「すみません」と「ありがとう」
大した話じゃないんだけど。
外出する際は、徒歩圏内でない場合は、ほぼ自転車に乗って行動している。最近は人々も外に出てくるようになってきたようで、自転車に乗っていると人とすれ違ったりもするようになってきた。
狭い狭い道の一角を通り過ぎようとしていた時に、自転車を停めて信号待ちをしている高校生くらいの男の子が見えた。彼は私の姿を認めると、さっと自転車を後ろに動かして、私が十分に通れる以上の道幅をあけてくれた。
私は咄嗟に答えた。
「あ、すみません!」
私はいつでもどこでも、こうやって道をあけてくれた人に挨拶していた。
ずっとね。
今日、私が信号待ちをしていると、横からおばあちゃまが通りすぎようとしたので、今度は私の方が自転車の位置を変えて、おばあちゃまの通り道をあけた。
腰が少し曲がったそのおばあちゃまは、進行方向を向いたまま、こう言いながら通り過ぎた。
「ありがとね」
えっ............。
想定外のその言葉が、私の心にズッキーンと響いた。
ありがとうって...........。
私ったら.........。
あの時も、あんな時も、謝るんじゃなくて、ありがとうって言えばよかった。
そう思ったのだ。
相手から見ると、道を譲った人に「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」って謝ってもらうよりも、「ありがとう」って言ってもらえた方が嬉しいんだなって気づいたのだ。
感謝されると、本当に良かったって思っちゃう。こんな一瞬の出来事なのに、こうやって文字をタイプするほど、心を動かされちゃったよ。
おばあちゃま、こちらこそ、ありがとうございました!