婚姻関係の破綻を主張する配偶者が婚姻費用分担金で自分の生活扶助費用を請求出来るのか。
夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚 姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚 姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離 婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同 条により求める余地がないことは明らかである。(判例は下へ)
禁反言(きんはんげん)の原則とは
自分のとった言動に矛盾する態度をとることは許されないという原則・考え方を禁反言の原則もしくは禁反言の法理という。
一度言ったことやしたことに対する相手方の信頼を裏切る不誠実な行為は、民法1条2項にある信義則に反するため、認められない。
クリーンハンズの原則とは
法を守る者だけが法の尊重・保護を求めることができるという原則をクリーンハンズの原則という。この原則は、708条の「不法原因給付」にみることができる。
第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
民法第1条(基本原則)
私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
権利の濫用は、これを許さない。
そこで婚姻関係の破綻を主張する側が婚姻分担金で自分の生活扶助費用を請求出来るが、裁判所がこれを認める傾向にある。
婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるという判例が基礎となっているようである。
しかしながら、その実体法上の権利であっても、民法1条2項にある信義誠実の原則に反する。禁反言の原則、クリーンハンズの原則など信義則を照らしておらず問題がある。婚姻関係の破綻を主張する配偶者が婚姻分担金のうち、生活扶助費用を請求できる配偶者に対して、有責があるか、否かだけを、適法か否かとして法律上に定めていない。つまり親権の濫用を照らすべきである。
実務では,婚姻関係が破綻していても婚姻関係が解消していない以上は婚姻費用の内容(金額)に影響はないものとして扱う費用として、子どもの養育費は否定されない。しかしながら婚姻の破綻を認めた配偶者が、自分の扶養費用を請求することは、婚姻関係が破綻していないことを主張することであり矛盾していることから、信義則違反がないとはならない。
婚姻費用の分担についての法意は離婚の破綻がない単身赴任などで別居している場合に共同生活扶助義務を認め、経済的DVを防ぐものであり、また收入が高い一方が、收入が低い・收入がない一方の生活を援助することが原則であるから、減収している側に婚姻分担金の債務を課して、生活をより困難にさせうる決定で債務を強制することは失当を言うより他ない。
参考:コロナ禍での減収は、当事者が予見できなかった社会的な事情の変更であり、補助金を請求して支給が決定した事実は、コロナ過に影響を受けている事実は否定されない。法人運営を継続するためには、役員報酬を減収させざるをえない事情があり、婚姻分担金の決定は、支払う側の生活を困難にさせうる設定をしてまで、強制されるものではない。
その点、事情変更の原則を照らすべきである。不可抗力条項と機能が重複する法理が存在し、同法理は、震災や戦争等、当事者が予見できなかった社会的な事情の変更が生じ、当初の契約内容の履行を強制することが公平に反すると 認められる場合には、契約内容の変更や解除を許容するものである。
※これらは一考察であり自己責任で参考にして頂きたい。
では以下、判例を示す。
平成21年度主要民事判例解説
060 民法|親族
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