたヒーロー像や番組のスタイルを構築していた。当初は作品名と同じ名前を持つ主人公単独のヒーロー物であったが、徐々に集団ヒーロー物、コミカルな要素が強い作風へと変わっていった。

◎メタルヒーローシリーズの作品紹介

★宇宙刑事ギャバン

1981年、円谷プロダクションの「ウルトラシリーズ」と東映の「仮面ライダーシリーズ」が一旦終了し、毎週放映されるヒーローが登場する特撮テレビ番組は「スーパー戦隊シリーズ」だけとなってしまったため、急遽、新しい従来のシリーズに頼らないヒーローとして計画された番組が本作品である。メタルヒーローシリーズの第1作目で宇宙刑事シリーズの第1弾としても位置付けられた。スター・ウォーズシリーズや宇宙戦艦ヤマトシリーズなどが人気を博したSFブームの中で制作され、従来の特撮ヒーローとは異なる斬新なビジュアルや設定が特徴。他のヒーロー番組と差別化された本作品は平均視聴率が14.9%、最高視聴率が18.6%と好成績を残し、主人公、ヒーロー、本編だけでなく主題歌(オープニングテーマ)も大人気を得た。メタルヒーローシリーズの中では一般的にも一番有名な作品であり、現在でも知名度は衰えていない。

★宇宙刑事シャリバン

メタルヒーローシリーズおよび宇宙刑事シリーズの第2作目。
本作は宇宙刑事ギャバンの視聴者とファン層をほぼそのまま吸収したため、好調なスタートとなった。前作「宇宙刑事ギャバン」の終盤に本作の主人公である伊賀 電がゲスト出演し、最終話で危機に陥ったギャバンを助けるシャリバンとして初登場する。そして本作品が始まってからは前作の主人公であるギャバンがシャリバンの上司としてゲスト出演することで、宇宙刑事ギャバンの続編であることを強調した。平均視聴率は13%を獲得し、主題歌レコードも40万枚を売り上げるヒットとなった。

★宇宙刑事シャイダー

メタルヒーローシリーズおよび宇宙刑事シリーズの第3作目。
前作の2作品と違って、今作ではメイン監督が変わり、青春ドラマを多く担当していた澤井信一郎が監督を務めた。そのため、人間ドラマの演出が前作よりも強くなることになった。宇宙刑事シリーズのマンネリを防ぐため、特撮とあまり関係のない監督を呼んで雰囲気を変えたかったという。また前作「宇宙刑事シャリバン」で軍師レイダーを視聴者の子供が怖がり敬遠されたことの反省として子どもが絡んだエピソードも増やした。番組人気と共に関連の玩具も大ヒットを記録した。

★巨獣特捜ジャスピオン

メタルヒーローシリーズの第4作目で、ジャスピオンという名前はジャスティスとチャンピオンを合わせたものである。本作は怪獣を大々的に売り出そうと考えていたため、本作品における巨大怪獣(巨獣)が本作品の主役として物語の骨子に置かれている。宇宙刑事シリーズの特徴であるメタル変身スーツ、銃と剣を武器とした戦い、巨大母艦、バイク、戦車などのメカニックなど主人公側の基本フォーマットは前作を踏襲しながらも蒸着、敵死、焼結のように変身コールを叫び変身する場面は廃棄された。シリアスな面が多かった宇宙刑事シリーズとは対照的にコミカルな雰囲気となり、巨大怪獣の戦いなど多くの面で差別化した。本作は日本の特撮ヒーロー番組としてはマイナーな作品であるが、ブラジルでは大人気を獲得した。1988年から「O Fantástico Jaspion」というタイトルで放送され、戦隊シリーズ・仮面ライダー、ウルトラマンをはるかに上回る爆発的人気を得た。以後、ブラジルで凄いことや善い影響力を発揮する日本人はジャスピオンという呼称と呼ばれて賞賛をして、サッカーで日本系選手が良いプレイをするとよかった!ジャスピオン!という応援が響き渡るという。

ブラジルで人気を得た理由について、東映は「当時の状況について知る人がいないので正確な分析はできません」と話したが、「ブラジルで珍しい近未来的なドラマを受け入れたのではないでしょうか」とコメントしている。また明るい性格にユーモアを失わないジャスピオン(主人公)がブラジル人の性格と類似してヒットしたのかもしれないという見方もあるようだ。また、2018年に日本のバラエティ番組でブラジルで最も有名な日本人を調査した結果、ジャスピオンが堂々と1位を占めたのを見れば、2020年代現在もまだまだブラジル内の国民的人気は根強いようである。

★時空戦士スピルバン

メタルヒーローシリーズの第5作目
前作までと同様、鍍金質のスーツや主人公側のメカニック、それに主人公変身時の解説ナレーションなど、基本的なフォーマットは「宇宙刑事シリーズ」を踏襲しており、シリーズの集大成が目指された。本作品の企画書では、科学考証を強調することをコンセプトに掲げており、作中でも科学技術についての解説が挿入されるなど、視聴者に科学への興味を持たせる試みがなされた。また変身ヒロインの登場はメタルヒーロー史上初、男性ファンだけでなく女性ファンにも大きな呼応を呼び起こした。本作は日本以外では韓国で好評を得た。韓国に初めて輸入されたメタルヒーロー作品で「サイボーグスピルバン」というタイトルでビデオが発売されていた。メタルヒーローをよく知らない人もこの作品は分かるほど評価がとても良く、超新星フラッシュマン、超電子バイオマン、光戦隊マスクマンの3作品と共に韓国で大きな人気を集めた。その人気に支えられ、2018年に韓国版の正式DVDが発売された。

★超人機メタルダー

メタルヒーロー版・人造人間キカイダー
メタルヒーローシリーズ第6作目で宇宙刑事シリーズ三部作、およびそのフォーマットを踏襲した「巨獣特捜ジャスピオン」・「時空戦士スピルバン」を経た後、新たなヒーロー像を生み出すべく制作され、メタルヒーローシリーズ初のアンドロイドが主人公の作品である。この作品以降、特捜ロボジャンパーソン、ビーロボ・カブタックなど、ロボットを主人公とした作品が登場するようになった。メタルダーの左右非対称で赤と青を基調にしたデザインやネーミング、内省的な主人公のキャラクターは「人造人間キカイダー」の主人公、キカイダーを踏襲している。

★世界忍者戦ジライヤ

ハイテク装備のヒーローを描いたそれまでの「メタルヒーローシリーズ」から一転、本作品では日本古来のキャラクターである忍者をモチーフとし、シリーズ中最も異色の作品となっている。メタルヒーローだがハイテクを使用する金属の質感のある英雄の姿ではなく、過去の忍者をモチーフに借り入れたため、全体的にメタルヒーローの感じが少ない。当時はスーパー戦隊シリーズとして扱われていなかった秘密戦隊ゴレンジャーやジャッカー電撃隊のように同じシリーズには分類されない事例もあった。それぞれが独自に忍法を身につけているという設定は、オリンピックをイメージソースに本作品の放映時期である1988年に開催されたソウルオリンピックを意識した「世界の忍者版オリンピック」というコンセプトから生まれたもので世界忍者戦というタイトルの所以である。

★機動刑事ジバン

メタルヒーロー版・ロボコップ
メタルヒーローシリーズ第8作目および平成初のメタルヒーロー作品
「超人機メタルダー」以来となるロボットヒーロー物として制作され、主人公が表の顔は刑事で事件が起これば人目につかないようにジバンになるため、変身のシーンはほとんど描写されないがホログラムのような光に包まれて人間態の姿に戻る場合はある。1987年に公開された映画「ロボコップ」の影響を受けたものであり、その影響はこれ以外にもジバンの機械的な動作や、各種メカニックの描写などにも大きく現れており、このようなロボット戦士路線は宇宙刑事シリーズのような正統派ヒーロー路線への回帰が意図されたものとなった。

★特警ウインスペクター

メタルヒーローシリーズ第9作目およびレスキューポリスシリーズの第1弾。
本作品の最大の特徴としては、既存の作品のように明確な敵組織が存在せず、一般民間人が引き起こす犯罪や災害などから人々を救うこれまで前例を見出せないコンセプトが挙げられる。このような展開になった最も大きな理由は、当時、アニメや特撮番組の暴力描写に対する批判が強くなったことが影響している。これに制作陣は暴力で問題を解決するだけが正義ではないということを見せようと逮捕と救助を同時にするヒーローを構想した。この作品は悪役がほとんど平凡な人間であり、このようなコンセプトは「快楽ズバット」以来、特撮物ではうまく試みられなかったので特撮ファンには新鮮な衝撃を与えた。

★特救指令ソルブレイン

メタルヒーローシリーズ第10作目およびレスキューポリスシリーズの第2弾
前作のレギュラーであった正木本部長が引き続き登場したり、番組中盤にてウインスペクターのメンバーがゲスト出演するなどといった展開が見られ、番組後半からはウインスペクターの主人公であった香川竜馬がセミレギュラーとして再登場するなど後続作品であることが強調された演出が見られる。本編は前作以上に刑事ドラマとしてのカラーが強まることとなり、「命だけでなく人の心も救う」と設定され、犯罪者側の背景や動機が重視されているため、戦闘よりも事件の捜査に割かれる時間が長い。犯人や被害者が死亡したり、また本来はごく普通の市民でありながら、悪人あるいは社会的事情によって追い詰められ止むに止まれず罪を犯して逮捕されるなど、悲劇的な結末を迎えるエピソードも多い。最終話ではハッピーエンドとは言い難い結末を迎え、本作品のドラマ性を象徴するものとなった。

★特捜エクシードラフト

メタルヒーローシリーズ第11作目およびレスキューポリスシリーズ第3弾
レスキューポリスシリーズとして扱われるが、初期は前編との連携性がなく、プロットだけのような作品で始まった。そのため、人工知能を搭載したロボット構成員や正崎本部長の姿も見えない独自の構成をとりながら話を展開し、前作より重いストーリーとなっている。同時期に放送されていた恐竜戦隊ジュウレンジャーのように明るい構成を持つ作品に視聴者を奪われ、本編後半には神と悪魔の戦いという、既存メタルヒーローシリーズの構成とも大きくずれる話を演出するなどの影響で高い評価を受けられず、レスキューポリスシリーズは本作をもって最終作となった。

★特捜ロボジャンパーソン

メタルヒーロー版 ロボット刑事
メタルヒーローシリーズ第12作目で名前の由来は「ジャンプ+パーソン = ジャンプパーソンの略」である説と「ジャンパーを損ねる(脱ぐ) = ジャンパー損 = ジャンパーソン」という説がある。本作の主人公ジャンパーソンには様々な商品で展開させることができる圧倒的な重武装とメカニックが提供され、以前のメタルヒーローとはかなり違う姿を見せる。機動刑事ジバンと同様、ロボコップ風の警察ロボットというコンセプトで力強くリアルな作品に仕上げた。全体的に石森章太郎原作のロボット刑事のオマージュが多くあり、演出の面ではやはりロボコップの影響を大きく感じる。

★ブルースワット

メタルヒーローシリーズ第13作目。
本作品は視聴対象年齢を幼児層から小学校高学年に引き上げ、これまでの特撮ヒーロー番組とは一線を画した、スナッチ系の侵略テーマで展開したストーリーなど野心的な作品作りがなされた。演出面では当時、人気のあったアメリカのSF映画「エイリアン」から影響を受けた点が見られ、敵の名前もエイリアンとなっている。従来の特撮ヒーローのように自動的に変身するのではなく、強化装甲を直接着用することによる戦闘形態への変身や、各隊員の戦闘形態時のコードネームが存在しないこと、後半登場のハイパーショウを除き、各戦闘形態の能力に個体差がないなどのリアリティを重視した設定が目立っている。主に高年齢層に人気を得た一方で、児童層からの人気は今ひとつだったため、2クール目以降はテコ入れとしてコミカルな場面の挿入や明確な敵集団の組織化など従来の路線方向に大幅な路線変更が行われた。

★重甲ビーファイター

メタルヒーロー版 仮面ライダー
メタルヒーローシリーズ第14作目、前作「ブルースワット」が商業的に苦戦したことから、本作品では軽快なバトル路線を徹底。甲虫を投影する3人の強さが強調され、「変身ヒーローと異次元からきた侵略者の対決」というシンプルな構図に回帰した。それまでのメタルヒーロー作品は対象年齢が高く意識されることが多かったが、本作品ではスーパー戦隊と同じ3~5歳男児に引き下げられ、以降のシリーズ作品においても踏襲された。東映が手掛けるスーパー戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズ、メタルヒーローシリーズの特徴をそれぞれ取り込んでおり、メタリックボディの金属鎧のスーツはメタルヒーローを、昆虫モチーフの戦士という点は仮面ライダーを、カラーが導入され、変身アイテムを使って変身するのは戦隊シリーズと同じである。ビーファイターが使用する武器「インプットマグナム」のギミックには、当時最盛期を迎えていたポケットベルのプッシュボタン入力を取り入れており、銃身に施されたテンキーに打ち込むコードに応じてさまざまな能力を発揮する。このキー入力のサウンドは音階になっており、これを見た携帯電話メーカーの人物が着メロシステムを考案したと言われている。作品及び玩具売り上げも好調だったため、続編の「ビーファイターカブト」の制作が決定した。

★ビーファイターカブト

メタルヒーロー版 仮面ライダー
メタルヒーローシリーズ第15作目およびビーファイターシリーズ第2弾
前作「重甲ビーファイター」の好評を受け、本作品はその正式な続編として制作された。主人公が高校生であり、「若さ」や「青春」といった要素、正義側の日常生活や学校生活が物語に描かれている点もシリーズの中では特徴的となっている。各ビーファイターや武器の名称に日本語が使われていたりと、子供に分かりやすく、前作以上に低年齢層向けとしての側面が強調されている。中盤からは初代ビーファイターの再登場、敵味方を問わず登場した新たな昆虫戦士たちの攻防戦、巨大神の総力戦で、物語の展開を盛り上げたが商業的には前作に及ばず次回作では従来のバトルアクション路線からの大きな方向転換を余儀なくされた。

★ビーロボ カブタック

メタルヒーロー版 がんばれ!!ロボコン / 不思議コメディー
メタルヒーローシリーズ第16作目で前年までのビーファイターシリーズと同様に、本作品でも昆虫モチーフの主人公となっており、「がんばれ!!ロボコン」や「不思議コメディーシリーズ」を彷彿とさせるコメディのニュアンスがプラスされたアクションドラマとなった。そのため、スターピースをめぐる争奪戦も世界征服を目的とする悪党たちとの決闘ではなくスポーツ対決やクイズ解きなどの健全な勝負で展開する。日本ではマイナーな作品と見られがちだが、中国や韓国では人気が高かった。中国では1998年から放送され、作品だけでなく玩具も好評を得て、日本未発売の関連商品も発売された。その後も定期的な再放送によって今でも安定した人気があり、中国の動画共有サイト「bilibili」が行なった歴代特撮ランキングでは2020年、2021年の2年連続で8位にランクインした。一方、韓国では2006年に放送され、同時期に韓国でも放映されていた日本の特撮番組「魔弾戦記リュウケンドー」、「パワーレンジャー・マジックフォース(魔法戦隊マジレンジャー)」を上回る人気を獲得した。

★テツワン探偵ロボタック

メタルヒーロー版 がんばれ!!ロボコン / 不思議コメディー
メタルヒーローシリーズ第17作目、テレビシリーズとしての最終作品である。前作と同様、「ロボットを主人公としたコメディドラマ」としての路線を踏襲した作品であり、ストーリーや設定などにも前作との共通点がいくつか見られるが、ストーリー上の繋がりや世界観の共有はない。楽しい雰囲気とギャグ要素、そして児童層を狙った内容で平均視聴率ではカブタックの9.7%に対し本作品は9.6%を記録、また最高視聴率は前作を上回るなど視聴率面では堅調であったが、次番組「燃えろ!!ロボコン」を石ノ森章太郎の一周忌に合わせて放送開始すると決定したことを受け、当初の予定よりも1ヶ月近く放送期間が短縮された。これに伴い、「宇宙刑事ギャバン」から始まったメタルヒーローシリーズは17年の歴史に幕を閉じた。その後、日曜8時台前半の特撮テレビドラマは翌年の「燃えろ!!ロボコン」を皮切りに、続く「平成仮面ライダーシリーズ」も含めて石ノ森原作作品へと移行することとなる。

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