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「何もしない」、余白
私たちは、いつも「何かしなければ」と思ってしまう。
勉強、仕事、情報収集、スキルアップ——
生産的であることが、良いことだと教え込まれてきたからだ。
でも、もし創造性を引き出したいなら、その考え方は逆効果かもしれない。
最新の脳科学や物理学の視点から見ても、「何もしない時間」が創造性を生み出す というのは理にかなっている。
デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)
脳科学の研究では、私たちが「何もしない」ときに活性化するネットワークがあることが分かっている。
それがデフォルト・モード・ネットワーク(DMN:Default Mode Network) だ。
DMNは、ぼんやりしているときや、散歩をしているとき、シャワーを浴びているときに活動する。
つまり、脳が「意図的な思考」から解放された瞬間に働き始めるのだ。
このDMNは、単なる「休息モード」ではない。
実は、記憶を整理したり、過去の経験を統合したり、アイデア同士を結びつける働きをしている。
よく、「シャワー中にアイデアが降ってくる」と言われるのは、このDMNが活性化するからだ。
反対に、ずっと何かを考え続けていると、脳は情報処理に追われてしまい、新しい発想が生まれる余地がなくなる。
意識的に「何もしない時間」をつくることで、脳はより自由に、創造的に働くようになるのだ。
エントロピーと創造性——宇宙は「余白」から生まれる
物理学の視点からも、「空白の時間」が重要であることが示唆されている。
宇宙の誕生を考えてみよう。
ビッグバン以前、宇宙には「何もない状態」があった。
そこに揺らぎ(量子ゆらぎ)が生じ、その小さな変化が膨張し、現在の宇宙が形作られた。
この過程は、私たちの思考にも似ている。
意識が詰め込まれすぎて「カオス」になっているとき、新しい発想は生まれにくい。
でも、一度「何もしない」状態をつくることで、微細な揺らぎ(アイデアの断片)が生まれ、それが形を成していく。
創造性とは、情報を詰め込んだ結果ではなく、「余白」をつくることで生まれるものなのだ。
宇宙の起こりこそが、我々の時空における絶対解だと言えるのではないか?
何もしない時間を、恐れない
「何もしない」と聞くと、不安に思うかもしれない。
でも、脳の仕組みや宇宙の法則を考えれば、それがどれほど重要かが分かる。
・デフォルト・モード・ネットワークが活性化し、アイデアが生まれる
・情報を詰め込むより、余白をつくることで創造性が育つ
・宇宙の誕生と同じように、「何もない状態」が変化を生み出す
結局のところ、「何かをしなければ」という思い込みが、創造性を奪っているのかもしれない。
だからこそ、たまには「何もしない日」をつくってみよう。
スマホを置き、予定を入れず、ただボーッと過ごす。
そうすれば、脳は静かに働きはじめ、今まで見えなかった新しい発想が、ふと浮かんでくる。
「何もしない」ことは、何よりもクリエイティブな行為なのだから。