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探偵討議部へようこその8章をまとめています
長編の「探偵討議部へようこそ」を章ごとにまとめています。どうしようもなくお暇な時にどうぞ。
探偵討議部の面々を題材にした短編集です。それだけで完結していますので、本編を読むお時間がない方もどうぞ。
探偵討議部へようこその7章をまとめています。
Noteの最初の投稿記事は自己紹介、というのがお約束になっているようですね。そんなことも知らずに記事を貼り付けてました。 遅ればせながら、「探偵討議部へようこそ」第一章の投稿が終わったところで、(数は少ないですが)いつも記事を読んでいただいている皆さまと、これから読んでいただけるであろう皆さまに、ささやかな自己紹介をしたいと思います。 子供の頃の憧れの職業は「探偵」でした。読んだ本の影響がかなり大きかったように思います。(ドイルの「シャーロック・ホームズの冒険」とか、リン
「探偵討議部」第八章ですが、どうしてもロシアとゆかりの深いセミナー主催、「アララギ」を面白おかしく描く気にならないので、無期限の休載とさせていただきます。ここまで読んでいただいた方々、大変ありがとうございました。陳腐な言葉ではありますが、世に平和を。
アメリカ時代、直属の上司はウクライナ人女性でした。昨今の情勢を見て、なんの役にも立たないことを知りつつ、躊躇いながらお見舞いのメールを送りました。彼女曰く、「悪夢だ。自分も親戚や友人のために何もしてあげられない。」と。なんの役にも立たないけど、ここに記す。ウクライナに平和を。
第十六話 先輩たちよ、どこへゆく? まるで全校朝礼の時のように並んでいる人、人、人。皆学生だ。授業に出なくてもいいのだろうか? 「アイツ、なんであんなに嬉々としてセミナーに参加してるのサ。アタイには信じられないわ。」 隣で妙に色っぽいハスキーボイスがする。 「その口調、やめて下さいよ。」 思わず口にすると、デストロイ先輩は「何をバカなことを言うか」と言う顔をした。 「アタイの口調は、アタイが決める。アンタに指図される覚えはないわ。」 そう言って、サラッと髪をか
第十五話 ヤスノヴィージニア 「当日、僕は『ドリー・泡尾』と名乗るから、よろしくね。モリミズさんは、『ハチスカ・ヨウ』だ。お互い変装して行った方がいいね。まず、パーマを当てて。それから、その眼鏡はコンタクトに。服装も大胆に変えてみよう。」 コマエダくんが嬉しそうに言うから、私は眼鏡を外してアイメークを施し、黒のノースリーブトップスに、白のロングスカート、白と黒のツートンカラーのハンドバックにハイヒールと言う格好でやって来た。できるだけ、スタイリッシュな「ハチスカ・ヨウ」
第十四話 ハンサムな男、こんにちは。 「カノン」のボリュームが小さくなり、会場は暗闇に包まれた。不意に流れ出す「スターウォーズ」。スポットライトが、インカムマイクをつけたアララギの日焼けした顔を浮かび上がらせる。憤怒の時間だ。 「今時、スターウォーズかよ!と思った者がいるだろう!君たちの人をバカにしたような魂の波動がちゃんと伝わっているぞ!『何かに向かって行動している人』を茶化したり、バカにしたりすることしかできない者が、この中にいるということだ!」 その時、不意に
第十三話 死んだ目をした探偵 ロダン先輩は危険な組織、『ライフ・アンジュレーション』に潜入している。しかも、先輩の「洗脳」に対する防御力はゼロに近い。シューリンガン先輩の推理を聞いて、僕は焦った。体力、戦闘力において人外のパワーを発揮するロダン先輩であればこそ、精神攻撃で「あちら側」の人になってしまったら、手が付けられない。早く居所を見つけなければ。 僕には「工学部の『生命倫理研究会』の付近で所在なげにしている」という任務が課せられた。今現在「セミナー」が行われている
第十二話 アワ踊りです! 待ち合わせのベンチで所在なく周りを見回していると、遥か遠くに自転車らしき影が。みるみる大きくなり、「ギギギギギギィーーーー!」という耳障りな音をたてて目の前で止まった。自転車から、とんでもないハンサムが降りてくる。高校時代もハンサムだったが、さらにハンサム。紛れもなくオットー・ハンサム・コマエダくんだ。 「ごめんなー。田植えが忙しくて。待たせた?」 田植え? 自給自足してるの? ハテナ、という顔をしていたのか、コマエダくんは笑って付け加えた。
第十一話 ダイコン大好物 宇宙の真理を知りたかった。自分を変えたかった。二日間セミナーに出て、変われる気がした。今までの自分は間違った道を歩んでいた。ようやく道が見えたのに、そこを通るには通行料がいるみたい。 二日間のセミナーで、わたしは精神的に丸裸にされた。今まで持っていたささやかなプライド、築きあげてきたものが無意味で、間違いであり、うち捨てるべきものであると知らされた。グループワークでは、お互いの生活史を振り返り、「間違ったと思う人生の選択」について披露しあった
第十話 私は学生が好きだ。 アララギは満足気に壇上から学生たちを見下ろしていた。 私は、学生が好きだ。教えを乞う立場であることを自覚しているから。 私は、学生が好きだ。魂が柔軟で、様々な考えを受け入れることができるから。 私は、学生が好きだ。アカデミックな香りに弱く、淡い選民意識を持っているから。 私は、学生が好きだ。知識があって、知恵がないから。 擦れて、汚れてしまった大人より、私は素直な学生が好きだ。好きでたまらない。 アララギは慈愛に満ちた顔で、愛してやまない
第九話 やり直したいです!やり直せます! わたしは5人の「グループリーダー候補」の一人となり、壇上のアララギさんに向かい合う形に並んでいる。強烈なオーラだ。胸がドキドキする。アララギさんは、優しい笑みを絶やさないまま、ルール説明を始めた。 「グループの人数は決まっていない。自分のグループの人数ができるだけ多くなるように自己アピールしなさい。決して後ろを振り向いてはならない。一人一人、大きな声でリーダーとしての抱負を、私の目を見ながら言うんだ。後ろにいる参加者は各自、『この
第八話 あの日、あの時のクネクネ。 「『ライフアンジュレーション』ですか、、。なんだかカッコいい名前ですね。意味はわからないですけど、、。」 僕の言葉に、シューリンガン先輩は嬉しそうに笑った。 「アハハ。鋭いな、ハシモーくん。その、『意味はわからないがカッコ良さそう』と言うのが肝心なところなんだよ。ちなみに、『アンジュレーション』は、波動という意味だ。世の中は波動で出来ている、それに意思の力で干渉できる、という素粒子論を下敷きにした擬似科学的な考え方を広めているようだね
第七話 変わりたいです!帰りません! (アララギさん、て言うのかぁ、、。) 壇上で光を浴びているその男の人は、まるで異世界から来た人のように見えた。肌は浅黒く、唇はグロスか何かを塗っているのか、赤くツヤツヤしている。さらによく見ると、左目が赤茶けた、そして右目が深い紺色のオッドアイなのだ。とても神秘的。そのオッドアイが壇上から自分だけをまっすぐに見ているように思える。他の参加者も、自分と同じように感じているのだろうか。 「このセミナーを執り行うに当たり、まずは参加者の
第六話 Cross-dresserは苦労する。 「潜入捜査って、、。シューリンガン先輩の推理にケチをつけるわけではないんですけど、、。そんな事ってあります? いくら探偵討議部だと言っても本職じゃないですし。しかもロダン先輩が、、。」 話の展開についていけず、つい疑問を口にする。言っては失礼だけど、部内で一番探偵らしくないロダン先輩が潜入捜査する、っていうのには違和感がある。しかもどこに? 「いや、シューリンガンの推理には間違いはない。」 答えてくれたのはデストロイ先輩
第五話 スターウォーズが好きだ!好きだ! K大学から北に5キロ前後。少し人里離れたところにあるセミナーハウスのホールは、予想よりもはるかに広い。ちょっとした体育館くらいの大きさだろうか。ただ、室内の壁には白い布がかけられ、装飾も白一色で統一されている。窓が目貼りされていて、光が入らないようになっているのと、入り口で携帯電話を預けされられたのには、少し驚いた。「セミナーに集中できるように」と説明されたけど。 一様に善良そうで、内気そうな男女の学生たち。5、60人は来てる
第四話 りゅっくり滞在しろっTことか! シューリンガン先輩の促しに、エンスーは考え、考え、ロダン先輩の映像について話し始めた。 「そうですわね、、。時間は午前8時頃。わたくしは、講義に出るためにタケダの車で送ってもらっていて、、。その時間はもう講義に向かう学生の自転車がたくさん走っている時間でしたけれど、その中にありえないスピードで車を追い越していく影がありましたの。自転車のような形の影が。まっしぐらに東大通りを北に向かっておられましたわ。それで、車載カメラの映像で確認い