1990年代を代表するガール・グループ『TLC』について。
『TLC』は、1992年にデビューしたアメリカのガール・グループである。グループの名前はTender Loving Careからと、3人のニックネームの頭文字から。主に1990年代に世界的に大きな影響を与え、人気を博した。L.A.リード&ベイビーフェイスが設立したレーベル「LaFace」から1992年、シングル「Ain't 2 Proud 2 Beg」でデビュー。
全世界で8500万枚のアルバム販売高を上げ、2集「CrazySexyCool」はローリングストーン誌「500 Greatest Albums of All Time」(歴代最高のアルバム500選)に選ばれた。 商業面と音楽面の両方で歴史上最も成功したガールグループと言える。90年代当時、世界的にはイギリスのスパイス・ガールズの認知度が高かったが、アメリカ国内ではTLCの方が圧倒的な人気だった。 ティーンポップやバブルガムポップ路線だったスパイス・ガールズとは異なり、TLCはR&Bを中心とした音楽路線を追求してたくさんの評価を得た。アルバムを発表するたびに社会批判的メッセージを盛り込み、 デビューアルバムでは女性の性的権利と安全な性関係、2ndアルバムでは麻薬とHIVの問題、3rdアルバムでは外見至上主義を批判した。メンバーのレフト・アイはコンドームを眼帯として使用したり、当時付き合っていたフットボール選手のAndre Previn Risonが持つ86万ドルの豪邸に放火したりと、何かと注目された。
■日本のアイドルに与えた影響
1990年代以降に登場した日本の女性アイドルグループのほとんどがTLCから影響を受けたものである。代表的にライジングプロダクションからデビューしたSPEEDが挙げられる。当初の計画では、事務所の先輩である安室奈美恵やMAXの成功をもとに、当時流行しているユーロビートポップにカウボーイハット・スカートの衣装を着てデビューする予定だったが、メンバー4人がTLCの大ファンであり、「TLCみたいなグループになりたい!」と言ってグループのコンセプトが変更され、ストリートファッションを纏うダンスグループとしてデビューした。実際に彼女たちのプロデューサーを務めていた伊秩弘将は「彼女たちを初めて見たときは、ユーロビートで踊っていた」と明かしたことがある。またTLCだけでなく、Eternal・Destiny's Child・En Vogueといった同時代に活躍していた他の3人組または4人組のアメリカのガール・グループをお手本にした女性アイドルグループも1990年代~2000年代にかけて数多く登場し、活躍した。D&D、Melody、EARTH、dream、スダンナユズユリー、deeps、dos(KABAちゃんが在籍していた)、Say a Little Prayer、Angelique、Sister Q、Foxxi misQ、Section-S、AN-J、YA-KYIMなど。
■韓国のアイドルに与えた影響
日本のアイドルと同様に1990年代以降、韓国でもTLCから影響を受けたアイドルグループが数多くデビューした。代表的にSMエンタテインメント所属のH.O.TやS.E.Sなどが挙げられ、グループ名にも反映されているのが特徴的である。特にS.E.Sはデビュー曲の「I'm Your Girl」がTLCの路線に近いヒップホップとニュージャックスウィングの軌道に従っている。他にも1996年にデビューしたECO、1997年デビューのDIVA、1998年デビューのFin.K.L.、2002年デビューのSwi.T、2009年デビューの2NE1なども「韓国版TLC」を目指して結成されたことが知られている。