【まとめ解説】コラボヘルスの実践が、健康経営の未来を拓く
令和4年度の健康経営度調査の回答期間が終了しました。対応にあたられたご担当者のみなさまは、ようやくの一区切りにほっとなさっておられることと思います。お疲れ様でした。
回答が締め切られたということは、これから今年度の健康経営®に関する分析と、優良企業の選定が本格的に動き出すフェーズに入ったといえます。
今年度の調査票の傾向を改めてふりかえると、前回の記事でもお伝えしたように、「コラボヘルス」つまり事業者と保険者が連携した健康管理に焦点を当てた設問が目立っていました。おそらく分析結果や選定時の基準などでもこの傾向が強く出たものになると考えられます。
「まとめ解説」シリーズでは、今後のトレンドの筆頭といえるコラボヘルスを掘り下げる前に、健康経営に関する基本概念と、最も重要な要素のひとつであるデータヘルスを概説してきました。
本記事では、その集大成となるコラボヘルスを概説していきましょう。
コラボヘルスは「事業者」×「保険者」のタッグで進める「健康投資」
「コラボヘルス」は、企業(事業者)と健康保険組合(保険者)が連携して健康管理や健康促進の取組みを進めることをいいます。つまり、企業にとっては従業員、健保にとっては加入者の健康増進に、タッグを組んで取り組もうというわけです。
この背景には、厚生労働省が推進するデータヘルス(健康に関する情報をデータで一元管理し効果的にすること)と、経済産業省が推進する健康経営(従業員を人的資本として健康管理を積極的な投資と考え企業価値を高めること)の連携が、車の両輪のように大切なものとされてきたことがあります。
具体的な連携方法としては、下図のように、企業と健保がもつデータを統合させて効率化を高めることは無論、それ以上に積極的な活用を行って、従業員のワークスタイルの改善や健康的な生活の向上に役立てていきます。
コラボヘルスで誰が得するのか
健康管理と労務管理が連携したコラボヘルスにより、従業員、事業主、健保の「三方良し」の関係を築くことができます。
・従業員とその家族:健康になる、ワークライフバランスが向上する
・事業主:生産性が向上する、労災を防止する、企業価値が向上する
・健保:医療費が削減する
コラボヘルスでどのような良いことがあるのかについて、以下の記事に詳述しています。参考にしてください。
コラボヘルスで特に注目したい
「ポピュレーション・アプローチ」
このように、コラボヘルスは企業内での活動で生じるさまざまなデータを一元管理することで、従業員一人ひとりの健康管理を効果的なものにし、さらに、統合した情報から高度なデータ分析などを行い、より積極的な健康行動を働きかけることができます。
これまでの健康管理は、心身の健康が損なわれるのを防ぐために疾病リスクの高い人へ働きかける「ハイリスク・アプローチ」が中心でした。
コラボヘルスの推進により、今後は、疾病リスクの低い人たちがより健康になることで、組織全体の底上げを図る「ポピュレーション・アプローチ」へとシフトしていくことが予測できます。
ポピュレーション・アプローチが進むと、心身ともに健康な従業員が増えて生産性が向上し、働くことに対するエンゲージメントも上がるでしょう。
従業員が健やかに社会と関わるWell-Beingの実現につながり、企業価値も高まっていくという相乗効果が生まれるのです。
ポピュレーション・アプローチについては、以下の記事で詳述しています。
健康が次世代の経営戦略の重要な観点になるという「健康経営」のワードが経済産業省から打ち出され、積極的に展開されてからずいぶんたちました。
2014年から始まった健康経営優良法人認定制度と健康経営度調査も8年を超え、調査に参加する企業も年々増えています。
企業側と健保側がそれぞれで健康管理を行っていることはもうあたりまえ、これからは、両者が連携してコラボヘルスに取り組んでいるかどうかが問われる時代になってきたといえるでしょう。
実際のところ、今年度のワーキングによる検討では、次年度(R5年度)より、企業単位の特定健診・保健指導実施率を評価する方向が打ち出されています。
現在は、特定保健指導は健保の管轄であり、企業側が特に意識しなくても良かった項目といえますが、次年度以降は実施率が調査の加点対象となる可能性があります。
その他の令和4年度の健康経営度調査の注目ポイントについては、以下の記事で個別に詳述しています。今後の参考にしてください。
今年度の健康経営度調査は終わったばかりですが、それは次年度へ向けての取組みがスタートしたという意味でもあります。
みなさんの企業では、どんなコラボヘルスを推進していますか? さまざまな担当者を巻き込んで、少しずつ進めていきましょう。
※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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