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テレビ(地上波)を見ないとどうなるか

 いろんな事情があるのだが、日本の地上波テレビを見なくなってすでに23年ほど経つ。

さらに私自身は、常に「仕事してるか勉強してる」状態で、かつ睡眠時間も削るような生活が長かったので、そもそもテレビ前のソファーに身を沈めることすらなかった。

リビングに隣接したキッチンで後片付けをしていると、時々カナメに呼ばれることがあり、その時に初めてソファの後ろから画面をチラッと見るだけだった。

そんなカナメも見ているのは現地の地上波ではなくて、Netflixのドラマだったり、ゴルフチャンネルだったりした。

私がテレビを見ないので、子供たちは「家に帰るとテレビがついているお家」というのを経験せずに育ってしまった。

時々、「帰国子女の言葉遣いがなぜか古くさい」とか、逆に「とてもキレイな日本語を使っている」と評されてしまう理由は、ひとえに「日本のテレビを見ていない」からであーる。

言葉というものは、時代によって自由自在に変容していく。
新しい言葉はメディアや口コミによって流布するため、そのツールを持たないならば触れることのないものである。

地上波を見ずに海外で育った子供たちは、その後、日本で一人暮らしをすることになった。

それぞれ必要な子にはテレビを買い与えたりもしたが、深夜アニメを見る程度しか使っていなかったらしく、独立する際にテレビは廃棄。

その代わり、PCやラップトップを含め、モニターは複数台所有し、そのモニターにはFire Stick TV等を接続して、NetflixやYoutube、アニメなどを見ているらしい。

で、そんな子供たちが「地上波のように受動的なメディアに触れないのなら、自分の好きなものしか見ないために、エコーチェンバー現象で偏ったコミュニティ内で偏った考えに先鋭化されてしまう」というリスクに対して、どうなのかと気になって考えてみた。

というのは、テレビなどで再三ニュースになっている不動産や脱毛、歯科矯正などの詐欺に、若い人たちがサクッと引っかかる理由は、オールドメディア(地上波など)の受動的情報に触れていないからだ、という論調を見かけたからだ。

でね。

ちょっと考えてみたわけだよ。

人間が育つ過程で色々な価値観を植え付けられるのであるが、その中でもっとも大きい影響力を持つものはメディアなのかしら?

不動産詐欺に遭う若い人達は、メディアのニュースを見ていないから引っかかるのかしら?

若い人、バリバリと働く中堅世代、高額貯蓄で悠々自適のはずの高齢者などが、なぜ詐欺に引っかかってしまったかということを調べたくて、色々な動画を見まくったわけよ。

そうしたら、詐欺に接触するきっかけが、全員がマジで同じ理由だった。

友人、知人、職場の同僚に勧められて

だったの!!!!

みんなフツーにテレビも見てる一般Pなのに!
自分だけは違うと思うのかな。
そして、日本の同調圧力が強いというのも、チラッと影響しているのかなと思ったり。友人に強く勧められると断りにくいというのもあったのかも。

選ぶべきはメディアの種類じゃなくて、友達だよな、と思った次第。

私が子供の頃は、テレビばっかり見ているとアホになるとよく言われたものよ。

でもネット上に出ている素人さんが主観丸出しで作っている動画よりも、メディア業界で専門的スキルを養った人たちが作る番組の方が、圧倒的に精度が高いのかというと、昨今の状況を見れば一概には言えないというか。

少なくとも、編集ありきで切り取りが激しいのは時間の制約のあるオールドメディアの方かもしれないとも言える。

かつてはドキュメンタリーの制作においては、圧倒的にテレビ番組に一日の長があるような印象があるけれど、今やNetflix等のプラットフォーム上でも独自ドキュメンタリーがつくられている。

ネット上のコンテンツに素人しかいなかった時代とは違うしな。

闇バイトや詐欺に引っかかる人は、テレビのニュースを見ていたら防げたのかしら?

カナメ「うーん。そもそも詐欺って常に新しいじゃん。テレビのニュースになる頃は、すでに被害者が複数人出ているから報道されているわけで。詐欺師は常にルールの隙間をハックして賢く稼ぐ方法を考えているわけだから、テレビを見ているからって防げるものでもないやん。やっぱり『常に疑うこと』だよね。あと自分で逐一ググるとか。

そういえば、当時(バブル時期)オレの周囲はみんなゴルフ会員権とかめっちゃ買ってたな。オレは買わなかったけど。買った奴らは基本的な投資に対するリテラシーがなかったんやな、とは思う。

理解できていないものを、なんとなくテレビで言ってるから、周囲が買ってるからという理由で、安易に大金を突っ込むのってどう考えてもおかしいやん。
自分が分かっていないものには、手を出さないことやな。
とは言っても、本人は『理解してる』と思わされているんだろうけど。」

まぁ確かに。

そういえば割と近しい関係の若者(夫婦共に高学歴)が、首都圏のタワマンを買おうとしているという話を聞いてビビってしまった。本人は「周囲のみんなが(タワマンを)買っていて1,000万円以上の利益を出したって聞いて、めちゃ焦ってる。自分は遅れをとってる。一日も早く買いたい。」と言ってるという話を聞いた。

自分のライフスタイルを考えた時に、それが絶対条件で、そのためには現金を惜しまないというのなら別になんとも思わない。それはプライスレスなものだからね。

でも投資としてはもうちょっと考えた方がいいよね。
周囲の雰囲気に思いっきり流されているというか。
首都圏の分譲や中古のマンション価格のトレンドが今度どうなるかとか、ニュースの検索すらしていないと思われ(汗)。

カナメ「オレ、自分で自分を褒めたいと思うことがいくつかあるんだけど、そのうちの一つが家を買わなかったことやねん。周囲はみんな早々にマイホーム買っていたけど、これだけは流されへんかったな。だって怖いやん。35年ローンとか組んだら会社辞められへんやん。身軽であることの方が圧倒的に選択肢は増えるし。」

確かに。

結局、詐欺の被害に遭わないために最も大切なのは、周囲の空気に流されない批判的思考の方なんだなと再確認。

とりあえず能動的に自分で調べて、それを理解できるだけの知性をキープしておかなければ。

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