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素朴でネイキッドな奇跡の82歳──ジルベルト・ジル来日公演
書きそびれてしまっていたけど、記憶が残っているうちに。
16年ぶりの来日公演。2024年に目黒の区民ホール(といってもかなり立派でしたが)でジルベルト・ジルを見られる幸せを実感した。
《member》
Gilberto Gil(vo,g), Bem Gil(vo,g,b), Jose Gil(vo,dr), João Gil(vo,g,b), Flor Gil(vo,key)
2024.09.27 (Fri) @ めぐろパーシモンホール 大ホール
といっても、オープニングの”Expresso 2222”では、少し不安な気持ちで彼を見守った。アコギや喉のコントロールに若干おぼつかないところがあって、んんん、大丈夫かな、と。でもすぐに、いやそんなのカンケーねーな、と思い直した。
全体を通して、加齢の影響がなかったと言えば嘘になる。ちょっとした動作や仕草が少し緩慢な印象を受けたが、なにしろ82歳だからそれは仕方がない。でも、出音には一切の迷いがないのだ。これまでレコードで触れてきたジルとほぼ変わらないリズム感やキレがそこにあった。ちょっと音がずれたぐらいで損なわれるものは何もない。
若い面々のバックバンドは、やけにジルに実直に寄り添っていて、彼へのリスペクトが伝わってくる雰囲気なのだが、全然よそよそしくはない。インティメイトというだけではない、不思議なケミストリーがある。息子や孫娘によるファミリーバンドだったということを終演後に知って、合点がいった。
キーボードとヴォーカルを担当した孫娘のFlo Gilはまだミドルティーンらしいが、“イパネマの娘”のカバーでは、オリジナルのアストラッド・ジルベルトに通じるアンニュイな歌唱を披露し、自らのムードをすでに確立しつつあった。音楽家の優れた才能は遺伝するんだろうね。
ショーの前半、ステージ全員が座って演奏したのは、ジル本人の体力をキープするための総合的配慮だったのかもしれない。ボブ・マーリィの”No Woman, No Cry”は、ジルの思い入れが伝わってくるような、しんみりとした仕上がりで、思わず涙がこぼれそうになった。
がその後、ジルはエレキに持ち替えて立ち上がる。椅子は撤去された。さらに加速して終盤を駆け抜けていく彼の姿に、老いの気配はほとんどない。ご機嫌に細かいステップを踏んで会場を大いに沸かせた。元気元気。やはりこれはミラクルでしょ。
ジル印というべきスキャット的な節回しは、明らかにアフロのルーツを感じさせた。いや、ジルに限らず、いわゆるポップ・ミュージックの故郷(のひとつ)はアフリカなんだよな、という感慨があった。枯淡でも円熟でもない。素朴でネイキッドな歌とギターが繰り広げられる様は、まぎれもないジル流のロックンロール・ショーだった。
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