生クリームを制するものが、田舎を制す
随分昔のことになるが。
大阪の実家に帰省したときに、母が「堂島ロール」を用意しておいてくれたことがあった。
母は舌が肥えているので、彼女がセレクトしたものは常に間違いなく美味しいのだが、その堂島ロールの中に入っている生クリームの味が、海外から一時帰国した私の口には、衝撃的な美味さだったのを今でも覚えている。
もともとの牛乳が美味しいのか、砂糖が高級なものなのか、その配合が絶妙なのか、いや多分そのすべてなのかも、と思わせるような上品な味で、これはどんなにがんばっても自分では作れないものだと確信した。
それからかなり経って、地方に住むようになった。意外と生活に不便は感じずに過ごしているのだが、時々「ハッ」と気付かされることがある。都会と田舎との違いを。
先日、某店舗前で長蛇の女性の列を目にして、不思議に思いつつも長蛇の最後尾に並ぶ根性はなかった。ほどなくして列がうまい具合に途切れたので、それを購入してみた。いわば、生クリーム系のスイーツである。
スイーツの種類を選んでいる時に初めて気づいたのだが、
すっごく、た、高かった.............。
大阪人的な感覚では、脳内で瞬時にそろばんを弾き、原価計算をして、立地条件その他のコストをざっと見て「Acceptable」だなと感じるラインがあるのだが、それを遥かにぶっちぎり超えて余りある価格だったのだ。
それでも興味があったので買ってみた。
確かに、美味しかった。
が、私のいやらしい大阪人的感覚から、ネットで同等のものの値段を検索してみて驚いた。
都会の超絶有名店よりも高い、びっくりの価格設定であった。
なのに!
なのに、長蛇の列なのよ!!!
この事実に、私はまたまた考え込んじゃったわけだ。
世界中の超有名教授の授業すら、オンラインで無料で受講できる時代だ。ハーバードだろうがイェールだろうが、MITやカーネギーメロンだろうが、UCバークレーだろうが、タダで視聴できる講義はある。そのコンテンツの価値たるや、頭がクラクラしそうな程だよ。
超有名店のお菓子だって、送料を払えばネットで購入できる。クール便になると送料が高めだが、それでも冷凍状態で届いたものを解凍させて食べると、完璧な「その味」を自宅で味わえるようになったのだ。超有名店の味が、自宅でも味わえるってわけだ。
私は時々、神戸フランツのプリンをお取り寄せするのだが、冷凍状態で届き、それを解凍して食べても、店舗で購入するものと遜色ない味である。だから、これは通販で買っても全く問題がない。
が。
生クリームがあり、その周辺に水分を吸い込みやすい素材があったりする場合など、常に冷凍で運べるものばかりとは限らない。そういうクール冷凍便であっても運ぶのに向かないタイプのスイーツは、ローカルで手に入れられない限り、そう簡単には食べることはできない。
つまり。
都会に行けば安いものもあるのかもしれないのだが、いかんせんこのローカルにあるのはそこだけであるという状況なら、その価格は吊り上がっても当然だし、吊り上げても、それを買い求める人はたくさんいるのである。
SNSがあればこそ、都会の流行なども広く知ることができるようになったのだが、その現物が目の前にあるかというと、そうでもない。こちらでタピオカ店ができた時には、小中高校生たちが長蛇の列をつくっていたこともあった。都会じゃすでに飽きられている頃であっても、それが目の前になければ絵に描いた餅だし、それが目の前に現れたら、どんなに高くても手に入れたいと人々は思う。
めっちゃブルーオーションやん!!!!
都会から安易に運べない何かで、世の中のトレンドにあるものであれば、田舎でそれを展開することにおいて、一時的にせよ先行者利益はがっぽり摘み取れるのねぇ、と思った次第。
今までは国外でそれを何度も感じたけれど(ある国で流行っているものを、まだ流行っていない国に持ってくることは、最も簡単にできるビジネスだ)、それが国内でも言えるということに、少し感慨深い思いがしたよ。
都会で成功することだけを考える必要はなくて、もっと初期費用を安く抑えつつ、かつ成功が約束させている環境というのは、探せばいっぱいあるのだよ。
田舎のどのエリアが良いかというのは、こういう雑誌を読むといいよ。エリアごとのランキングがあるので、エリアを決めている方には参考になりそうだよ。今は、unlimitedで読める〜。
私の過去記事もどうぞ〜。