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韓国音楽は1990年代以前から洋楽に影響を受けていた

現在、人気を得ている韓国の音楽はK-POPであるが、昔は韓国と言えばチョー・ヨンピル、桂 銀淑、キム・ヨンジャなど韓国 = 演歌(またはトロット)というイメージが強かった。1990年代でもまだこのような傾向が残っており、例えば第1世代アイドルのGoofyの「たくさん」、SechsKiesの「恋情」・「Road Fighter」・「Com' Back」、Young Turks Clubの「愛情」・「他人」、Koyoteの「純情」などダンスミュージックでありながらもメロディーは演歌調であった。しかし、実際は1960年代頃から既に海外の音楽や歌手から影響を受けており、海外進出なども考えられていた。

1953年~1975年まで約20年間の活動を継続していた長寿グループ

1950年代には女性3人組で構成されたキム・シスターズが例として挙げられる。アイドルではないが、ダイアナ・ロスが在籍していたアメリカのザ・スプリームスに影響を受けたガールズグループで1959年にはアメリカ進出にもして「エド・サリヴァン・ショー」に22回も出演するなど人気を得ており、韓国で初めて海外進出をしたグループでもある。歌や踊りはもちろん、楽器も弾けるのが特徴で音楽的には当時、流行していたスイングジャズがメインで、ロックンロール、ポップソング、カントリーミュージックなど多様なジャンルを披露していた。

◎洋楽から影響を受けていた韓国アイドル(または歌手)の楽曲 

★パク・ナムジョン

1980年代後半にデビューした男性ソロ歌手。アイドルではないが、上品なルックスと甘い歌声にロボットダンスを取り入れた振り付けで現在で言うアイドルのような人気を得た。マイケル・ジャクソンに影響を受けたとされ、現役当時も韓国のマイケル・ジャクソンと呼ばれた。代表曲である「君を描いて」は、1979年にThe BeeGeesが発表した「Tragedy」と酷似している。

★チャン・ヘリ

1980年代後半に活躍した女性ソロ歌手。デビューすると同時に優れた歌唱力と壮麗な外観で人気を集めた。代表曲の「思い出のバラード」は、1982年にBilly Idolが発表したWhite Weddingが引用されている。

★消防車

1980年代後半、主にトロット歌手の育成を中心としていた演歌事務所のハンバッ企画から初のグループで歌える歌手として結成されたソバンチャ。ジャニーズの少年隊と比較されることが多いが、3人組の歌って踊れるグループという点や舞台衣装など一部の要素を除けば、あまり類似性がない。バラエティやドラマで活躍したり、海外進出するなどの活動方式やダンスパフォーマンス、メンバー構成といった部分では少年隊とは全く別物である。3集アルバム収録のヒット曲「愛したい」は、1984年にTwisted Sisterが発表したWe're Not Gonna Take Itをモチーフに制作された曲だとされている。

★セトレ

1988年にデビューした女性歌手グループ。韓国ガールズグループの先駆け的存在と言われており、日本のアイドルグループ少女隊の3人組歌って踊れる歌手というコンセプトをベンチマークしたと言われている。男性グループの消防車と同様に活動方式、音楽性、ダンスパフォーマンスなどを含め3人組で歌って踊るという点を除いた場合、少女隊とは全く別物のグループである。デビュー曲である「君を愛している」は、1980年にThe Motorsが発表した楽曲 'Nightmare Zero'と酷似している。

★ナミ

1980年代に活躍した女性歌手。1990年にシンチョル、 イ・ジョンヒョと一緒にナミとブームブームを結成し、韓国で初めてDJ Remix Singleを正式発売した。ボーカル1人+ダンサー2人でパフォーマンスを行う形態は、後のヒョン・ジニョンとワワやソテジワアイドゥルの先駆けであった。代表曲の1つである「インディアン人形のように」は、1988年にマイケル・ジャクソンが発表したAnother Part of Meが引用されている。

★キム・ワンソン

1980年代後半から1990年代初頭にかけて活躍した女性ソロ歌手。韓国で初めてトレーニングシステムを導入し、歌って踊れる歌手として人気を得た。男性よりも女性ファンが多く、女性歌手に女性ファンが多いというのは80年代当時の韓国歌謡界では珍しかった。このような構図は後のS.E.Sなどに受け継がれていく(S.E.Sも女性ファンが多かった)。4集からのヒット曲「気持ちの良い日」は、1984年にWhamが発表したWake Me Up Before You Go-Goから影響を受けた楽曲である。

★ソテジワアイドゥル

1992年にデビューした男性ヒップホップグループ。アイドルではないが、韓国で初めてK-POPという音楽ジャンルを開拓した歌手である(K-POPジャンルを最初に開拓したアイドルとしてはH.O.Tが元祖となる)。それまでのバラードやトロット(演歌)が主流であった韓国音楽界に革命を起こし、ヒップホップとR&Bを絶妙に融合させたダンスポップで人気を博した。デビュー曲の「私は知っている」は、1988年にMilli Vanilliが発表したGirl You Know It's Trueからインスピレーションを受けて作られた曲だとされている。実際にメンバーのソ・テジもMilli Vanilliの音楽に影響を受けたと明かしたことがある。

★Baby V.O.X

1997年、S.E.SやFin.K.L.よりも先にデビューした女性アイドルグループ。イギリスのガール・グループであるスパイス・ガールズをベンチマークしたグループであり、セクシーコンセプトを掲げた点とメインラッパーポジションがあるなどの違いを見せ、同世代の韓国アイドルとの差別化を図って人気を博した。4集アルバム収録の「裏切り」は、2000年に'N Syncが発表したBye Bye Byeに酷似している。

★god

1999年に俳優事務所だったサイダスHQからデビューした初のアイドルグループ。パク・ジニョン(J.Y.Park)がプロデュースした最初のアイドルであり、平凡な少年・隣のお兄さん的な親しみやすいキャラクターで人気を集め、国民グループと称された。2集Chapter2収録の「哀愁」は、1990年にTouré Kundaが発表したGuerillaという曲がサンプリングされている。

★NewJeans

2022年にデビューした5人組ガールズグループ。HYBEが設立した新レーベルADORから初のアーティストとしてデビューし、韓国人3人・オーストラリア系韓国人1人・ベトナム人1人の多国籍ガールズグループである。日本でのデビューシングル「Supernatural」は、1992年に発表されたCharles & Eddieの楽曲『Would I Lie To You?』に似ている。

日本ではK-POPは、ジャニーズ事務所や沖縄アクターズスクールなどの影響を受けたと言われていることが多いが、それは誤りである。確かに日本の音楽やアイドルを模倣した例もあることは事実だが、それは一部に限定された話であり実際、韓国の歌謡界、韓国の歌手・アイドルは1990年代以前から海外から影響を受け、成長したというのがより正確である。

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