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風をとおすレッスンと初めてのPodcast 収録


先日、初めてポッドキャストのゲストとしてお話をさせていただきました。
声をかけてくださったのは、自身もサポーターをさせていただいている企業向け対話サービスで働かれている方。

ポッドキャストの対話、最初はどうなるかと緊張さながらでしたが、始まってみるとホストの方の物腰柔らかさと質問力で楽しくお話ししていたらあっという間の収録でした。

その中で、「ハルカさんにとって本棚とはどういうものですか?」という問いをいただき、その時は「家にいながらいろんな思考や生き様に触れることのできる多様性に満ちた場所」というようなことをお話しさせていただきました。

ポッドキャストの後、改めて本っていいなあとホクホクした気持ちで読んだ一冊に、その続きになるような一節があったので、取り上げてみたいと思います。

「私」とは、たとえていえば船のようなものだ。船には、航海士、機関士、通居士など多くの乗組員がいて、それぞれの持ち場や役割がある。さまざまな乗組員をまとめあげ、船を安全に目的地へみちびくのが船長だ。
「私」という船には、サブパーソナリティというさまざまな乗組員が乗っていて、協力しながら「私」を動かしている。本物の船とちがうのは、船長が初めからはっきりと存在しているわけではないこと。そして、いわば密航者のように、自分でもまだ気づいていないサブパーソナリティがひそんでいる可能性もある、ということだ。
「私」という船の船長、それはアサジオリのいう「セルフ(自己)」にあたる。セルフは、さまさまなサブバーソナリティとのかかわりの中で少しずつ育っていく。同じように、サブバーソナリティも、ほかのサブパーソナリティやセルフとのかかわりの中で変化し、成長していく。
セルフの役割は、サブバーソナリティを思いどおりにコントロールすることではない。そうではなく、相互に矛盾することもある彼らの言い分に耳をかたむけ、それそれに居場所を与えることだ。どのサブパーソナリティも、元をたどれば、緑あって私が人生の中で出会い、自分の内面にとりこんできた他者にほかならない。どのサブバーソナリティも「私」そのものではないけれど、どれも「私」をつくりあげている大切な一部である

風をとおすレッスン

まさにこの、複数存在する「私」これを、本を通じて日々増やしていっているような、それにより自身がより過ごしやすい配分になるような状態を目指しているような気がしました。

いい本に出会ったときに、本当に満腹、というくらい満たされる感覚がよくあるのですが、そのときに得た価値観、感情、力をそのまま取り込み、自身を形成する栄養になったような感覚。

それをまさに言い表した一節でした。

本棚を見ていて、心がとても落ち着くのは、多様な考え方があっていい、と思えるからだし、サブパーソナリティである分身を思い出す、受け入れることができるからなのかもしれないと思いました。

またもう一つ。

たとえ無人島にたったひとりでいたとしても、「私」の中ではさまざまな声が、ツイッターのように、たえずつぶやかれている。それらを、「私」を主語とする一人称の声として聴くのではなく、「私」の中にすみこんでいる他者の声として聴いてみる。
すると「私」と自分自身の思考や感情とのあいだに隙間が生まれる。怒りがこみあげても、怒りと自分が一体化してしまうのではなく、怒りと自分とのあいだに隙が生ずる。「私は怒っている」ではなく、「怒っているのは、だれだろう」と感じることができるようになる。そのとき、サブパーソナリティとのあいだに対話がはじまる。結論は出なくても、いや、あえて結論に向かわないことで、自分の中の複数の声を深く悪きとることができる。すると、隙間に風がとおるように緊張がほぐれてくる。
あひるとかっぱと旅するうちに、そんなことが見えてきた。

風をとおすレッスン
田中真知
創元社
2023

この考え方も何だかいいなあと。


他にも、7つの人形の恋物語
ポールギャリコの物語から、
エジプトのザールという悪霊払いの儀式からの学びがあり。

さらには、そういった学びを与えてくれる物語についての考察。

なにが善であり、なにが悪であるのか。善をなすとどのような恩恵があり、悪をなすとどのような報いがあるのか。知恵ある者はどのようにふるまうかといったことを、物語は、感情を揺さぶる展開の中で、聴く者たちの心に植えつけていく。をのような営みを気の遠くなるような長い年月をかけて重ね、受け継いできたことによって、私たちは「物語をとおして世界を理解する」という思考回路を身につけることになった。しかし、それは逆にいうならば、「物語をとおさないと、私たちは世界を理解できない」ということでもある。

風をとおすレッスン
田中真知
創元社
2023

物語とは世界を理解するための地図のようなものだ。地図なしに、私たちは世界を理解することはできない。しかし、どんなに精巧につくられた地図であっても、それは世界そのものではない。古くなった地図や、役に立たなくなった地図を使いつつける必要はない。

風をとおすレッスン
田中真知
創元社
2023

物語が語られることの多い、本、の大切さを再認識する素敵な一節でした。
 
田中さんは様々な国を訪れていて、旅先のストーリーも大変面白いです。

また書籍の装丁や温かみある文章でとても読み心地の良い一冊でした。

対話に興味のある方には大変オススメ。
是非お手に取ってみてください。

それでは、今日も最後までお読みいただきありがとうございました!

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