見出し画像

日本のアイドルに影響を受けていた韓国アイドル業界

日本大衆文化の流入制限の時代(日本文化解放前)の韓国のアイドル業界は日本のアイドルシステムに影響を受けていることがありました。とは言っても韓国のアイドル全体が日本のアイドルを模倣していたわけではありません。
現在までのK-POPアイドルたちは本来、アメリカやイギリスなど海外の歌手グループから多くの影響を受けたのが大半であり、ジャニーズなどの日本のアイドルを真似していたのは、ほんの一部の歌手やグループに限定された話である。

※日本のアイドルに影響を受けた一部の韓国アイドルたち

消防車

画像1

1980年代に日本で大人気だった少年隊の「歌って踊れる3人組」というコンセプトをお手本にしたグループである。本来、この時代に活動していた歌手はアイドルとは呼ばないが、アイドルのような人気を獲得した。彼らの所属事務所だったハンバッ企画がジャニーズ事務所へ「テレビ番組で少年隊が踊っている映像を貸して欲しい」と連絡を取り、資料を取り寄せた。消防車のメンバー3人は少年隊のビデオを見ながらレッスン(振り付けの参考)をしていたという。1990年代には「韓国の少年隊」として日本でもデビューしており、韓国のアイドルグループの先駆け的存在と評価されている。

セトレ

画像2

1980年代に韓国でも密かに人気を集めていた日本のアイドルグループ・少女隊を模倣して作られたグループ。ソバンチャと同様に本来はアイドルとは呼ばないが、韓国の女性アイドルグループの先駆け的存在として評価を受けた。彼女たちがデビューした当時の韓国歌謡界は女性歌手を応援する習慣が無く、男性中心の芸能界と歌謡界だったため、消防車の女性ファンからも「ソバンチャの真似をするな!」、「女のグループが踊るなんて生意気だ!」といった批判を受ける事も多く、2流・3流程度の知名度しか得られなかった。

夜叉

画像3

1990年代初頭に活躍していた男性グループで日本の光GENJIをベンチマークした。当時の韓国では歌手に対してアイドルという単語を使うことはなかったため、ダンス歌手または歌謡グループなどと呼ばれていた。ローラースケートで歌って踊るコンセプトをそのまま模倣して音楽番組に出演し、10代を中心に人気を得たがアルバムを1枚発表した後、メンバーが兵役期間に入ったため、グループは解散。アルバムを1枚しか発表しなかったため、「期間限定の企画モノグループ」といった印象が強かった。

ZAM

画像4

1990年代初頭の韓国歌謡界では珍しかった男女混成のアイドルグループであり、日本のダンスグループZOOを模倣した。彼らの代表曲である「私は止まらない」の振り付けは、ZOOの「Choo Choo Train」の振付をそのまんま取り入れている。また第2のZAMとして結成されたMueや消防車のメンバーだったイ・サンウォンが作ったINKなどをはじめ、韓国の男女混成のダンスグループのほとんどがZOOに影響を受けて作られたものである。

H.O.T

画像7

第1世代アイドルの代表格であり、韓国の国民的アイドルグループ・伝説のグループと称されている。4集の「I Yah!」では日本のロックバンドGLAYを模倣した扮装でパフォーマンスを披露し、楽曲はMALICE MIZERのようにクラシックをサンプリングするなど90年代の日本の流行を取り入れていた。これは所属事務所であるSMエンタテインメントのイ・スマン社長がもともとX JAPANのファンであり、GLAYやLUNA SEAなど当時のヴィジュアル系バンド人気にも興味を示していたことが影響している。

NRG

画像9

消防車のメンバーがH.O.T.の対抗馬として作ったアイドルグループ。
ソバンチャがジャニーズの少年隊を模倣したように、NRGもV6を模倣してアクロバットなパフォーマンスとユーロビートの楽曲でデビューした。彼らの代表曲の1つでもある「ティファニーで朝食を」は、少年隊の「君だけに」に酷似している。少年隊→消防車→NRGというように路線が受け継がれているのが面白い所。

・T.T.MA

1999年に女性版・NRGとしてデビューしたT.T.MAは、SPEEDをベンチマークした事で有名。実際にメンバーの1人だったソイが後年のインタビューで「振付師の先生が日本の文化が大好きな人でSPEEDや安室奈美恵などのダンスを私たちに教えてくれた。私たちもSPEEDをお手本にしていました。同じ事務所のNRGも日本の男性アイドルをたくさん参考にしていました」と語っている。他にもFIN.K.L.やDejavuといった女性グループたちがSPEEDの影響を受けていた。

Baby V.O.X

画像12

Baby V.O.Xは、日本の女性アイドルグループ・MAXの「お姉さん的コンセプト」を参考にし、セクシーな女性的アイドルグループとして活躍。実際に彼女たちの代表曲のうち「WHY」と「裏切り」は、MAXや安室奈美恵、SMAPなどの振り付けを担当していた日本の振付師である佐久間浩之が担当した。

※ソロアイドルでは、キム・ワンソンやカン・スジ、イ・ジヨン、ハスビンなどが1980年代に人気を得ていた日本の南野陽子や浅香 唯、酒井法子、森高千里といった清純派アイドルをベンチマークしていた。

画像14

キム・ワンソンは、80年代の韓国を代表する女性ソロアイドルで日本で例えれば中森明菜のようなポジションになる。また韓国で初めてトレーニングシステムを導入し、海外進出を試みたアイドルでもある。

画像15

カン・スジは、80年代を代表する日本のアイドル工藤静香を参考に作られたアイドルだった。「韓国の工藤静香」・「韓国の酒井法子」と呼ばれていたこともあるという。

その他

画像13

上記に紹介したグループ以外にも、90年代~2000年代初頭に活躍したアイドルグループたちは日本のアイドルをたくさんベンチマークした。

・1TYM

画像16

1998年にデビューした1TYMは、4人組の男性グループ・ヒップホップコンセプトのアイドル・90年代後半にデビューという点で日本のDA PUMPに似ている。デビュー当時、実際に「韓国のDA PUMP」と呼ばれていたこともある。

・UN

画像17

2000年にデビューした2人組のアイドルデュオのUNは、夏や冬といった各シーズンに合わせた爽やかな曲調の楽曲で人気を集めた。彼らは日本のKinki Kidsやタッキー&翼のようなグループに似ている。

また2000年代後半であるが、日本の3人組のアイドルグループ・w-inds.を参考にしたT-MAXやモーニング娘。(第5期以降)をベンチマークしたi-13といったアイドルも存在した。

画像18

80年代 - 90年代当時の韓国アイドルは日本のアイドルのイメージに近く、売り出し方や衣装、音楽も日本式のやり方だった。また現在のように海外進出やグループのメンバーが個人で活動することも珍しかった為、国内だけで活躍するアイドルがほとんどで時代が進むに連れて密かに消えていくという時代であった。2000年代以降からは、日本と同じ売り出し方ではアイドルの寿命が短いと判断され、徐々に欧米 / 洋楽の影響を多く受けるようになり、海外でも売り出すようになっていく。

いいなと思ったら応援しよう!