韓国芸能界で大衆的に成功した初のガールズグループ『S.E.S』について
『S.E.S』は、1997年にデビューした韓国の女性アイドルグループ。SMエンタテインメントからデビューした初の女性グループであり、韓国のガールズグループの歴史はこのS.E.Sから始まった。グループ名は、メンバーの芸名であるSea(パダ)、Eugene(ユジン)、Shoo(シュー)の頭文字から取って名付けられた。
彼女たちが登場する以前にもセトレ、APPLE、S.O.Sなどのアイドルコンセプトを試みたガールズグループが存在していたが、それらのグループの活躍や音楽性は一般的には評価されなかった。また1997年にS.E.Sよりも先にデビューしていたDIVAやBaby V.O.Xなども当初は大きな反応を得られず、ブレイクできなかった。そのため、韓国芸能界でグループの影響力、人気、音楽、活動方式なども含め、大衆的・継続的に成功を収めた初の女性アイドルグループは事実上、S.E.Sが元祖ということになる。
SMエンタテインメントの創設者であるイ・スマンは当時、世界的に人気を博していたTLCやスパイスガールズなどのようなガール・グループに大きな影響を受けた。同事務所所属のボーイズグループH.O.TのときもアメリカのNew Kids On The Blockをロールモデルとした。そこで「韓国版のTLCを売り出す」として1994年から女性グループのプロデュースを始める。最初の設定人数はH.O.Tと同じ5人で5人組の女性グループを作る予定だったが、後に4人組に変更されたという。オーディションを行い、100人を超える少女たちがオーディションに参加した。その中から選抜されたのがパダ、ユジン、シュー、ソイの4人であり、メンバーそれぞれが歌唱力、ダンス、ルックス、外国語の実力まで考慮された結果だった。デビュー準備中にソイが学業との両立が難しいとの理由で脱退したため、最終的には3人組体制でデビューすることになった。ロールモデルとしていたTLCは、3人組でメンバーそれぞれが歌・ダンス・ルックスと3つの担当に分かれていたが、S.E.Sも同じように歌唱力、ダンス、ルックスとメンバーの特徴がある。
1997年11月に1集のタイトル曲「I'm Your Girl」でデビュー。デビューと同時に大ブレイクし、清純・妖精コンセプトで成功を収めた。歌謡界の流れを変える文化現象を作り出し、韓国大衆音楽の商業性がさらに拡大するきっかけとなった。1998年10月には日本でもデビューした。イ・スマンは当初、今後、アジアで中国が最大の市場になると考えていたため、H.O.Tの時から中国に進出しようと計画していた。だが、当時は日本の音楽市場がアジアで最も大きかったため、日本でもやってみようという意味でS.E.Sを日本進出させたという。また日本でのデビュー曲も韓国と同様に「I'm Your Girl」を選択したが、日本の芸能会社のプロデューサーは「あなたたちの音楽はK-POPだから日本では受けない。J-POPでやっていこう!」と助言し、S.E.SをJ-POP歌手として売り出すことになった。しかし、この路線は結果的に失敗し、このときの経験でイ・スマンは多くの悟りを得たことによって後のBoAや少女時代の成功に繋がったとされている。日本では「24時間テレビ 「愛は地球を救う」 」、「THE夜もヒッパレ」、「DAIBAッテキ!!」、「スーパーJOCKEY」、「青春のポップス」、「HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP」、「真夜中の王国」、「森田一義アワー 笑っていいとも!」といった音楽番組やバラエティにもたくさん出演した。
THE夜もヒッパレやスーパーJOCKEYでは、ライジングプロダクション所属のSPEEDやMAX、知念里奈、DA PUMPなどと共演したことがある。パダ(Sea)も後年のインタビューで「日本で活動していたとき、SPEEDやMAXといったグループがいたのを覚えています」と語った。