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傍腫瘍性神経症候群(PNS)の診断基準update
傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic Neurologic Syndrome:PNS)、いわゆるパラネオと言われているものですが、診断基準が16年ぶりにUpdateされました(提言)。Neurologyからopen accessでフリーで閲覧可能です(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34006622/)。簡単に変更点をまとめました。
●旧診断基準(2004年)
今までは、2004年のPNS Euronetworkの臨床診断基準を用いていました(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15258215/)。これは、神経症候(classical or non-clasical)、腫瘍有無、自己抗体の3つを軸にDefinite or Possibleの診断としていました。
自己抗体に関しては、下記の通りWell characterizedとPartially characterizedの2つに分けています。
しかし、流石に16年も経過すると、新規表現型や抗体が同定されたりと、この分野の研究も発展しています。そこで、今回16年ぶりにupdateされるに至ったわけです。
さて、新規診断基準ですが、どこが変わったのか見ていきましょう。
●新規診断基準(2021年)での変更点
① 旧"classical syndrome" → "High-risk phenotype"に変更。さらに、"Intermediate-risk phenotype"を追加
② 旧"onconeural antibody" → "high risk" と"intermediate risk"に変更
※ high risk(癌と関連性70%以上)、intemediate risk(同30-70%)
③ 診断のレベルを2段階から3段階へ変更
※ "possible"、"definite" → "definite"、"probable"、"possible"
④ 診断にはPNS-Care scoreを使用(表現型、抗体、癌の有無)
では順に見ていきます。
① 旧"classical syndrome" → "High-risk phenotype"に変更。さらに、"Intermediate-risk phenotype"を追加
名前は変わりましたが、旧classical syndromeと新High-risk phenotypeに関してはほぼ大きな変更はありません。つまり、下記の表現型を指します。
・Encephalomyelitis
・Limbic encephalitis
・Rapidly progressive cerebellar syndrome
・Opsoclonus-myoclonus
・Sensory neuronopathy
・Gastrointestinal pseudo-obstruction (enteric neuropathy)
・Lambert-Eaton myasthenic syndrome
ややこしいのが新設となった"Intermediate-risk phenotype"です。リストはfar from completeの通り、これらは中リスクだけどまだまだ今後増えるかもオーラ全開です。とりあえず、今回の論文で取り上げられていたのは下記の通りです。
・Encephalitis other than well-defined LE
・anti-NMDAR encephalitis
・Brainstem encephalitis
・Morvan syndrome
・Isolated myelopathy
・Stiff-person syndrome (SPS)
・Paraneoplastic polyradiculoneuropathies
② 旧"onconeural antibody" → "high risk" 、"intermediate risk"、"lower risk"に分類
旧診断基準では、Well characterizedとParthialy characterizedに分けていましたが、新診断基準では3つに分けています。ここは表を見た方が早いですね。各種交代のphenotypeや頻度、関連する腫瘍などがテーブルにまとまっています。low-risk(<30%)となる抗体のテーブルもあり、前回の抗体の項目と比較すると医療の発展というのは本当に素晴らしいなと思います。
③ 診断のレベルを2段階から3段階へ変更
下記のスコアの通り、"possible"、"definite"の2段階から "definite"、"probable"、"possible"の3段階へ変更となっています
④ 診断にはPNS-Care scoreを使用(表現型、抗体、癌の有無)
診断はTable5の通り、上記を踏まえてPNS-Care Scoreで点数化し、診断のレベルを確定します。
ここは神経内科的疾患ではありますが、感染症内科としても脳炎等の鑑別には必ず上がる疾患ではあり、知識のupdateは必要な分野だと思います。