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【森林ニュース】 見えない、規制されない、アジア太平洋の熱帯林を切り刻む「幽霊」道路の存在
幽霊道路の存在
先日、weMORI JAPAN の公式 X で以下のニュースについて発信しました。
新たな研究しよると、東南アジアと太平洋地域の森林が豊富な地域には、地図に載っていなく、そして規制されていない非公式の道路網が広がっていることがわかりました。
— weMORI JAPAN (@wemori_jp) April 13, 2024
この「幽霊」道路の存在は、規制を掻い潜り違法な伐採や密猟などが蔓延る原因となっています。
熱帯雨林における森林保護、生物多様性の観点からも重要な問題であるにも関わらず、この地図に未記載で規制されていない「幽霊道路(goast road)」の存在はあまり語られていません。
世界中で道路建設が急ピッチで進められている中、2050年までのわずか40年間で、赤道を600周以上するのに十分な2,500万kmの舗装道路が建設される見込みだ。しかし、その多くは規制の眼を掻い潜って進められている。地図もなく、規制もなく、しばしば違法な道路網は、脆弱な生態系に陰湿に広がっているようだ。新しい研究によれば、このまま放置すれば、熱帯雨林に壊滅的な打撃を与える恐れがあると言われている。
このように、世界的に道路建設が人類史上異常な速度で進められている中、森林保護や生物多様性などの視点から特に注目すべき点があります。それは、東南アジアと太平洋における生物多様性のホットスポットであるニューギニア、ボルネオ、スマトラの島々に広がる3つの137万kmの道路が、公式に認識されているデータベースに記録されているよりも3倍から6.6倍も多いという事実です。この3つの道路は、東南アジアと太平洋における生物多様性のホットスポットであり、アマゾンとコンゴ盆地を除けば、世界で最も広大な熱帯雨林を有しています。
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規制の目を掻い潜る幽霊道路
この差異は、研究者たちが「幽霊道路(goast road)」と呼ぶ、伐採者、鉱山労働者、土地収奪者、投機家たちによって刻まれた非公式または不法に建設された道路が大量に存在することを示しているといいます。幽霊道路は通常、環境ガバナンスの管轄外であり、区画化や法執行の盲点を生み、最終的には世界の森林が直面する最も深刻な保全上の脅威のひとつとなっているのです。
このような幽霊道路が蔓延ることは、特に原生林にとってそれまでアクセスが容易にできなかった場所にまでも足を伸ばせることになり、つまり、木材、鉱物、野生生物、その他資源の採取の道を開き、またトラックなどでのロードキルや先住民を追い出すことにつながったり、彼らを殺してしまうことさえも可能になってしまうことを意味します。
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蔓延する幽霊道路
これらの幽霊道路(不法道路)のうちのおよそ40%近くが、ニューギニア、ボルネオ、スマトラの島々の手付かずの森林にまで広がったことが明らかになりました。
幽霊道路と特定された道路の3分の1以上は、調査地域全体のアブラヤシやその他プランテーションの中にあり、後の3分の1近くは非プランテーション農業の中にあり、その結果、最大39%が手付かずの森林に入り込んだことが明らかになった。
これらは、木材や鉱物、密猟された野生生物などの森林商品の輸送コストを削減することを目的として広がり、熱帯地方では一般的に農業と結びついている道路が、森林減少を急速に促進していると警告しています。
研究チームは、道路に関連する森林減少の経年変化を調べるため、1985年から2020年にかけての衛星画像を分析した。その結果、森林減少のピークは通常、道路が最初にランドスケープに侵入した直後であることがわかった。その後、道路密度が増加し、アクセス可能な森林が浸食されなくなるにつれて、森林減少の速度は緩やかになる。研究チームがテストした38の環境的、人口統計的、社会経済的要因のうち、道路の存在が森林減少の最も強い予測因子であることが判明した。
最後に
4月10日にnatureで掲載された新たな研究から、これらの幽霊道路がいかに熱帯地域の森林生態系への悪影響を及ぼすか明るみになったのでは、と思います。しかしながら、プランテーション農作物のコストを下げざるを得なかった背景や、熱帯地域(発展途上国)と先進国の関係もこれらの幽霊道路が蔓延る原因も根底にあるのではないかとリサーチを進めていく上で感じました。
「どのように」幽霊道路を取り締まっていくのか、が今後のキーポイントになるのではないでしょうか。
最後までご愛読ありがとうございました。
戸田温