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統合報告書ってなに?記載すべき項目や外注の相場

近年、統合報告書を作成する企業が増えてきました。統合報告書とは、企業の財務情報と非財務情報を統合して報告する文書のことをいいます。

統合報告書とは何か、そして誰が読むのか

統合報告書はこれまでに公開が義務付けられていた有価証券報告書にくわえ、あらたに義務化された人的資本情報や環境への配慮など、「企業のすべて」にかかわる情報を網羅的に記した資料です。

資料を閲覧するだけでこれまで中長期経営計画、有価証券報告書、CSRレポートと分散していた情報をまとめて閲覧できるため、投資家や取引先、そして社員も参照できる資料としての役割を果たします。

統合報告書が存在する目的は、企業の経営実態、持続的な成長への取り組み 、中長期的な価値の創造を開示することで、関係各所と企業との関係性を構築することです。

統合報告書と有価証券報告書との違い

有価証券報告書は、金融商品取引法に基づいて上場企業などが作成・提出を義務付けられている公的な文書です。
この報告書には、企業の詳細な財務情報や経営状況が記載され、主に財務情報に焦点が当てられています。一方で、統合報告書は財務情報と非財務情報の両方を含んだ「すべて」の資料です。また、作成・開示は義務化されていません。

統合報告書とアニュアルレポートとの違い

アニュアルレポートとは、上場企業が年度末に発行する年次報告書のことです。読者は主に株主や投資家、金融機関などで、企業の活動や理念を伝え将来の展望につなげることを目的としています。

統合報告書は中長期的なビジョンに基づいて作成されますが、アニュアルレポートは主に1年間の経営状況が記載されているのが特徴です。年次の業績や財務状況が中心となり、主に投資家向けのIRツールとして機能している側面があります。

統合報告書が必要とされている理由

エッジ・インターナショナルの調査によると、2023年時点で統合報告書を発行する企業数は1,017社で、前年と比較して約1.1倍になっています。
なぜ、統合報告書が注目されるようになったのでしょうか。

人的資本情報の開示の義務化

2023年3月期の決算以降、日本の上場企業約4,000社に対して、有価証券報告書での人的資本情報の開示が義務化されました。人的資本情報とは、企業のもつ人材に関する価値やスキルを示すデータのことで、投資の対象をする考え方です。

そのため、人材育成方針、従業員エンゲージメントの状況、男女間賃金格差などの情報が含まれる統合報告書を提示することで、企業の情報を効率よく入手できるというメリットがあります。

ESG投資とESG経営の普及

統合報告書が必要とされている理由の一つに、ESG投資やESG経営の普及が挙げられます。多くの企業が「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」を表すESG要素を重要視しており、日本のESG投資は2016年から2020年にかけて5.8倍に急増しています。

統合報告書は、ESGの普及に伴い、企業の持続可能な戦略の実現に不可欠なものといえるでしょう。今後もESG投資とESG経営の拡大に伴い、統合報告書の重要性はさらに高まると予想されます。

引用:企業価値レポーティング・ラボが 国内自己表明型統合レポート発行企業等リスト2022版|企業価値レポーティング・ラボ

統合報告書を発行するメリット

統合報告書が生まれた背景を紹介しましたが、実際に報告書を発行することのメリットとはなんでしょうか。ここでは主に社内と社外に分けて、統合報告書がもたらす良い影響について紹介します。

統合報告書がもたらす社内へのメリット

投資家や顧客、地域社会などのステークホルダーに対して、企業の長期的な価値創造やリスク管理の取り組みを詳細に伝えることで、信頼関係を築き上げることができます。
また、企業価値が透明化するため、ステークホルダーとのコミュニケーションの質が向上することもメリットといえます。

統合報告書がもたらす社外へのメリット

企業がどのように価値を生み出しているのか、そのプロセスや背景を明確にすることで、社内での共通理解が深まります。さらに、従業員は企業全体のパフォーマンスを包括的に把握でき、戦略的な意思決定を行うための基盤が整います。

記載するコンテンツ

統合報告書に記載する項目は、主に7つです。

ビジョン
企業が目指す長期的な将来の姿を示すものです。

例:企業価値を創造するまでの歩み、企業価値のモデル CEOからのメッセージ、事業セグメントと製品/サー ビス紹介、年度実績の概要

戦略
ビジョンを実現するためには、戦略が必要不可欠です。長期的な戦略はもちろん、中期経営戦略としての数値目標やスケジュールなども詳細に記載しましょう。

例:CFOからのメッセ ージ、経営指標(ROIC経営)中期 経営計画、マテリアリティ(重要課題)、今後のアク ションプラン

ビジネスの現状
企業が置かれている現在の状況を包括的に把握し、分析したビジネスの現状を記載することも重要です。どのように事業を通して収益化していくか、企業が直面している課題は何か、将来的な成長の可能性は何かなど、ビジネス全体の指標を表します。

例:事業セグメント別の業績および今後の戦略、CTOから のメッセ ージ、R&D・開発部門での進捗報告

人事
企業は人的資本情報の開示が義務化されていることから、人事関連の情報を開示し、企業価値の向上を目指すことが求められています。企業の人材育成方針の取り組みや取り組み、ダイバーシティ&インクルージョンの状況(女性管理職比率、男女間賃金格差など)など、従業員に対する取り組みが重視されています。

例:人財 (人的資本)のマネジメント指針、DE&I ・ワークライフバランスの実現状況

環境
ここでいう環境とは、環境活動に対する取り組みのことです。企業の環境に対する基本的な姿勢や長期的な目標を示すことは、ESG投資の観点からも重要視されるほか、企業の持続可能性を示すことにもつながります。

例:環境への取り組み

ガバナンス
企業におけるガバナンスとは、健全な企業経営を目指す仕組みや経営の管理体制を指します。1990年代のバブル経済崩壊後、企業による不正や不祥事が相次いで発覚したことから、ガバナンス体制の整備が注目されるようになりました。

例:コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント方針、社外取締役の座談会、役員一覧

データ公開
企業の財務情報と非財務情報を統合して提示することをいいます。データ公開により企業の透明性を高め、ステークホルダーとの信頼関係を構築できるというメリットがあります。

例:データ公開、財務情報 、非財務情報、会社情報

統合報告書の制作を外注した場合の相場は1,000万円以上

統合報告書を制作できる会社は限られます。有価証券報告書と人的資本経営への理解をはじめとする、幅広い点で分析や取材、執筆が求められるため、受注できる会社の数は多くありません。

さらに、統合報告書には国際基準のガイドラインが複数あり、自社のフォーマットで作っただけの統合報告書では適格とみなされません。そのため、ガイドラインを熟知したコンサルタントが必要なのです。

こういった事情から、外注の価格帯も高くIR活動の実態調査」によると、もっとも安いところでも制作コストは400 万円弱。全体の平均は1,000〜2,000万円となっています。

統合報告書を自社で作るのは限界がある

弊社は、統合報告書のなかでも人的資本経営にかかわる部分をお引き受けすることが可能です。これまでに人的資本経営にまつわる多数の実績を持ち、トップメッセージから現場の声まで、取材をもとに一貫した戦略を言語化いたします。

まずはお気軽にご相談いただければ幸いです。

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